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【クローズアップ】全中、「補正」異例の前倒し運動 柱に水田、新規就農、資材高騰、畜酪 農政ジャーナリスト・伊本克宜2021年11月9日

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JA全中は、政府の大型経済政策が中旬にも決定する中で「異例」の前倒しで農業関連の予算要求運動を展開する。着実な転作を担保する水田農業予算確保をはじめ、新規就農支援の万全の予算措置、原油急騰での資材高支援、畜酪対策なども求めていく。

■11月中旬決定を視野
通常、JAグループの次年度政府予算案を柱とした年末予算運動は、12月の税制改正大綱決定を踏まえ11月の税制対応から始まり、11月後半から補正予算、次年度予算案への政策要求などを行う。

だが今年は、政策決定スケジュールが一変した。岸田文雄首相は10月31日の衆院選での与党絶対安定多数確保を踏まえ、10日の特別国会での首相指名後、ただちに一部閣僚入れ替えなど組閣を行い、選挙公約の柱でもある「数十兆円規模」の大型経済政策の実施に着手する。同時に農業関連も多い補正予算案も決定する。大型経済政策は30兆円台の財政規模が検討されている。
このため、具体的な予算論議は11月中旬が最大の山場になる。例年より半月ほど早い。補正予算は、12月6日開催予定の臨時国会での質疑を経て年内に決定する運びだ。

■週内に緊急全国大会
全中は、政治的動きを念頭に8日の週にJAグループ農政推進緊急全国大会を構え、与党政策責任者、農林幹部に予算要求、政策提案実現を要請する。
衆院選は、全国農政連の推薦議員が多く当選して与党の安定政権運営が可能となった。こうした政治的成果も踏まえ、選挙中に大きな争点となったコメ需給問題をはじめ、水田農業確立を中心に当面の農政課題で、与党の支援を求めていく方針だ。

■コメ需給対策
予算要求の柱はまずはコメ需給対策だ。農水省は、コロナ禍での業務用需要減から既に15万トンの特別枠で一時的な市場隔離的な対応を示した。ただ、これは対処療法との見方も強い。さらには、2022年産米の需給均衡を念頭に、主食用向け以外の他用途への振り向け、麦、大豆への転換など水田本作誘導への支援対策拡充が問われる。

■新規就農支援の地域格差に懸念
緊急大会では、水田農業、品目別、TPP関連対策などの万全の予算確保に加え、年末までにパッケージをまとめる「人・農地・関連対策見直し」の政策提案も柱の一つ。全中は10月末まで、政府の「人・農地プラン」に関連して地域農業を支える人材確保・育成へのJAグループ内の生産現場の意見を集約した。

特に問題となっているのは新たな新規就農支援の運用だ。
農水省は、22年度概算要求で総額236億円の「新規就農者育成総合事業」を示している。23年度で40代以下の農業従事者40万人確保の一環だ。

担い手確保には、新規就農の確保、定着が大きなカギを握る。新規就農対策は総額で増額した。しかし、国費半額補助などで財政基盤の弱い自治体では、新規就農支援が限定的となる恐れも出ている。そこで、大会では地域間で新規就農支援の取り組みに格差が生じないように、十分な国費予算の確保を求める。また、地方自治体が親元、年齢、所得など柔軟な要件を設定できる仕組みとなるよう要請する方針だ。

■畜酪では乳製品過剰
畜酪関連では、コロナ禍の業務用需要の低迷から乳製品過剰に伴う生乳需給緩和をどうするのかが焦点だ。
当面の緊急課題として年末年始に、乳製品工場で処理できず生乳廃棄も出かねない。酪農、乳業界では、この時期に一時的な生乳出荷抑制を申し合わせている。これらを担保する政策支援も問題となる。

■原油高引き金に資材高騰対策も
クローズアップされているのが、本格的な寒冷期を前に原油高の影響が問題となっている。農業も施設園芸を中心に経営的打撃が懸念される。これらの支援対策も課題だ。

直近の農業用A重油は、原油価格の上昇で高騰を続けている。石油由来のナフサを原料とする農業用ビニールといった園芸被覆資材なども上昇傾向だ。
加えて、円安は飼料、肥料など輸入資材の値上げに直結している。原油高騰を受け岸田首相は農相を含む関係閣僚に、業界への必要な対応への機動的実施を指示している。これを踏まえ、農水省は燃油価格高騰対策の第3次募集を近く始める。

12月上旬には、畜酪政策価格・関連対策を決定するが、乳製品過剰、飼料価格高騰が、政策論議に影響を及ぼすのは間違いない。

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