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【インタビュー】大竹和彦農中総研会長に聞く(上)withコロナ元年 協同「つながる」力発揮の時2022年1月24日

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系統組織のシンクタンク・農林中金総合研究所の大竹和彦会長に2022年の経済見通しと、農林中央金庫が来年に創設100年を迎える中で、系統金融の在り方を聞いた。大竹会長は新型コロナウイルスに適応しながら、経済活動を進める「withコロナ元年」の年と強調。協同、共同、協働の三つの「きょうどう」と通し、「つながる」大切さを唱えた。(聞き手 農政ジャーナリスト・伊本克宜)(上・下2回に分け掲載)

大竹和彦農中総研会長大竹和彦 農中総研会長

■二つの77年、転機の年
――2022年は気候変動対応、農政では環境負荷軽減の「みどりの食料供給システム」本格始動、世界は米中関係をはじめ「政治の季節」が続き大転換の年となります。

今年は二つの77年に注目している。77年前は敗戦、その1945年からさらに77年前は明治維新が起きた。天地がひっくり返るような変化を伴い、近代、現代の転機となった。今年は転換の1年となる。気候変動対応、デジタル推進、さらにはワクチンなど予防措置を取りながら経済活動を進める新型コロナ対応が本格化するだろう。いわばコロナと共に経済、営農活動を同時進行する「withコロナ元年」となるのではないか。

■キーワードはグリーンの「G」
――確かに77年はカギになるタイムスパンです。将来を見据えた対応が問われます。2022年から77年後は2099年。22世紀目前で現行の食料・農業・農村基本法制定から100年ともなります。時に気候変動、地球環境対応は喫緊の課題です。グリーン元年とも見えます。

転換の年となるのは間違いない。
国際経済、金融では今春ともされる米国利上げの影響に注視したい。農中にとってもコスト負担が増える。選挙動向も加え、米中関係の動向も気がかり。半面で両国経済は深い相互依存関係にあるのも確か。最も先行き不透明なのはコロナの影響だ。気候変動対応は金融機関にとっても喫緊の課題となる。円安に伴う原料高もあるが、全体的には景気回復の兆しが見える。利上げは、特にコロナ禍で債務が膨らむ新興国に打撃を与え経済混乱の一因にもなりかねない。世界経済動向の慎重な見極めが必要だ。

ESG投資の拡大は欠かせない。環境、社会、企業統治の英頭文字からESGと呼ばれるが、環境と共に、社会性のSも避けて通れない。ジェンダー平等の観点から多様性、特に女性の活躍支援は大切な一つ。いずれにしても、農水省の「みどり戦略」も踏まえ、グリーン化の「G」は大きなキーワード。ダーウィンの「変化するものだけが生き残る」という「進化論」ではないが、変化を読み柔軟に受け止めながらも確固たる経営理念を持ち進むしかない。

■今こそ三つの「きょうどう」
――コロナ禍で今春3月期決算は各企業の業績差が拡大するいわゆる「K字型経営」がさらに鮮明化します。格差、分断が国際的に広がる中で、協同組合の使命が問われています。

格差、分断がまん延する中で、相互扶助を唱える協同組合の役割はますます大きく、その実践が求められる。

三つの「きょうどう」を考えたい。まず協同組合の「協同」、さらには共に力を合わせる「共同」、そして目標達成に同じ方向へ皆が汗をかく「協働」。
キーワードは「つながるではないか」。人と人との心が「つながる」。物と物とが「つながる」。全てが「つながり」公平と公正を装う循環経済となる。農中、JAバンクの系統金融はその仲介機能、潤滑油、経済の血液として重要な役割を果たす。
「みどりの戦略」にしても、DX(デジタル・トランスフォーメーション)、スマート農業ばかりが強調されているが、実践するには産地、生産現場と「つながる」ことが欠かせない。目標実現の具体的手順を示すことが大切だ。

■パーパス「すべてを『いのち』に」
――農中は来年の2023年12月20日に創設100年を迎えます。こうした中で、農中専務時代に組織の存在意義、パーパスを決めました。「これまでの100年」と「これからの100年」を考える上でも、志の経営「志本主義」ともされるパーパスの意義は大きいですね。

農中専務時に中心となりパーパス経営の議論を進めた。
趨勢(すうせい)から今後どうなるではなく、脱炭素達成の2050年を念頭にバックキャスティング手法を用い、存在意義を確認しながら目指す姿を描き、その達成にはどうすればいいのか、何が必要かを考えた。議論の仕方も役職員の様々な意見を聞き、有識者からの意見も受けた。農中は何のために存在するのか。それを役職員全員が自ら胸に問いかけた。
パーパスは「持てるすべてを『いのち』にむけて。」関係者と共に、農林水産業を育み、豊かな食と農の未来を創り、持続可能な地球環境に貢献していく。目指す姿は、農林水産業と食と地域の暮しを支えるリーディングバンクだ。

職員ごとのマイ・パーパスの議論も出た。個人で自然、環境、食と農に関連する「いのち」のために何ができるのか。例えば自然保護の活動、地域住民と一緒の食品ロス軽減、食残渣(さ)を活用したリサイクルの仕組み作りなどだ。23年には農中100年を迎える。日本近代最大の災害である関東大震災からも1世紀。創設90年時には東京・品川に研修所をつくった。100年を期に自然、環境、共生などを念頭にした記念的な事業も考えられるだろう。(下は1/25掲載)

略歴
大竹和彦氏は1959年生まれ。岐阜県出身、東大法学部卒。2011年農中常務、2015年に農中専務、21年4月から現職。農中パーパス経営議論を先導した。政財官に太い人脈を持つ。

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