【新春特別講演・3】"協働"が耕す持続可能な地域 日本労働者協同組合連合会理事長・古村伸宏氏2024年3月7日
(一社)農協協会と農協研究会は2月28日、東京都内で新春特別講演会を開いた。講師は元外務省欧亜局長の東郷和彦氏、三重大学の立花義裕教授、日本労協連理事長の古村伸宏氏。「踏み出せ! 持続可能な社会へ」をテーマに労働者協同組合の経験から古村氏の講演の概要を紹介する。
日本労働者協同組合連合会理事長 古村伸宏氏
労働者協同組合(ワーカーズコープ)は、日本では一昨年10月にようやく法律が施行された新しい協同組合ですが、世界的には歴史を持ったスタンダードな仕組みです。
2025年は2回目の国際協同組合年(IYC)になると決まりました。国連事務総長レポートには「協同組合が......地域コミュニティーとすべての人々の最大限の参加を促進し」とあります。協同組合は組合員のための共益の組織ですが、ここでは、組合員ではない人たち、地域の暮らすすべての人々が参加していくために協同組合は有効なんだと述べています。
協同労働と労働者協同組合についてふれます。協同労働は、法的には労働基準法等にアジャスト(適応)させていますが、自分発で当事者性を持った働き方を、ともに働くなかまとの関係性のなかで高めていく。主体性と共同性を持った働き方が協同労働で、それを組織として保障するのが労働者協同組合です。
日本での歴史は1970年代後半、「失業」から始まりました。最初から労働者協同組合でいこうと決めていたわけではなく、一番大事にしていたのは「いい仕事をやろう」でした。
地域の人々や社会から信頼され喜ばれ愛される仕事をやろう。それを続けることで再び失業に陥らないようにしよう。それには資格や技能も大切だが、当事者性や主体性も大切ではないか。こういう自問の中から出会ったのが、ヨーロッパで復権を遂げつつあった労働者協同組合でした。
私どもの連合会に集まっている労働者協同組合を合算すると事業規模は年380億円、働いている人は1万5000人くらいですから少数ですが、私が入った1986年頃は20~30億円ほどでしたから、苦労や格闘を経て世の中に見える規模になってきたと思います。事業領域は、子育て関連、介護・福祉など対人社会サービスを中心に広がってきました。
協同組合の法律としては42年ぶりに立法された労働者協同組合法は、すべての政党・会派が参画し20年かかりましたが議員立法で成立しました。
第1条では、組合員は出資し意見反映し事業に従事するとされています。目的は、多様な就労機会、地域の需要に応じた事業実施(仕事おこし)、持続可能で活力ある地域社会の実現に資することです。多様性が持続可能性を担保し、一人ひとりが当事者、主体者であるところに活力の源泉があります。
2月21日現在、全国で73の労働者協同組合法人が設立、登記されています。第1号は三重県でできたキャンプ場を運営する労働者協同組合です。地域おこし協力隊など3年任期の公務員が作る。自治会が発案し、地域の困りごとや魅力を仕事にする。高齢者が経験を地域に生かすなど、新しい働き方がしたいという人たちが作っています。
注目しているのが兵庫県神鍋高原での取り組みです。大きなスキー場がありますが、近年雪が減って厳しい。そこで観光協会とウィンタースポーツのプロアスリートが協力し、温暖化に立ち向かおうとしています。具体的には、学校の教室を一室、子どもたちと住民とアスリートが断熱をするワークショップです。公の施設は多数あり、環境省はじめCO2削減には多額の予算が付けられています。それを大企業に取られるのではなく地域に還元していく入り口にもなると思いつつ、私たちも取り組んでいこうと考えています。
労働者協同組合法の仕組みを使って自分たちの働き方、ありようを変えようという人が増えています。協同組合同士が一緒に進めるプロジェクトを動かしていくツールにもなるでしょう。2025年IYCに、農協のみなさんと一緒に取り組めたらと期待しています。
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