地域で資金循環 再生エネ発電も 福島・会津の事例探る JA経営ビジョンセミナー(2)2023年2月8日
地域で資金循環 再生エネ発電も 福島・会津の事例探る JA経営ビジョンセミナー(1)より続く
仕込蔵を改装した、梁が露出したイベントホールで
伝統・文化の強み生かし
JA経営ビジョンセミナーでは現地で施設を見学し、彌右衛門氏らの話を聞きグループワークした。
JA全中教育部の田村政司次長が、①大和川酒造店の8代目(先代当主)は、地域の伝統的な蔵(蔵のまち喜多方の象徴)を同社の敷地内に移転したのはなぜか②現9代目は杜氏に依存した酒づくりから自社内製化(製造機械化)し、酒米も自社で内整化したのか③現9代目はなぜ電力会社を設立したのか――など課題提起した。
議論のなかで明らかになったキーワードは「地域」「伝統」「文化」だ。これに基づいた事業を展開することの重要性が指摘された。セミナーの会場になった建物は旧仕込み蔵を改装したもので、市民のイベント会場にもなり、表には北方風土館の看板を掲げている。
地域の強み生かす
「コーディネーターを務めた静岡県立大学の落合康裕教授は,経営危機に直面した場合の老舗企業とスタートアップの企業の違いをレガシー(遺産)の有無にみる。それを継承すところに老舗企業の強みがある。
同教授によると、日本で100年続いている企業は5万2000社以上ある。老舗企業で最も多い業種は酒造業で、次いで旅館業、和菓子業だが、酒造業が長続きする理由について同教授は、大和川酒造店の杜氏の話を紹介するなかで、「水や米が違う、造る人も違うということで、真似しようとしても用意に真似できできないことだ」という。
その企業ではできない、地域に根ざした酒づくりが酒造業の特徴であり、大和川酒造店も代々の彌右衛門が、地域に根差した立地の強みを生かし、環境の変化に対応して実績を重ねてきた。8代目は酒の小売りを始め、現9代目は製造工程の機械化、杜氏制度の廃止、ネット販売を始めるとともに、原料を確保するためにの大和川ファームを設けるなどの新路線を打ち出した。さらに後継者は大手外食チェーンへの有機米供給に挑戦している。
機械化した製造工場を視察
また、佐藤右衛門氏は、大和川酒造店のこうした取り組みは「地域外の人でもできるかもしれないが、文化・歴史のつながりを持っている方が有利。JAはこれにぴったりはまるのではないか。組織は大きくなると、地域に根差したアイデンティティが失われる。会津の酒は日本でもトップレベルだが、平成2,3年のころは一本も金賞がなかった。いま入賞するのはファミリー酒屋が多い。7代目はよく話していた。大地震・震災、大恐慌、戦争は必ず起こる。それに備えておけ」と。東日本大震災は、この言葉通りになった。
またこうした彌右衛門さんらの取り組みは、それに賛同する人を呼び込む。全国で有機米の生産・販売を手がける有機米デザイン㈱(本社・東京)取締役の中村哲也氏は、彌右衛門氏らの再生可能jエネルギー利用の考えに共感した一人だ。自動車会社にいた経験を生かしてアイガモロボットを開発したエンジニアで、有機栽培の米づくりを全国で展開する。同氏は「東京電力の原発事故で食料自給の重要さを痛感した。「いざというとき、車は役に立たず、お米も手に入らないことが分かった。どうせ米をつくるなら有機米をと考えた」と、セミナーに特別参加し、米づくりの動機を話した。
フィールドワーク、グループワークを通じ、参加したJA常勤役員からは「大型化し、組合員からJAが見えにくくなった。地元の歴史、伝統、文化を大事にしたい。われわれは地域をみず、農協中心に考えて事業をしてきたのではないか。地域にしっかり密着し、地域に根差した事業にしなければならない」「組合長として、自分の代で何ができるか考えている。われわれには、よりよい農協にして次代へ引き継ぐ責任がある」などの声が聞かれた。
消費者の共感が大事
落合教授は最後に、課題は地域のエネルギー自給をいかに高めるかにあるとし、そのことを消費者が理解し国産を消費してもらう取り組みが必要。消費者の関心は価格にあるが、これからは二酸化炭素の削減などでも消費者と意識を共有して取り組むべきだ。JAの合併は「数字ありきの文化」の見直し、ビジョンの実現に向け、あきらめず言い続けることが大事。合併のメリットは機能性の向上だが、主体性の喪失というデメリットがある。このジレンマをどう克服するかがこれから問われるだろうと指摘した。
また、JAについては、合併で組合員の顔が見えなくなった。組織力の低下、密着の希薄化がある。食と農でどう地域貢献するか。その意味でみどりのシステム戦略の実行は重要。それをいかに実践するかが農協に問われている。その意義をアピールする役職員の役割は大きい。大和川酒造店に学び「顔のみえる関係」を構築していく必要があると話した。
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