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【2024年を振り返る】揺れた国の基 食と農を憂う(1)能登被災 支援途切れなく JA松本ハイランド組合長 田中均氏2024年12月20日

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今年の月別カレンダーも1枚を残すのみとなった。辰(たつ)年から巳(み)年へ。今年度の第45回農協人文化賞受賞者の一人、長野県の松本ハイランド農協組合長の田中均氏にこの一年を振り返ってもらった。

JA松本ハイランド組合長 田中均氏

JA松本ハイランド組合長 田中均氏

能登被災 支援途切れなく

▽自然災害の多発

1月1日、能登半島地震で始まった2024年。死者400人を超える大災害、農業被害も甚大である。さらに、9月には北陸地方を中心に記録的な大雨があり、復興を目指す被災地に追い打ちをかけた。被災された皆さんに改めてお見舞い申し上げるとともに、官民挙げて息の長い支援が必要だ。 

当JA管内でも、5月、8月、11月と集中豪雨にみまわれ農業被害が発生した。特に、11月には季節外れの大雨があり、収穫直前のりんごに大量の実割れが発生し廃棄を余儀なくされた。農家の皆さんの気持ちを察するに余りある。

地震はともかく、集中豪雨は温暖化の影響が大きいと言われている。しかし、2025年1月に大統領に就任するトランプ氏は、環境への影響を全く無視し「石油を掘って掘って掘りまくる」と公言している。カーボンクレジットという制度がある。CO2などの温室効果ガスを排出する企業が、植林などによりCO2を吸収するプロジェクトに資金を提供し排出分を相殺するというものだが、これが怪しい。計算値を過大に見積もることでプロジェクトの効果を水増ししているという報道もある。これを見せかけの気候変動対策、グリーンウォッシングというそうだ。世の中の流れが「今だけ、金だけ、自分だけ」になっていることを危惧する。

1月1日に発生した令和6年能登半島地震ではいたるところで山崩れが。

1月1日に発生した令和6年能登半島地震ではいたるところで山崩れが。

食料安保 国内自給重点に

▽「食料・農業・農村基本法」の改正

1999年制定以来、初めて「食料・農業・農村基本法」の改正法案が今年、5月29日に成立した。この法律は理念法であり、農業政策の方向性を示すものだ。具体策は、2025年3月頃「基本計画」で示されるという。基本法の大きなテーマは食料の安定供給の確保だが、それには国内生産・輸入・備蓄のバランスが重要となる。

国内生産を確保する指標として、自給率と自給力という指標が使われる。自給率とは、国内消費のうち「現在」国内で生産されている割合であり、カロリーベースで38%と先進国では最低水準だ。自給力とは、「今後」いざというときに国内でどれだけ生産できるかを表す指標で、輸出を振興し有事に国内向けに切り替えればよい、という主張に使われる。しかし、輸出の実態は、米の場合2023年は5・8万t余り、生産量の1%にも満たない。そもそも、世界の米消費量はインディカ米(長粒種)85%、ジャポニカ米(短粒種)10%といわれている。日本人以外の大多数は、日本で生産されるジャポニカ米ではなくインディカ米を食べている。し好が違うのだ。いくら日本食ブームといっても輸出には自ずと限界がある。

輸入については、ロシアのウクライナ侵攻により小麦価格が急騰したり、米の輸出国(インド・ベトナム・タイ)が輸出制限をしたり、外国頼りはリスクが大きい。しかも、中国などに買い負けて、お金さえ出せばいつでもいくらでも買えるというのは幻想になりつつある。そもそも、「平成の米騒動」(1993年)で緊急輸入したタイ米の末路を見ると、長粒種が日本で受け入れられるのか甚だ疑問だ。

備蓄については、民間在庫が本年6月末で156万t、政府備蓄米100万tを加えても5カ月分もない。

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