【新春特別講演・2】沸騰する地球・気候危機が生む負の連鎖 「危機感持とう」 三重大学教授・立花義裕氏2024年3月6日
(一社)農協協会と農協研究会は2月28日、東京都内で新春特別講演会を開いた。講師は元外務省欧亜局長の東郷和彦氏、三重大学の立花義裕教授、日本労協連理事長の古村伸宏氏。「沸騰する地球・気候危機が生む負の連鎖」をテーマにした立花氏の講演の概要を紹介する。
三重大学教授・立花義裕氏
去年は極めて異常な気象でした。二酸化炭素(CO2)放出に伴う地球温暖化が一因というのは私たち科学者には自明でヨーロッパでも常識ですが、日本では未だに「たまたまでしょう」という人が大多数です。
「沸騰する地球」は去年、流行語大賞にノミネートされました。特に沸騰化したのが日本でした。戦争をしている暇はないんです。地球温暖化はわれわれ人類が加害者であり被害者です。
去年、「日本が四季の国から『二季』の国に変わった」という話を耳にされたと思います。耳にさせたのは実は私です。全国放送では初めて、8月3日の報道ステーションで話しました。
ユーラシア大陸の雪が温暖化で融けると、陽の光を浴びて温度がどんどん上がります。偏西風にのって温かい空気が日本にきて、桜が早く散るのです。
偏西風は北極と熱帯の境目に吹き、北側と南側では気温がまったく違います。大陸から吹いてくる偏西風は日本付近で北に曲がっています。偏西風が近年激しく蛇行するので日本、西欧が狙い撃ちされたように暑い。
北極が温暖化しています。シベリアの氷が融けて白熊さんが困っているという話、聞きませんか?
急流で流れが速い川はまっすぐで、緩く流れが遅い川は蛇行しますが、空気も同じです。赤道と北極の温度の差が大きいほど偏西風は速く吹きます。北極は温暖化していますが赤道はあまり温暖化していないので、温度差が縮小し偏西風が蛇行するのです。
1月にも羽鳥モーニングショーに呼ばれていたのですが、前日にダウンタウンの裁判が決まって、急遽変更になりました。異常気象よりもダウンタウンの方が大事だと多くの国民が思っているからでしょう。東郷さんの話にもあったように日本は民主主義、テレビも民主主義です。日本のレベルが高ければテレビも戦争や温暖化を連日扱うでしょうが、日本のレベルが低いと1月にわかりました(笑)。
それはともかく、以前は暑い夏、寒い夏を繰り返していましたが、2010年以降は北半球で猛暑が連発します。日本は、西は大陸、東側は海ですが、地球温暖化でまず温度が上がるのは陸です。陸から暖かい空気が吹いて日本列島が覆われ、それを避けるように偏西風は北に蛇行するのです(ちなみに冬は逆に蛇行し、寒さも厳しくなります)。そうしたことから、世界的にみて日本は、異常気象も最も多発しています。だから「自衛隊を国土防衛隊に」という(農協協会の)村上光雄会長の提言に私も賛成です。
日本の南には黒潮が赤道から流れてきます。以前は、紀伊半島から東に向かった黒潮が、去年はいったん屈曲した後、東北沿岸まで北上しました。サンマが不漁で高くなるとか、北海道でブリが獲れるのもその影響です。いったん上がった水温はなかなか下がらないので、残暑が長引き秋が短くなります。水温が上がると「雨の種」となる水蒸気も増え、豪雨も多発します。
水温と気温、偏西風と黒潮の蛇行、全部が変わったのが2010年頃で、私たちは「気候のレジームシフト」と呼んでいます。もしかしたら去年、第2段階に入ったかもしれません。
対策はCO2を減らす、これだけです。戦争はCO2を大量に出すのでやめるべきです。CO2を減らしても、一定の温度を超えると戻れなくなります。その境は、産業革命以前の地球平均気温より1・5~2度といわれています。現在1・4度くらいです。
【質問に答えて】
参加者 臨界点を超えた後の農業はどうなりますか。気候危機はイノベーションで乗り越えられるでしょうか。
立花 温暖化に対応した作付けや品種改良も求められると思います。半数も国民が危機感を持てば、イノベーションも起きるのではないでしょうか。
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