【現地レポート】能登半島地震から100日(3)コミュニティー再生に壁2024年4月16日
1月1日に石川県能登地方を震源とする「令和6年能登半島地震」の発生から100日の4月9日。
能登農協(JAのと本店は鳳珠郡穴水町)に代表理事組合長の藤田繁信さん(68歳)を訪ね、被災地に入った本紙特別編集委員の村田武九州大学名誉教授に取材報告してもらった。
建物更生共済の共済金がすでに145億円
住宅損壊
建物更生共済(建更)には、組合員世帯1万1620戸のうち6693世帯、57・6%が加入していた。JA共済連石川の「被害調査・共済金支払状況」を提示してもらった。4月8日現在で、被害調査受付が9237件、うち調査済棟数は8343件(74・4%)、うち全損件数は2549件(31・1%)におよぶ。そしてすでに共済金が支払われたのは3453件、支払金総額が145億1493万円(1件当たり平均420万円)に達する。被害調査受付件数のすべてに1件当たり平均の420万円が支払われると388億円である。建更のJA共済事業としての存在の重要性が示されている。
無人の孤立集落
農業・農村をどう再生させるか
現在の大団地型仮設住宅への希望者の抽選による入居では、コミュニティが崩れることになる。農協は、仮設住宅の入居方式を基本的に集落単位とすべきことを強く要請すべきである。そのうえで、まずは今回孤立集落となった集落で、数戸単位で、集落ごとに、居住期限をつけない低家賃住宅を建ててはどうか。高齢化した農家に、損壊住宅の再建を求めるのは酷というものだ。高齢農家が集落に住み続けたいという希望を叶えるには、これしかない。仮設住宅の居住期限2年が来るまでに、農協が建設・管理する賃貸住宅への入居希望被災者がどれくらいいるか、まずその調査から始めてはどうか。街場の被災者には、自治体が公営住宅を準備すべきであろう。農協管理賃貸住宅も、自治体が建設する公営住宅にも、国の復興財政による手厚い支援があってしかるべきだ。集落に建設された賃貸住宅は、いずれ若い新規就農者に提供することができる。これは農村集落からの人口減少を食いとめる一歩になるのでないか。
仮設住宅の工事現場
そのうえで、能登半島の農業の再生はどうあるべきか。それは、大量生産大産地づくりではなかろう。世界農業遺産の能登半島農業は、環境・景観保全に貢献し、豊かな自然を求めて来訪する観光客にも豊かな食を提供する地産地消型の農業としての発展であろう。それは、若い世代の新規就農者や事業者を呼び込み、多様な農業生産・加工で生きる農業づくりに今後の10年をかけようとする住民合意を自治体とともに農協が獲得できるかどうかにかかっている。
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