【TACパワーアップ大会2023】提案する時代から伴走する時代へ 担い手とともに地域農業を作る JA全農耕種総合対策部 岩田和彦次長に聞く2023年11月29日
TACパワーアップ大会2023ではJA全農耕種総合対策部の岩田和彦次長が「今後のTAC活動について」と題して報告した。そのポイントと今後の課題などを改めて聞いた。
TACパワーアップ大会2023で参加者にTAC活動の重要性を強調する岩田次長
――現在のTACの活動状況を改めて聞かせてください。
TAC活動は2008年から始め、2012年には年間面談回数が11万2000件を超え、それをピークに下がってきています。その理由は当時はとにかく訪問件数を増やそうという時代だったからです。
それに対して現在は1件当たりの時間が増えており、活動が濃密になっているということだと思います。
実際、近年の活動内容を整理すると営農相談や農業経営相談という、時間がかかり踏み込んで対応しなければいけない活動がかつての約2倍になっており、これはTAC活動20年の成果だと思っています。
今後、より質の高いTAC活動に向けては▽活動を支える体制整備、▽活動を管理するマネジメント強化、▽活動レベルを上げる人材育成の3つを切り口とした活動の強化が必要です。この3つはセットで取り組む必要があります。
そのため全農では出向く活動を行うJAの体制維持・強化を支援し農業を取り巻く環境の変化に対応できる体制構築をめざすことを目的に2019年度から「出向く活動強化運動」を展開しています。2021年度時点で38県域285JAが参加しています。
取り組みの内容は▽JAの体制整備チェック、▽JAの出向く活動強化チェック、▽TACの活動目標面談、▽TACの人材育成目標、階層別カリキュラムの整備などです。この取り組みには「TAC」とは呼んでいないが出向く活動に力を入れているJAも参加しています。
一方、TACの活動をシステム上で管理・共有しようと開発した「TACシステム」を利用しているのは181JAで利用しているTACは1448名です。
TACシステムはJAの営農経済部門で唯一全国で共有しているシステムです。これを18年振りに更新します。
まだTACシステムを利用していないTACもいますが、全国共通で取り組みを共有できるシステムを使うことが、われわれの仕事の「見える化」につながると思います。もちろん組合員に対する出向く活動に際し、それぞれの職員の持つ職人的な知識は大事だとは思いますが、これからDX(デジタルトランスフォーメーション)時代を迎えるにあたって、業務や成果の「見える化」や、各地の優良事例をさらに共有していくことも重要と考えます。このことから更新する新しいシステムを使った活動をぜひ展開してほしいと思っています。
この新しいシステムは「担い手営農サポートシステム」と言います。このシステムでは担い手管理、担い手からの問い合わせ管理、TAC活動の管理、情報共有などを整理するとともに、外部の営農支援サービスシステムやJAの販売購買実績を管理する経済システムなどとの連携を検討しております。もちろんどう連携させるかは地域の状況に応じて判断することとなり、担い手営農サポートシステムのなかでさまざまな情報をよりビジュアル化し分析を迅速にして、より担い手との結びつきを強くしていただきたいと考えています。
よりビジュアル化するという点では、TACの活動実績をリアルタイムで表示する自動車の「ダッシュボード」のようなかたちでデータを可視化します。これはTAC本人にとって活動を高度化するための可視化だけではなく、管理者にとっても活動を把握し効率化を図るものだと考えています。
TAC活動は、その活動を管理するマネジメントが重要です。そのため2022年にマネジメント強化に向けて「TACの手引き」を作成しました。この手引きに活動要領の制定や訪問先リストの作成といった施策立案(P)から、訪問活動(D)、担い手からの評価検証など活動総括(C)、活動総括に基づく改善(A)を整理しており、PDCAサイクルをどう回すかが書かれています。また、これに基づいて「JAの出向く活動チェックリスト」も作成されています。活動に悩んだらぜひこの手引きに立ち戻っていただきたいと考えています。
――今後の活動で重要なことは何でしょうか。
2023年度の「出向く活動全国一斉調査」では、「TAC体制の整備」をしたいという県域が圧倒的に多いという結果でした。JA職員が減るなかで担い手との接点を現場でしっかり持たなければならないということだと思います。しかし、職員は多くない。その危機感を全農も共有しており、JAの役員にそれを粘り強く訴えていくのが全農の仕事だと思っています。
具体的な取り組みとしては、担い手ニーズの高度化・多様化に対応するためTACを中心とした事業間連携体制が大切です。購買や販売事業はもちろん、信用事業、共済事業も含めた横の連携を強めて、担い手からも「JAはいろいろなことを一緒に提案してくれる」という評価を得られるJAの強みをチームとして発揮することが大事だと思っています。そのための鍵となるのはJA総合事業マネージャーです。
今回の大会でJA全青協の稲村会長は「TACには担い手に伴走してほしい」と言われました。聞くだけではなく、どれだけ対応策をフィードバックするかが問われています。まさに提案する時代から伴走する時代へ、そして担い手とともに地域農業を作ることが求められていると思います。
――改めてTACの意義についてお聞かせ下さい。
TAC活動は2008年から始めましたが、その時代、時代でTACに求められるものは変わってきています。その意味で今回の大会では、みどりの食料システム戦略への対応や地域の集落営農組織の再編など、まさにこれからの課題についての具体的な取り組みがTACから報告されたことはその象徴だと思います。
今こそ培ってきたノウハウをもとに改めてTAC体制を作っていただき、今後求められている担い手による農地の維持、環境に配慮した農業など農村の課題を解決するのはTACしかないと思っています。JAトップ層にはぜひTACの可能性を信じて体制を強化していただければと思っています。
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