第8回JA営農・経済フォーラム 実践報告④JA紀の里 山名純一専務2022年9月22日
JA全中は8月30日と9月2日、横浜市と大阪市で「次世代担い手の確保に向けて」をテーマに第8回JA営農・経済フォーラムを開いた。フォーラムで報告された先進事例を順次、紹介する。
【実践報告④】
農家主役に品目別戦略
JA紀の里 山名純一専務
JA紀の里 山名純一専務
JA紀の里管内にはさまざまな品目があることから「フルーツ王国としての地位確立」「野菜産地としての地位確立」などを目標とする品目別戦略を作成しているが、第8次中期計画では、より地域の実情をふまえた農業振興計画とするため地域別戦略を策定した。
そのひとつが商標登録を取得している「あら川の桃」で生産部会には363人が参加している。JAは部会組織を中心とした後継者育成をめざし「あら川の桃部会」で意向調査をした。その結果、規模拡大を希望する部会員は1割にも満たなかったのに対し、縮小や離農を考えている部会員は約2割となった。
一方で約100人が「新規就農をめざす人に技術指導をしてもいい」と回答した。それをもとに行政との連携で確保した桃の園地をトレーニングファームとして活用し、部会員が研修サポーターとして2年間支援する仕組みをつくった。3人の研修生に9人のサポーターという体制となっている。
目的は「あら川の桃」ブランドの維持と優良農地の維持。研修サポーターは部会員であり、新規就農者を志す人材を広く確保、育成していくことの必要性を理解しており、その意識が高いこと、優れた農業技術や経営能力を持ち地域において先導的な役割を担っていることなどの条件を満たす農家とした。
研修サポーターはJAと毎月会議を行い、研修の課題や改善方法などを協議した。それが研修サポーターの意識向上にもつながった。平成27(2015)年からの取り組みで4人が研修後に就農、また現在も研修は続いている。
研修生は書類審査、面接審査ののち、サポート会メンバーとの懇談などを経て研修スタートとなる。現在、研修中の若者は家族がおり、研修サポーターが住居の確保や保育園の入園手続きなど地域での生活までを研修が決まった時点からサポートしたという事例も出てきた。
課題は研修終了後にスムーズに営農を開始できるよう農地確保を支援することや、初期投資を抑えるための安価な中古機械などの確保と、機械の保管と作業場としての倉庫の確保などだ。研修はサポーターが向上心を持つ機会にもなっている。農家が主役となるサポーター制度を他の部会でも実施できれば産地の活性化や後継者問題の解決につながる。
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