協同の心で次代につなごう 第55回全国家の光大会2013年2月15日
(社)家の光協会は2月6日、横浜市のパシフィコ横浜で「第55回全国家の光大会」を開いた。会場には全国から約2500人が集まり、大会最後には人・組織・地域の元気づくりをすすめ、心豊かで安心して暮らせる社会の実現にむけ、JAの支店を拠点に協同の輪を広げていくことや、JAが果たす役割の理解促進の実践などを申し合わせた。
◆地域の課題に向き合った実践を
大会スローガンは「人・JA・地域を結び次代へつなごう 協同の心」。園田俊宏会長はあいさつのなかで、「これからJAは第26回JA全国大会決議に従い、支店を核に組合員・地域の課題に向き合う協同の実践が求められる」として「25年度から始まる次期3カ年計画で支店等を拠点としたJA教育文化活動をこれまで以上に支援していく」と述べた。
来賓の萬歳章JA全中会長は「昨年のIYC(国際協同組合年)を契機に協同組合の維持、社会的・経済的な役割について国民・世界に呼びかけ、次代へつなぐ協同の取り組みをすすめていかなければならない。そのためにも引き続き教育文化活動を実践・強化していくことが必要不可欠」だとして、家の光協会へのより一層の役割発揮に期待した。
志村善一JA神奈川県中央会会長は「JA全国大会決議の組織基盤の強化では女性のJA運営参画が大きなキーワードとなっている。女性が元気、女性部が元気なJAは地域が元気になっている。まさにその起爆剤が『家の光』。JAの生活文化活動、地域活性化に欠かすことのできない教科書といっても過言ではない」とさらなる教育文化活動の広がりに期待した。
◆地域に光を射す“ごぼう大使”
大会恒例の体験発表の舞台に上がったのは前日の地区別審査会で選ばれた9人。
審査委員長の石田正昭三重大学大学院特任教授は今年の特徴について「ただ『家の光』を活用して活動するのではなく、自分たちの活動の広報やマーケティングに活用するなど、より積極的な利用方法が発表された」と述べた。その体験発表「記事活用の部」の最優秀賞「志村源太郎記念賞」には、「『ごぼう』で『地域の光!』に」の織笠光子さん(JAおいらせ・青森)が輝いた。
現在、長芋とごぼうを栽培する織笠さんは20歳で本格的に農業を始めた。
4年前、脳梗塞を患った母親の介護と農業で心身ともに疲れ、両立に悩んでいた頃、『家の光』のなかで見た「がんばりすぎない介護」の記事が「私に光を当ててくれました」。それを機に「そうか、一人でがんばらなくてもいいんだ」と考えるようになり、女性部活動に参加する余裕も出てきたという。
「一度しかない人生、いろんなことに挑戦してみよう!」。
平成23年には270人が所属する「ごぼう部会」で女性初の部会長に。大好きなごぼうを使った料理作りが『家の光』との関わりを深め、メディアデビューのきっかけともなり、それが知人を通じて『家の光』の普及にもつながった。
現在「ごぼうで地域を元気にしていこう!」を合い言葉に、女性部でごぼうの粉末を練り込んだ「ごぼうスティックドーナツ」や「ごぼううどん」といった加工品づくりとイベントでのそれらのPR販売に力を入れている。
また、自称「ごぼう大使」として地域の若手農業者たちの希望の光になろうと決意。
「これからも『家の光』を活用しながら地域の光になれればと思います!」。
そして今後もごぼうの魅力を消費者に伝えながら、日本一のごぼうをつくっていくんだ! という誇りを生産者同士で共有していきたいと語った。
「今までの女性部活動から一歩進んだ新たな事例を示してくれた」と石田教授は評価した。
◆新たな「風」の仕掛け人
「普及・文化活動の部」の最優秀賞「JA全中会長賞」には「誇れる仕事×『家の光』?風が吹いている僕はここで生きていく?」の越野浩昭さん(JAくにびき・島根)が選ばれた。
平成22年、新設されたJAくらしの活動と教育文化活動を推進する「ふれあい課」の課長に着任すると“教育文化活動の源は『家の光』の普及推進が先決、一方で「家の光図書」は購入したければご勝手に”という現状に目を付け、支店に家の光図書の本棚を設置して存在をPR、バレーボール大会や野菜栽培講習会では実物回覧や展示即売といった仕掛けを取り入れてみた。
また、女性職員の提案で組合員ポイントサービスの還元商品に「家の光図書」を加え、人気図書を手作りチラシで紹介したことがターニングポイントとなって申込みが増加、昨年度は年間普及実績の75%をポイント還元商品が占めるまでになった。これらの取り組みが来店のたびに注文するファンをつくり、支店窓口での年間注文数は前年対比1.5倍の322冊に。
「家の光図書の普及という小さな風がJAを変える大きな風になるのかもしれない。これからも教育文化活動の源である家の光事業を好きになり、巧みな仕掛けをしていくことが必要。私の使命は地域に風を吹かせること」。
石田教授は「“巧みな仕掛け人”という印象をもった。今までにない視点で家の光図書を普及し実績を上げたことが審査委員に高く評価された」と述べた。
◆戦争の話から学んだ食べ物の大切さ
今年の『ちゃぐりん』愛読者特別発表は埼玉県本庄市立仁手小学校3年・黒澤健悟くん(JA埼玉ひびきの管内)の「『戦争中の食べ物ってどんなもの?』を読んで」。
「ぼくが普通に暮らすこの国で本当にあった話とは信じたくなかった」―と『ちゃぐりん』8月号「戦争中の食べ物ってどんなもの?」を読んで初めて知った戦争中の生活と、夏休みに母親の手伝いで直売所への出荷を体験したことから、身をもって感じた食べ物の大切さについて発表し、会場から大きな拍手を浴びた。
◆「家の光文化賞」受賞総数は265JAに
大会では毎年、教育文化活動の取り組みが創意工夫に富み、家の光事業がJAの事業・活動のなかで明確に位置づけられ成果を上げているJAに「家の光文化賞」を贈っている。同賞は昭和24年に制定、今回で受賞JAは265にのぼる。
第63回の今年は▽JA静岡市(青山吉和組合長)▽JA山口中央(神田一夫組合長)、▽JA筑前あさくら(上村勝組合長)の3JAが受賞し、賞状と正賞の床置時計、副賞賞金、ブラジル・コチア産業組合中央会記念賞、家の光文化賞農協懇話会から会員プレートが贈呈された。
大会では「JAの支店等を拠点に、協同することのたいせつさを学びあい、JA運動に参加・参画する仲間と次代をつなぎ、協同の輪を広げること」、「東日本大震災からの復興と地域の再生に向けて尽力し、JA食農教育活動を通して、日本農業のたいせつさと、JAの果たしている役割への理解を促進すること」などの申し合わせを確認した。
◎平成24年度「家の光文化賞促進賞」
▽JA東京むさし(東京)
▽JAとぴあ浜松(静岡)
▽JAなごや(愛知)
◎家の光協会会長特別賞(敬称略・発表順)
【記事活用の部】
▽瀧本かおり(JA紀南・和歌山)
▽今野圓子(JA秋田しんせい・秋田)
▽織笠光子(JAおいらせ・青森)
▽梅崎登代子(JAさが・佐賀)
▽白鳥圭子(JA静岡市・静岡)
▽森田博子(JAまにわ・岡山)
【普及・文化活動の部】
▽越野浩昭(JAくにびき・島根)
▽末岡佳子(JA山口中央・山口)
▽伊藤牧子(JAいわて花巻・岩手)
※梅崎さんの「崎」の字は正式には旧字体です。
(関連記事)
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