次世代確保へ対話、納得、自覚が原動力 出向く活動強化を JA全中が第8回JA営農・経済フォーラム2022年9月22日
JA全中は8月30日と9月2日、横浜市と大阪市で「次世代担い手の確保に向けて」をテーマに第8回JA営農・経済フォーラムを開いた。昨年10月の第29回JA全国大会では、地域の担い手の現状と後継者などについて点検し、次世代の組合員を確保する「次世代総点検運動」に取り組むことを決議した。実践初年度となる今回のフォーラムでは組合員へ出向く活動の強化や、組合員の参画で次世代を確保する取り組みなど先進事例が報告された。
(各実践報告は別記事で紹介します)
成長戦略の主役を育成
JA全中常務 肱岡弘典氏
JA全中常務 肱岡弘典氏
2021(令和3)年10月に開催した第29回JA全国大会では、「現状の担い手の年齢構成や後継者等の状況等を総点検し、確保すべき次世代の組合員数などの目標を設定し事業承継等の個別支援や新規就農者の育成・定着を支援する」取り組みを「次世代総点検運動」と位置づけ重点的に取り組むことを決議した。
この運動では次世代組合員を「計画的」かつ「確実に」創出することをめざす。
第一段階として計画的に取り組むため、組合員アンケートや話し合いを通じた「組合員参画型の地域農業振興計画・中期経営計画」を策定する。第二段階は、目標を確実に実現するため計画策定を通じて支援対策を講じる対象者を明確にし、「ターゲットに応じた個別支援の実践(事業承継、新規就農支援、農業労働力支援など)に取り組む。
JA全中は今年1月の理事会で「JAグループ次世代総点検運動取り組み方針」を決定した。方針では第29回JA全国大会決議の実践期間(2022(令和4)年4月から2025(令和7)年3月)を運動の集中実践期間としている。
取り組み方針ではJAの具体的な取り組み内容として、▽運動を統括する常勤役員や総括部署に設定など運動実践体制の構築▽営農部門の中期的な取り組み方針となる地域農業振興計画への次世代組合員数目標の設定と、目標達成に向けた実施具体策の策定▽支援対象の明確化と実施具体策の実践について、スケジュールを設定して取り組む――こととしている。
JA全中の調査によると今年5月末時点で大宗の県域で一定の方針を策定しており、各県域で運動が動き出していることが明らかとなった。また、取り組み方法について「組合員参画」を位置づけているのが56・3%あり、具体策の策定状況は「事業承継支援」で50・0%、「新規就農支援」で58・8%、「支援対象者の明確化」は51・5%となっており、半数以上の県域で具体的な取り組みが始まっていると考えている。
JAの営農・経済事業の意義は組合員との徹底した話し合いに基づき、納得感のある目標を設定し、実施具体策を計画化し組合員とともに実践し、PDCAを回すことで「持続可能な農業」の実現に向けて組合員の負託に応えていくことだと考えている。ときには組合員と揉めることもあるかもしれないが、その要因を組合員とともに考えてPDCAを回すことが大切だ。それはJAの隠れた苦労を組合員が知る機会ともなる。
持続可能な農業とは、再生産可能な農業所得を安定的に確保することとあわせ、次世代組合員を「計画的」かつ「確実に」創出できていることである。すなわち、「次世代総点検運動」とは、将来のJAの経営基盤の確立に向けた中長期的な投資であり、最重要の成長戦略であると言える。
納得感を得るための組合員との徹底した話し合いに労を惜しんではならない。それによって農協運動の主役は組合員自身であることを自覚することになればJAの組織・経営基盤がさらに強化されていく。
【課題提起】
「己を知り」力を結集
JA全青協参与 柿嶌洋一氏
JA全青協参与 柿嶌洋一氏
就農当時はいわゆるアンチ農協だったが、農商工連携のセミナーを通じてブランド産地づくりは1人ではできないことに気づき、JAでなければできないと考えるようになった。
ただ、JAと連携してみると組合員とJA職員がかみ合っておらず、組合員はJA運営への参画意識が欠如し、職員は組合員の願いを実現しようとしているのかなど、どちらも当事者意識がないのではないかと感じた。
一方、青年部活動で経営に課題を持つ盟友の商品開発などに取り組むなかで個人や地域の課題はみんなの課題であることを実感した。JAの課題も自分自身の課題でもある。
次世代総点検運動では地域農業振興計画を策定することになっているが、JAは組合員と真摯に向き合い、徹底した話し合いによりJAと組合員がともに実践すべき計画として策定してほしい。組合員と話し合わずに「前年比5%増」などと安易に事業計画を立てていないか。計画が組合員と共有できているかを考えてほしい。お互いに当事者意識を持つことが必要だ。
次の時代の産地を形成するため走り出すための手段が次世代総点検運動であり、国民の食料を守るためにJAグループの力を結集する必要がある。そのためには己を知ることが求められる。だから次世代総点検運動が重要となる。
総合力磨く人材重要
JA全青協会長 佐藤崇史氏
JA全青協会長 佐藤崇史氏
就農12年めで水稲20ha、ブロイラー約7万羽、大豆の作業受託80haなどの経営をしている。
これからのJAに必要なものは情報量と分析力だと思う。膨大な情報のなかで質の高い有効な情報を分析し組合員に届けていくことが重要だ。
経営発展につながる新技術、消費者ニーズを捉えるマーケティング情報、確実に競争が激化している海外農産物の情報から、教育、文化、組合員が安心して暮らしていける医療などまで情報が求められている。
組合員としてJAとしっかりキャッチボールをしてきたい。ただ、組合員はJAを「農協さん」と呼んでいる。そのためにはJAはチームプレーが必要だ。組合員、経営体ごとに課題も考え方もさまざまだが、各事業の担当がバラバラの活動で組合員の課題や意向を共有できているかどうか。総合力の発揮が必要であり、それがJAの強みになるはずだ。長年地域の中心として活動してきたネットワークと経験はJAの財産だと思う。
今こそ、その力を発揮して、組合員とともに考え提案し合える職員を増やし、ネットワークを活用して農業界を超えて地域一体となる活動の展開が求められている。
資源の乏しいわが国で人材は宝。次世代へしっかりと経営資源を投資して農業と地域を作る。今やらずにいつやるのか、だと思う。
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