JAの物流 新ビジネス創造へ JA経営ビジョンセミナー 静岡で第2セッション(1)2022年10月7日
JA全中は9月14、15の両日、静岡県で「JA経営ビジョンセミナー」第2セッションのセミナーを開いた。先行き予測が困難な今日、JA経営者が将来の経営ビジョンを示し、リーダーシップをどのように発揮すべきかの問題意識のもと、JAの経営者が現地・現物・現実の場で、相互啓発するセミナー。今回はJAの組合長を中心に常勤役員20人ほどが参加し、掛川市の大日本報徳社を会場に静岡県を中心に展開する「やさいバス」を視察し、新しい事業に取り組む際の心構えや仕組みづくりなどについて意見交換した。
地域内を巡回して野菜を集めるやさいバス
「やさいバス」とEC融合
「やさいバス」は、静岡県の牧之原市を拠点とするやさいバス(株)が運営する、地域の生産者とレストランやスーパーなどの需要者を直接結ぶ野菜の共同配送物流システム。共同配送のトラック(やさいバス)が、県内のさまざまな集荷場所(バス停)をぐるぐる巡回し、地域の生産者の新鮮な野菜を近くの拠点(バス停)を通じて、ユーザーに届ける。地域内で必要とする人に、必要とする農作物を直接届けることで、物流コストを削減しようというもの。
現在では物流機能だけでなく、受発注ができるEC(電子取引)機能や、生産者と消費者を結ぶ情報コミュニケーションの機能も果たす。広島県では、バス会社と契約し、長距離バスを利用して、県北の中山間地の農作物を広島市市内の量販店へ搬入する取り組みなどもある。
この物流システムは、いわばMaaS(マース=サービスとしての移動)とEコマースを融合させた地域内経済圏のプラットホーム的なもので、具体的には地域ごとに企業や行政など多様な利害関係者が、やさいバスをプラットホームとして、それぞれ必要とするサービスや商品、情報などをやりとりして、新しいビジネスや地域経済のエコシステムの構築などにつなげている。
JA経営ビジョンセミナーのフィールドワークではやさいバスを利用する静岡市のマックスバリュー静岡丸子店を視察。同店はやさいバスの特設コーナーを設けてアピールしている。地産地消のコーナーにある売り場には図入りのパネルを設け、やさいバスおよびその仕組みを説明し、客の関心を引いている。
鮮度と多品目で魅力追求
マックスバリュー東海の地産地消を担当する淺湯貞文バイヤーは「なるべく地元の野菜を売りたいので、県内を回って、さまざまな野菜を集めてくるやさいバスは助かる。リピータの客がついており、まだ4店舗だが、これから増やしたい」と期待する。
同じくフィールドワークで視察した静岡県袋井市のアグリサービスジャパンは、ユーザー(バイヤー)と契約農家を結び、品目の選定や作付け、マーケティングプランの作成などのサポートを行っている。
4、5年前からやさいバスとの取引を始め、少量多品目の野菜を扱っている。同社の多治見孝之取締役は「静岡市と浜松市を行き来するやさいバスで、その日のうちに新鮮な野菜を届けることができる。新しい野菜に挑戦するときは、まずやさいバスで試す」という。同ファームでは、いまバターナッツカボチャの売り込みに力を入れている。
地域の問題解決型の事業
東大農学部を卒業し、ロボットの工業機械の仕事から13年前にやさいバスを立ち上げた加藤百合子代表取締役は、この事業について、「地域の問題解決型の事業」という。「せっかくよい野菜ができたが売り先が分からない」「マーケットインの生産が必要だというが、何が売れるか分からない」など、農家から持ち込まれるさまざまな課題を解決する中から、やさいバスの事業を軌道に乗せた。「農業の魅力を少しは引き出せたかな」と振り返り、野菜の新しいビジネスに手応えを感じている。
セミナーでは、やさいバスの取り組みを材料にグループで意見交換した。そのなかでJAとして取り組むことができるかどうかが議論になり、すでに定着している販売チャネルがあり、「全量は無理だが1、2割であればやってみたい」との反応があった。
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