【クローズアップ・副業としての農業従事】働き方改革下の職員教育<上>JA全中教育企画課・高山靖弘氏2022年6月27日
国の「働き方改革」の流れのなかで、従業員の副業・兼業を認める動きが出ている。多様な働き方によって、意欲や能力の発揮を促す。特にJAでは副業として農業に従事することを、協同組合の運動者としての職員教育につなげることができる。その意義を2回にわたって考える。
これまでもこれからも、協同の精神に基づき、組合員との対話を重ね、組合員と共に課題解決に取り組み、JAの協同組合としての価値を高めていくことが求められています。これを担う人材の育成、すなわち協同組合理念に根差したホスピタリティー精神のある人材育成が大切です。
多くのJAでは、対話活動や支店協同活動などを実践的な協同組合教育の場として、JAの人材育成基本方針に位置付けて取り組んできました。
こうしたなか、農業が主力の地域でも、農家ではない家の出身の職員やJA管内での生活がそもそも初めての職員が増えています。また、JAの幅広い業務を踏まえれば、地域の農業・営農そのものを肌で感じづらい部署で仕事に取り組む場合もあります。
協同組合運動者としての人づくりをどうしていくか、特に次代を担う職員が、組合員との対話・課題解決などに取り組むべく、組合員とのコミュニケーション力を高めていくにはどうするか。その一つとして、就業後や休日などにおける副業としての農業従事が挙げられます。
ポイントは別に述べますが、職員の自由意思によるものであり、JAの指揮命令の下ではないという点です。これは、職員の農家研修・実習や農繁期の施設応援とは異なるということでもあります。
さて、副業の起点は国の「働き方改革」です。働き方改革といえば、すでに実施されている残業時間の上限規制や年次有給休暇の義務付けなどが思い浮かぶかと思います。これは働き過ぎを防ぐことやワーク・ライフ・バランスを目指すことを主眼にしています。
副業については、組織の枠を越えた連携で革新を生み出すオープンイノベーション等に有効であり、多様な働き方を自らが希望、選択できる環境づくりの一助と位置付け、働き方改革につなげようとするものです。
少子高齢化で働く人の数が減少する中、働き方改革は絶え間なく求められます。JAにおいても、自己改革のいっそうの実践に向け、地域・農業を軸とする協同組合の特性を踏まえながら、多様な働き方などにより意欲・能力を発揮できるよう、魅力と活力ある職場づくりが大切です。
こうした中、国は、副業・兼業について、原則禁止から原則容認へとモデル就業規則の改定を行いました。また、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の改定においても、労働時間管理・健康管理のルールを明確化するなど、その適切な推進に取り組んでいます。
厚生労働省は、「ガイドライン」パンフレットの中で、「副業・兼業に関する裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であるとされており、裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向で検討することが適当」、「副業・兼業を禁止している企業や一律許可制にしている企業は、まずは、原則副業・兼業を認める方向で就業規則などの見直しを行い、労働者が副業・兼業を行える環境を整備しましょう」としています。
副業としての農業従事に向けた起点は、仕組みづくりをどうするか、まずは職場のルールを定める就業規則を考えます。本稿では、フルタイムで働く職員が就業時間外に働くことを想定します。
副業・兼業の禁止や一律許可制にしている場合は、副業・兼業を認める方向で就業規則等を見直すことが望ましいとされています。厚生労働省モデルのように届け出制にする場合と、さらには許可制とする場合の二つがあります。副業農業に取り組む視点からは、届け出制とする方がより取り組みやすいようです。
また、就業規則等の見直しに当たってのポイントは、副業・兼業を原則認めることとしつつ、①労務提供上の支障がある場合など、裁判例において例外的に副業・兼業を禁止または制限することができるとされている場合を必要に応じて規定すること②副業・兼業の有無や内容を確認するための方法を、労働者からの届け出に基づくこととすること、などがあります。副業・兼業に伴う労務管理を適切に行うためには、やはり届け出制など副業・兼業の有無・内容を確認するための仕組みを設けておくことが望ましいです。
次回は、職員の副業農業の意思と管内農家の求人情報とのマッチングなどを考えます。
(JA全中教育部教育企画課人事労務チーム・高山靖弘)
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