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地域農業のサポーターづくりをめざして  JA食農教育推進セミナー2013年2月25日

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 JAは「食と農」を基軸に地域の活性化と農業への理解を図るため、「JA食農教育プラン」の策定・見直しをすすめながら、地域が一体となった「JA食農教育」を推進している。そこで効果的な農業体験学習の企画づくりや学校とJAとの連携を全国的に広げ、地域にJAファンや地域農業のサポーターになってもらうことをめざし、JAグループは2月21?22日の2日間、都内で「JA食農教育推進セミナー」を開いた。

 セミナーでは2日間にわたって食育の必要性について教育関係者からの講演や学校と地域、JAが連携した実践報告などがあり、今後のJA食農教育の質的向上を考える場となった。

◆学校・家庭・地域の連携で

高橋義雄氏 「初等教育の重要性―成長・食との関わり―」をテーマに講演した学習院名誉教授・元学習院初等科長の高橋義雄氏は、初等教育の6年間は「五感」が育つ大切な時期であり、子どもにとっての「食」の意味は、(1)健康維持(2)成長の素(3)五感を育てる―の3つの要素の重なり合いでできていると述べた。
 しかし現在、子どもの食生活に「孤食」や「朝食抜き」が目立ち、安易に食べ物が手に入る環境にあることで食べることへの感謝や食事のマナーなどを学ぶ機会が少なくなっていると指摘。高橋氏はこの現状のなかで、学校、家庭、地域社会の三者が一緒になって食農教育をすすめていくことが大事で、地域の人たちは学校を支援し、学校ももう少し地域に目を向け地域に頼れる環境をつくっていくことが必要だと強調した。それが地域を盛り上げ、いずれ家庭にも返ってくると述べた。

(写真)
高橋義雄氏
※「高」の字は正式には旧字体です。


◆裏方は「地域ボランティア」

東佐都子氏 実際に地域の理解や協力を得ながら、“給食を一からつくる”取り組みで子どもたちの食農教育を実践した事例について広島県三原市立南方小学校校長の東佐都子氏が報告した。
 東氏は昭和49年に小学校教諭になると、子どもの食に対する意識に不安を抱くようになった。当時はすでに食べ物があることは「当たり前」の時代。買えば何でも手に入るという時代の中で生きる子どもたちに、食べ物の大切さをわかってほしいと思いながら教諭時代を過ごした。
 その思いを叶えるチャンスが訪れたのは平成11年、校長になった頃。ちょうど数年後に新たな教育方針として「総合的な学習の時間」が導入されることが決まっており、その時間を食農教育にあてようと考えた。テーマは「給食を作ろう 大作戦!」。一から子どもたちに給食を作らせるというもので、目的は「給食を作って食べる」ことではなく、体験を通して多くの壁にぶつかり、失敗しながら農業の大変さと食べ物があることは当たり前ではないということを知ってもらうことだった。
 この取り組みを始めるにあたって地域住民に「支援ボランティア」を募って協力体制を整え、給食センターや保護者に説明会を開いて理解と協力を得た。教諭の合い言葉は「手出し口出しいっさい無用」。あくまでも子どもたちが頼れるのは100人もの地域ボランティアだということを言い聞かせたという。
 この授業に取り組んだ小学3年生から6年生までの児童が9グループに分かれ、10月末の4日間、自分たちで給食を作るために4月から準備に取りかかった。献立に必要な野菜や米づくりのため、苗の調達から栽培指導の依頼、収穫…、献立づくりまで、そのときどきで起こった問題や状況すべてを子どもたち自らが考えてすすめていった。
 さまざまな壁にぶつかりながらも身をもって農作業から給食づくりを経験した子どもたちは給食を残さなくなり、保護者からも多くの反響が寄せられるなど、食に対する意識に見違える変化があったという。
 東氏はJAに対して食育推進のリーダーとして学校とのパイプをつなぐ役割を担ってほしいと述べ、具体的に「学校が次年度の計画を立てる2?3月が学校との連携を図るチャンス。ぜひ食育推進の担い手になってほしい」と期待した。

(写真)
東佐都子氏


◆子どもたちの「第二の教室」

子どもたちから発表会の招待状を持つ小泉與七氏 また、小学校での酪農体験学習を通した取り組みが地域の応援団へと広がっていった事例として、東京23区内で唯一の酪農牧場である小泉牧場(JA東京あおば理事)の小泉與七氏と練馬区立大泉南小学校教諭の横山弘美氏がそれぞれの立場から報告した。
 最盛期には都内にも120軒ほどの酪農家がいたというが宅地化の進行とともに地域の酪農家が減少、やがて小泉牧場にも住民からの苦情が増えるようになる。酪農経営への理解が得られず、都市型酪農への悩みと葛藤で地域に閉ざしていた小泉氏の心を開いてくれたのが地域の子どもたちだった。
 平成元年、地元大泉小学校の子どもを受け入れたことがきっかけとなり、平成13年から同小学校の3年生の「総合的な学習の時間」の題材として本格的に交流が始まった。現在は小学校6校、中学校11校のほか中央酪農会議の酪農教育ファームの認定を受けており、町を歩くとほとんどの子どもたちが顔を見るなり声をかけてくれるという。
 大泉小学校の酪農体験のねらいは地域にある小泉牧場に興味を持って自分の課題を見つけて調べることや、酪農体験を通して食への興味や大切さ、命の尊さなどを学んでもらうこと。1年間子どもたちは牧場に通ってテーマ別の学習に取り組み、最後は発表会で成果を披露している。
横山弘美氏 前任校の大泉小学校で酪農体験開始当初から小泉牧場と交流してきた横山氏は、最初は牛をくさいと言ったり。怖がっていた子どもたちも酪農体験によって▽食に対する関心▽酪農という職に対する関心▽命の実感、という3つの成果を実感したと話す。
 この学習を体験したある子どもたちから「子牛を育てたい」と有志グループもできた。当時の子どもたちは中高生になったが、現在も月1回の活動が続いているという。
 牧場体験での学びが子どもを大きく成長させ、それと同時に親や地域にまで牧場のファンや酪農のすばらしさが広がっている。小泉氏は「この総合学習のおかげで地域との深い結びつきを持つことができ、地域のみなさんが私の牧場を理解してくれるようになった。1人の子どもには両親や兄弟がおり、ひとつの学校の子どもが来ればその数倍の人間関係が後ろにあるということです。畜産や酪農は地域とコミュニケーションをとることが大事。こうした交流が営農継続につながっているように思います」と話した。

(写真)
上:子どもたちから発表会の招待状を持つ小泉與七氏
下:横山弘美氏


(関連記事)
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