ふみ込んだ生産支援に取組む JA全農新3か年2013年3月27日
JA全農は3月26日に都内で臨時総代会を開催し、25年度からの「3か年計画」ならびに「25年度事業計画」などを決定した。
◆TPPに断固反対、震災復興に積極的取り組んでいく
開会にあたって中野吉實経営管理委員会会長は、TPP問題について政府の対応は「到底納得できるものではなく、強い憤りを感じる。引き続きTPP断固反対の国民的運動を展開していく」と決意を述べた。そして、東日本大震災の復旧・復興について「農業生産基盤の復旧支援、コンパクトセルフSSの建設など生活者支援、原発事故に対する風評被害の払拭などに今後も取り組んでいく」とも述べた。
◆取巻く環境は「あらゆる面で深刻化」
JA全農の25年度からの「3か年計画」では、現在の農業や事業環境を取り巻く状況について、耕地と就農人口の減少、生産者の高齢化、耕作放棄地の拡大など「生産基盤の弱体化」、肥料・飼料原料価格の高騰と高止まり、輸入農畜産物の増加と国産農畜産物の価格低迷、原発事故の風評被害など「農業の交易条件悪化」、食の外部化、加工食品の需要増、消費の簡便化・小口化、食品企業などによる産地囲い込みなど「消費・流通の変化」、高齢化、人口減少による集落機能の低下などによる「地域社会の活力が低下」しており、環境は「あらゆる面で深刻化」していると分析している。
◆3つの重点事業施策
その上に立って25年度から27年度にかけての3か年計画で、「全農グループを挙げて取り組む3大重点事業施策」として、次の3つを掲げた。
1.元気な産地づくりと地域のくらしへの貢献
2.国産農畜産物の販売力強化
3.海外事業への積極展開
そしてこの重点事業施策を実現するために、
4.将来のリスクや戦略的投資に備えた経営基盤拡充
を掲げた。
22年度?24年度の3か年計画では「国産農畜産物の販売力強化」をメインテーマに掲げ、その実現のために「生産基盤の維持・拡大に向けた生産コストの低減」と「購買品目の取扱強化によるシェア拡大」を「全事業を通じた共通の事業目標」としていた。これと比べると、「生産基盤の弱体化」した産地の維持・拡大に積極的に踏み込んでいこうという姿勢を表した3か年計画だといえる。
◆弱体化する生産基盤を維持・拡充する
このことについて3か年計画では「弱体化する生産基盤を維持・拡充するため、県ごとに実需者ニーズをふまえた地域生産振興策、生産支援対策をさだめ」、「モデル圃場を活用した生産提案、新規就農支援、労働力不足の問題に応じたJAの農作業受託作業への支援」など、「ふみ込んだ生産支援」に取り組んでいくとしている。
さらに、農業経営の大規模化や農業者の高齢化など、生産現場の変化やニーズに対応した低コスト生産技術の開発・普及、広域化など事業方式の合理化によるコスト低減や「軽労化に資する資材開発をすすめ」ていくことにしている。
また「地域のくらしへの貢献」では、Aコープ店舗などでの買い物支援やセルフSSの設置、太陽光発電支援事業による再生可能エネルギーの取り組みなど「組合員、地域住民のニーズに的確に対応したサービスの拡充」をすすめていく。
県連や県JA、JAと「十分な連携・一体感をもって」取り組んでいくことになるのだろうが、従来よりも生産現場に一歩ふみこんで「元気な産地づくり」に積極的取り組んでいかないと、産地自体を維持していくことが難しくなるという認識が、この重点施策の背景にはあるようだ。
そして本気でそのことに取り組まないと、全農自体の存在感も薄れていくという危機意識もあるのではないかと推測するのは穿ち過ぎだろうか。
◆地域実態に即した販売戦略を策定
「国産農畜産物の販売力強化」では、「取扱品目別に市場や取引先を明確にし、必要な施設等を整備して大消費地はじめ地域実態に応じた販売戦略を策定・実践」し取扱高の拡大に取り組む。
また生産・集荷・加工・物流などの各過程で他業者との連携などによって「相乗的に付加価値を生みだすJAグルー主導のバリューチェーンを構築」することで「生産者の所得向上」をはかっていくとしている。
◆原料調達基盤の強化と農産物輸出窓口の統一
「海外事業の積極展開」では、「肥飼料原料が高騰、高止まり」するなかで、連合会の「最重要機能」の一つである海外事業を積極的に展開し「原料の調達強化と農畜産物の輸出拡大」に取り組む。
肥飼料原料などの購買事業では、購買力の維持・強化をはかるために「輸入元の多元化など調達基盤の強化」「海外サプライヤーなどとの提携」や「海外原体メーカー等との新農薬の共同開発」などに取り組んでいく。
販売事業では、新興国市場への輸出拡大のために「統一的な交渉窓口」を設置し、輸出先ごとに生産、流通、消費の実態をふまえた「長期的な販売戦略を策定・実践」する。
◆27年度取扱高4兆9000億円に
個別の事業別にみた行動計画として、米穀農産事業では、「集荷態勢の強化や精米販売の拡大を通じた取扱数量の拡大」として27年産米の集荷目標を320万トンと設定している。また「大手実需者との播種前・収穫前等契約を核とした安定的な取引」の目標を27年産150万トンとした。
園芸事業では、重点卸売市場との契約取引拡大や生協・量販店等への営業強化など「実需者に接近した販売を強化」し、直販事業分量を27年度に3100億円とする(24年度2700億円の見込み)。
また、加工・業務用需要に対して周年供給できる専用産地づくりに取り組むなどして27年度には400億円に拡大する(24年度3100億円)計画だ。
畜産事業では、加工・外食分野など消費者に近い領域での事業展開を加速すすとともに、海外に販売拠点を設置し輸出拡大をする。一方で生産者に対しては「畜産に係る革新的な技術の開発・普及による生産性向上と生産基盤維持・拡大に向けた取り組みを強化する。
生産資材事業では、省力技術・商品の開発、実証・普及をすすめ、トータルで生産費低減に取り組む。また海外山元との関係強化や輸入元の多元化、農薬などの共同開発の拡充によって購買力の維持・強化をはかっていく。
こうしたことによって25年度の取扱計画は4兆8277億円、26年度4兆8937億円、27年度4兆9171億円とし、事業利益は25年度5億2800万円、26年度5億3700万円、27年度8億4100万円の計画となっている。
(関連記事)
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