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「時代を変える」女性の底力 「共存共栄」地域のパワーに JA女性70年の歩み座談会(2)2022年5月10日

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【出席者】
JA全国女性協副会長(JA熊本県女性組織協議会会長)太田 桂子さん
JA全国女性協理事(JA長野県女性協議会会長)久保 町子さん
JA全国女性協理事(JA福岡県女性協フレミズネットワーク委員会顧問)田中 暁子さん
司会=文芸アナリスト・大金義昭氏

広がる世界 外へ出よう

大金 女性枠のような仕組みがなければ、女性が集落や地区の推薦を得るのは難しい現実があります。農業界ではまだまだ男性の天下が続いています。旧態依然の男性の意識が変わり、女性パワーを積極的に登用しないかぎり、この国の農業は生き残れません。

太田 女性の意識にも問題があります。「あんた出すぎよ」と言われ、がっくりしたこともあります。

JA全国女性協理事 久保 町子さんJA全国女性協理事
久保 町子さん

久保 長野県のフレミズは南信地区が(長野県南部)が盛んで毎年会員が増えています。私たちのフレミズもJAみなみ信州のフレミズと交流して刺激を受けています。特に子どもを持つ若い女性の、食への関心が強いですね。JAみなみ信州のフレミズは、耕作放棄地に小麦を作ってパンなどの加工品も販売しています。
若い人は、集団活動が苦手で面倒がるところがありますが、少人数でグループをつくって女性部の活動に参加し、意見を出すように働きかけています。「嫁」の字は女偏に「家」と書きますが、「今は家につかなくてもよい。どんどん外へ出ていいのよ」と声掛けしています。人は一人では強くなれません。

田中 女性部の活動は、最初は気軽に参加できる楽しいことから始め、ネットワークを広げていくことが大事ですね。

久保 農協運営の参画では、女性枠理事が7人います。諮問委員会など、男性ばかりなので、女性が意見を言える機会をつくるように訴えました。最初は「なんで女性が」と言われましたが、最近、少し変わってきました。県の中央会の参与もやっていますが、県内の組合長の考え方がよく分かり、勉強になります。女性も積極的に農協の運営に参画するべきだと感じています。

大金 いまJA女性組織はどんな問題を抱えていますか。

久保 一番は部員の高齢化ですね。年齢制限はなく、80歳代の部員もいます。女性部にはグループで入る人が多いため、やめる時は一緒にやめることになり、一挙に仲間が減ることになります。なかなか世代交代が難しいですね。
女性部に入るとすぐ役員をやらされるからいやだという人もいて、結局、一度役員になると、長く務めることになります。

田中 入ってすぐ役員をやるのは無理がありますね。私もフレミズ2年目に、新米で役員となり、経験もなく知らないことだらけで、活動の内容が把握できないことが多くあって戸惑いました。でも、役を引き受けたことで人とのつながりが広がったともいえます。役員の経験は無駄にはならないと思うので、次になる役員を育てていくことも重要だと思います。

大金 そう考えると、大いに場数を重ね、女性の力を高めていく必要がありますね。

太田 うちの地区の女性部長の任期は4年ですが、私は11年目になります。長いことで批判もありますが、「あなたでないとでけんよ」と言われて続けています。ここまで出来たのは部員の応援があってのことで、ありがたいと思っています。県の会長になるとき、地区の農協理事に相談したところ、「地元をクリアしてからなるように」とのアドバイスもいただきました。

積極的支援JAの役割

太田 JAには女性の力を引き出す役割や女性の活動を積極的に支援する姿勢を期待したいですね。

田中 わたしもそう思います。家庭菜園にしても、女性は自分で直売を始めます。農協に関わらなくてもでき、同じことをしたい女性でグループができ、ネット販売などを始めます。しかし、せっかくある農協を使わない手はない。こうしたグループに農協も積極的にアプローチしてほしいと思います。
「女性に見放されたJAに未来はない」とJA全中の中家徹会長は常々話していますが、女性には間違いなくそのパワーがあります。JAには女性を引き込む信念を持って支援してほしいですね。

久保 管内の果樹農家で若い人が女性部に入っており活発に活動しています。ただ、若い世代は、あるときは農協、あるときは行政と、うまく使い分けています。農協は自己改革で支店や施設の集約が進んでいますが、とかく、決まってから説明することが多く、組合員から苦情が出ます。順序が逆、決める前に意見を聞くべきだと思います。

