地域で資金循環 再生エネ発電も 福島・会津の事例探る JA経営ビジョンセミナー(1)2023年2月8日
地域企業の使命は何かー。JA全中は福島県喜多方市で食料・エネルギーの地域内自給をめざす合資会社大和川酒造店、会津電力(株)の取り組みを参考に、現地で「JA経営ビジョンセミナー」を開き、同じように地域に密着した事業を展開するJAの将来像を探った。喜多方市で大和川酒造店など、地元の有志が出資する会津電力(株)は太陽光・小水力、木質バイオマスなどの自然再生エネルギーを使った発電を行い域内で消費。併せて地域の経済や文化の保存や掘り起こしに力を入れている。大和川酒造店会長の佐藤彌右衛門氏は「会津には恵まれた自然の資源がある。これを生かして事業を起こし、それで得たお金を地域で循環させ、地域を活性化する仕組みづくり」を提唱し、これからのJA経営の進むべき方向を示唆した。
大和川酒造店の佐藤彌右衛門会長
豊かな資源で自立創造
それぞれの地方には老舗(しにせ)と呼ばれる企業がある。大手資本による全国ブランドの浸透で多くの老舗が廃業・縮小を余儀なくされるなかで、その地方の伝統と文化を守りながら、時代の変化に対応してきた老舗も少なくない。特に酒類、菓子類、そして旅館業は、それぞれ米と水、食材、自然、つまり地域資源の上に成り立っている。
大和川酒造店もその一つ。同社は1790(寛政2)年の創業で、以来二百数十年にわたって酒林(造り酒屋の軒下などにつり下げる杉の葉を球状にした一種の看板)を掲げてきた。代々「彌右衛門」を襲名し、現在会長の彌右衛門氏は9代目となる。
会津盆地の北方にある喜多方市は、飯豊連峰からの豊富な伏流水と米を生かしたみそや酒などの醸造に最適の条件を備えている。この経済力とともに「男四十(歳)にして蔵の一つも建てられないようでは男ではない」という、この地方特有の風土が、今日の「蔵のまち」と言われる喜多方を生んだ。この気概、心意気を9代目にもしっかり引き継いでいる。
彌右衛門氏によると「会津には捨てるものもないが、無いものもない」。食料、水、エネルギーなど無駄なものはなく、生活に必要なものはすべてそろうという。それのみかエネルギーに関しては域外への供給源となっており、同氏によると会津地方で産出する電力のうち、地元で使っている量はわずか。彌右衛門氏らの取り組みには「東京に送っている電力を買い戻し、地元で使うようにするべきだ」とする"会津自給圏"構想が基本にある。
原発事故を契機に
会津電力はこの考えに基づいて事業を行う。創設のきっかけは2011年の東日本大震災にある。彌右衛門さんらは、震災直後に一升瓶に水を詰めて福島県の被災地に送ったが、原発被害の大きさに愕然とし、原子力発電に頼る電力エネルギーに疑問を感じた。彌右衛門氏らは「東電を批判するだけでなく、原発を見過ごしてきた責任として太陽光、小水力、木質バイオマス、地熱、風力などの再生可能なエネルギーを他地域から運び込むことなく、まず私たち自身でつくりだそう」との考えた。
原発事故の2年後の2013年、会津地域の有志が集まり、会津電力を設立。地元資本や市民ファンドで資金を集め、小規模分散型発電設備の設置を始めた。株主は会津地域8市町村20企業、金融機関5行、個人50人の計83団体・個人からなる。会社の理念は「地域内で資金を循環させ、地域の自立を実現すること」とうたっている。電力販売、燃料(木材チップ)供給、木材伐採などの事業を受け持つ関連企業も立ち上げた。
小規模分散の発電
設立の趣旨は、①燃料代を地域の中で還元しよう②持続可能で豊かな会津を子どもたちへ引き継ごう③自治体、個人、企業から出資を受け、地域の会社にーーの三つ。小規模分散が基本で、主力の太陽光発電所は各地に分散。うち40カ所には非常用電源があり、停電の時には地域の人も利用できる。現在、同社グループ全体で、89カ所の発電所があり全発電所の発電量は6000㌗余りになる。
このほか、ワイナリー事業も展開。耕作放棄地など未利用の地域資源を活用してブドウを栽培。2020年喜多方市にワイナリーを設置し、ワインシードルの製造を始めた。また、直近では2022年、バイオマス事業で「森のちから㈱」を立ち上げた。ボイラー設備システムによる熱の供給、再造林による里山再生、木質燃料の木チップの供給、それに二酸化炭素吸収・固定の認証機関設立支援などを行う。
大和川酒造店は酒米を生産する農業法人「大和川ファーム」も持つ。酒蔵が米を自社生産するメリットについて同社の武藤治吉社長は、①トレーサビリティの実現②地産地消の推進③酒造りに適した米を確保できるの三つを挙げる。現在水稲50ha(酒米は3分の1)を栽培し、ライスセンターも持ち、スマート農業にも挑戦。農家の高齢化と後継者不足に対応した地域でのモデル農場を目指す。
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