「共に『痛み』をシェア」 賀川督明氏が講演2013年4月11日
協同総合研究所は3月30日、東京で公開研究会を開いた。神戸市にある賀川記念館の賀川督明館長が、これからの協同組合運動の10年を展望し、「痛みをシェア」することの必要性について講演。これができるのは協同組合組織であると強調した。講演内容を要約した。
協同組合で「共に生きる」社会
2012年は国連の国際協同年だった。日本でもさまざまな取り組みがあったが、この年はもう一つのテーマがあった。エネルギー問題である。「すべての人のための持続可能エネルギーの国際年」である。そして2010年は生物多様性と文化の和解のための年であり、さらに若い人たちを育てるという意味の国際ユース年でもあった。
◆「国際年」は長いスパンで
そして東日本大震災の2011年は国際森林年、世界化学年、世界獣医年、さらに国際ユース年でもあり、アフリカなど発展途上国の人たちのための年でもあったのだ。森林年のとき、我々の仲間が日本の生協、農協、森林組合など呼び掛けたが、だれも耳を傾けなかった。 国連が国際年で呼びかけるのは個々のテーマではなく、地球規模で何が必要であるかを提起したものだ。そして2013年は「国際キヌア年」、「国際水協力年」である。キヌアは栄養価の高いアンデス産の自然食料のこと。 国連には、もっと長期的な8つの国際ミレニアム開発目標がある。[1]極度の貧困と飢餓の撲滅[2]普遍的な初等教育の達成[3]ジェンダーの平等推進と女性の地位向上[4]幼児死亡率の引き下げ[5]妊産婦の健康状態の改善[6]エイズ、マラリア、その他疾病の蔓延防止[7]環境の持続可能性の確保[8]開発のためのグローバルパートナーシップの構築である。
◆協同組合先進国がリードを
日本に関わりが深いのは2つぐらいだが、これはアフリカをテーマにしている。各年のテーマは、これをもとに設定されている。協同組合年もこの目標にもとづき、生協、農協、水利組合などをアフリカでつくりたい。そのため日本など先進国がリーダーシップを発揮してほしいというのが国連のスタンスである。しかし盛り上がらなかった。
そこで国際協同組合年を設定し、協同組合間連携、消費者と一緒になってやろうということである。だから協同組合年は昨年だけの問題ではない。こうした取り組みは少なくとも10年スパンで考える必要がある。
ミクロの問題を総合的に解決
いま地域から、エンパワーメント(平等・公正な社会を目指す自立した活動)する核が求められる。農業者であれ、消費者であれ、目の前にある課題に向かって進む運動が大切である。つまりミクロの問題をマクロの問題へつなげ、総合的に解決する。この役割は協同組合にある。
持続可能のための教育という意味のESD活動がある。昨年終了したが、国連識字の10年のプロジェクトもあった。賀川豊彦の活動こそ、このESDだったと考えている。
◆関東大震災100年に向けて
10年後の2023年は関東大震災100年になる。
それまでの10年をどう歩むかがわれわれに問われている。関東大震災とその後の賀川豊彦がやっていたスタイルを参考に、現在ではどのようなやり方があるかを考えたい。その中で協同組合間の連携は大切な要素になるだろう。
同組合の理念でもある「共に生きる」ということはシェアする、分かち合う思想である。ただ、シェアにはプラスのシェアとマイナスのシェアがある。「一人は万人のために」はプラスのシェアであり、「万人は一人のために」は痛みを伴うシェアである。
この2つがセットになって初めて協同組合は生きてくる。この痛みのシェアは株式会社などの企業ではできない。
要は他者をどうとらえるかの問題である。「安全・安心」は一、二人称で使われるが、三人称(彼ら、彼女ら)の安全がないと、一、二人称の安全もないことを認識するべきである。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(104) -みどりの食料システム戦略対応 現場はどう動くべきか(14)-2024年8月3日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(21)【防除学習帖】 第260回2024年8月3日
-
土壌診断の基礎知識(30)【今さら聞けない営農情報】第260回2024年8月3日
-
高まる潜在的危機 最後の命綱「農業」維持を 東大大学院教授 安藤光義氏【食料・農業・農村/どうするのか? この国のかたち】2024年8月2日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 兵庫県2024年8月2日
-
【注意報】かんきつ類、かき、なしに果樹カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 宮崎県2024年8月2日
-
【注意報】茶に炭疽病 県下全域で多発のおそれ 宮崎県2024年8月2日
-
岩手産ワインを味わう「夏のエーデルワインフェア」開催 JA全農2024年8月2日
-
(395)「スペック」vs.「人柄・将来性」【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年8月2日
-
組合員・利用者との接点力を強化 デジタル活用さらに JA共済連 村山美彦理事長2024年8月2日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】「オレンジ・牛肉ショック」の根本原因~貿易自由化政策と消費者の選択2024年8月2日
-
【現地レポート・茨城農業に迫る】直接支払い不可欠に 北つくば農協【食料・農業・農村/どうするのか? この国のかたち】2024年8月2日
-
全農グループ直営飲食店舗で「海塩そみラ」フェア 5日から開催2024年8月2日
-
中国におけるピロキサスルホン製品に対する特許権侵害訴訟手続きを開始 クミアイ化学工業2024年8月2日
-
国際ジャーナリスト 堤未果氏 8月6日に講演「どうなる? 米国大統領選」【農協人文化賞特別講演】2024年8月2日
-
みのりカフェ長崎駅店で「JAながさき県央フェア」5日から開催 JA全農2024年8月2日
-
「令和6年7月25日からの大雨による災害」農業経営収入保険の支払い期限を延長 NOSAI全国連2024年8月2日
-
【人事異動】JA共済連(8月1日付)2024年8月2日
-
福島県産桃の特別メニュー登場 レストランなど9店舗とコラボ JA全農福島2024年8月2日
-
都市型畜産の豚舎における臭気対策 横浜市で検証開始 NTT東日本2024年8月2日