大金 支店や支所を統廃合するなら、それに見合った新たな意思疎通の仕組みも求められます。大きくなった組織の血液循環をよくすることですね。協同組合ですから、何といってもコミュニケーションが大切です。みなさん、地域ではどんな役割を果たしていますか。

久保 農業を始めてから、ほとんど男性扱いされ、いろんな役割をやりました。中山間地域所得確保対策の関係で、地区内の休耕地や荒廃地を見て回るなど、勉強になります。昼は農作業に忙しいのですが、地域の会議は夜だから出やすいですね。10人で休耕地のソバ作りに挑戦。また、地元の大豆が欲しいという豆腐屋さんのために大豆作りを計画したり、農協の福祉事業にも関わって高齢者の昼食作りにも参加したりしています。

大切な日常 感謝しつつ

司会=文芸アナリスト・大金義昭氏司会・文芸アナリスト
大金義昭氏

大金 「地産地消」「国消国産」の取り組みはいかがですか。

田中 積極的に取り組んでいます。出荷できない野菜を子ども食堂に使いたいと呼び掛けると、部員が応えてくれます。「うちに規格外の野菜があるが、使ってもらえないか」と、ふだん参加しない部員が、この活動をきっかけに戻ってきたりしています。どんなに小さなことでもいいので、行動を起こすことが大事だということがよく分かりました。

久保 子ども食堂は昨年から取り組んでいますが、こうした活動は女性部を知ってもらうための絶好の機会ですね。

大金 JA女性組織の活動をもっとオープンに地域に広げていく機会はたくさんあります。例えば恒例の女性大会なども手づくり加工品の展示即売会やアトラクションなど、すばらしい展開に驚かされますが、参加者がメンバーに限られているケースが多い。地域に門戸を開けば部員の拡大にもつながるのではないか。せっかくの女性パワーがもったいない。女性大会のPRはしていますか。

久保 農協番組のラジオを使わせてもらってやりました。番組には女性部枠、青年部枠がありますが、それをもっと有効に使うべきですね。

田中 農協のラジオ番組枠がありますが、野菜の宣伝が中心です。提案してみたい。ラジオやテレビを使うと「見たよ」「出てたね」と話題になり、仲間のつながりができます。

大金 JA女性組織に限らず、活発な組織活動には共通点があります。そこに必ず元気なリーダーがいることです。「元気・やる気・本気・勇気」は伝染します。自分の成長にもつながり、お金に代えられない力を手にすることができる。半歩でも一歩でも、まず前に踏み出すことが肝心ですね。
お話を伺うと、「嫁」の立場は変わった、パートナーが家事・育児をするようになった、経営の役割分担ができたなど、確かに隔世の感があります。
しかしJA運営への参画となると、まだまだこれからといった感じですね。
最後にウクライナ戦争について、食料や経済の問題も含め、食と農と命を守るJA女性組織にとっては避けて通れない問題ですが、皆さんのご意見はいかがですか。

ウクライナ支援募金も

太田 21世紀の今日、信じられない思いです。何かできないか。募金したいが、お金の行先が分からないので不安だという声があります。JA全国女性協は、JAグループの募金に協力することにしています。

久保 同じ人間として信じられない思いです。日常の生活がなにごともなくできるという「普通」がいかにありがたいかを感じます。話し合いで理解できないものでしょうか。

田中 女性も働きに出て、平日の昼間はだれもいない地域をみると、これから農業はどうなるのか、このままでは残されたお年寄りの面倒もみることができなくなります。ウクライナ問題で物価が上がっていますが、モノの値段が上がるのは、モノがないからです。モノを作る農家として、そのことを強く感じます。石油や肥料などの資源は無理でも、農産物だけは確保したいものです。耕作放棄地に牧草や米を作って、餌にできないのでしょうか。ウクライナのようなことになると、日本はそれ以上に酷いことになると思います。

大金 私からは宮沢賢治の言葉を紹介しておきます。「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」という言葉です。本日はありがとうございました。

【座談会を終えて】
日頃の奮闘ぶりを伺い、女性に対する社会的評価を高めることが、JAの底力を引き上げる近道ではないかと改めて考えさせられた。3人の率直な発言に感謝したい。

(大金)

JA女性70年の歩み座談会(1)

(関連シリーズ)
【シリーズ:花ひらく暮らしと地域―JA女性 四分の三世紀】

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