【JA全農酪農部・深松聖也部長に聞く】(2)コストの吸収課題 酪農理解が道開く2024年1月23日
飼料価格が高止まりして酪農経営が厳しいなか、牛乳類の安定供給のための全農による生乳の全国調整機能が重要になっている。最近の生乳需給の状況とJA全農酪農部の事業展開について深松聖也部長に聞いた。
【JA全農酪農部・深松聖也部長に聞く】(1)牛乳は必需品 国の支援も より
JA全農酪農部長 深松聖也氏
――協同乳業や日本酪農協同など子会社化や出資・提携も進めています。改めてその狙いを聞かせてください。
人口減少とともに牛乳の消費は減少しており、乳業メーカーが牛乳単独で利益を上げていくことは難しいという声も聞かれます。さらに個々の乳業メーカーが牛乳製造に係る老朽化した施設に投資していくこともなかなか難しいという状況になっています。
それでも牛乳を供給できる体制を今後もしっかりと継続していくため、私たちと方向感を共有できる農系乳業は酪農理解の醸成と併せ、しっかり市場を担っていかなければいけないだろうと思っています。酪農の再生産と乳業各社の健全な発展に向け、方向感をより共有して事業展開できるように農系乳業との関係強化に取り組んでいます。
――さて、昨年11月に開いた第41回全農酪農経営体験発表会は、厳しいなかでも仲間とともに前向きに挑戦する体験発表でした。
40回まではいわゆる経営コンクールでした。いろいろな創意工夫で成果を上げた酪農家が優良事例を発表し、それを皆さんの参考にしてもらうというものです。
ただ、全国のどの酪農家も経営が厳しくなっているなか、従来の経営コンクールスタイルでいいのかということも今回の大会の背景にありました。それだけではなく、もともと酪農は酪農家が一人で営んでいるわけではなく、多くの人が関わって連携して経営が成り立っているという思いがありました。
そうであれば酪農家の周りで頑張って活躍している人や組織に光を当てて、その取り組みを紹介することに大きな意義があると考えました。
そういう考えのもと、酪農ヘルパーの事例や都市型酪農が県行政と連携した第三者継承の事例、家畜統合管理システムを活用して酪農家とJAとの間でしっかり情報を共有している事例、組織と行政が支える公社農場事業、乳業メーカーが新規就農を支援している事例などが発表されました。
酪農経営には一つの答えがあるわけではなく、それぞれの土地でそれぞれの特徴を生かした経営がいちばんいい経営だということです。またそれが酪農の面白さだと思います。今回は多くの夢を持った学生のみなさんにも来てもらいましたが、多様な酪農の形があるということや、酪農家の周りにはいろいろな仕事があるということを知ってもらう機会になったと思います。
結論ではないですが、酪農には協同が大事だということで、協同組合精神はより大切になると思っています。その意味で発表会はゴールではなく、人と人とのつながりのスタートの場であり、今回はそれが実現できたと思っています。次回の大会も生産者のため組織のためになるということを念頭に開催したいと考えています。
――地域経済にも大きく貢献する各地の酪農の意義と全農酪農部のめざすことは何でしょうか。
土地の特性をうまく利用してその地域を活性化させ産業として酪農がしっかり位置づいていくことが重要だと思います。また、食料生産の重要性、命の大切さを子どもたちに教える活動なども農場から発信しているところも増えています。酪農の多面的機能とよく言いますが、こうして具体的に地域で実践している例を普及させていくことは重要だと思います。それを全農酪農部としても支援、協力できるような事業展開も大事だと考えます。私たちも時代に合わせて事業を変化させていかなければならないと思っています。
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