「協同組合の特性ふまえた監査を」 JA全中2013年5月28日
JA全国監査機構はそれまで都道府県中央会と全中で実施していた監査機能を統合し平成14年に発足。JA、連合会に対する財務諸表等監査と一般監査を実施してきた。平成23年度実績では710JAに対する財務諸表等に関する監査実施率は92%、一般監査を合わせて100%となっている。 この10年の間に広域審査体制、連合会監査体制の導入、公認会計士との帯同監査の開始など、さままざま取り組みを行ってきた。4月19日に行われた記念シンポジウムでは「JA全国監査機構がJAの経営改善に果たす役割」をテーマに行われた。
◆監査の重要性を確認
シンポジウムには鈴木豊・青山学院大教授、菊井健次・JA大阪中央会専務、佐藤正典・JA全国監査機構監査委員長がパネリストとして出席、司会を五十嵐信夫・JA全中常務が務めた。
シンポジウムで議論されたのは[1]今後の監査機構のあり方[2]JAの経営改善のために監査機構が取り組むべき課題、の2つ。
今後の監査機構のあり方については、“独立性”について課題提起があった。この点については、これまでに広域審査、連合会監査体制の構築、公認会計士の帯同などで独立性の強化を図ってきた。 そのうえで、パネリストからは、今後に向けた監査人への期待として批判的精神の発揮、自由裁量性の強化などが提起され、「これを行うことが内外への説明責任を果たすうえで重要」と指摘があった。 JA全中の五十嵐常務は「25年度からの新たな行動計画で整備することとしている県域を超えた監査要員の広域派遣制度の仕組みをはじめ、人材の相互交流についてもしっかり取り組む」などと述べた。
(写真)
シンポジウムに出席した(右)鈴木豊・青山学院大教授、(中)菊井健次・JA大阪中央会専務、(左)佐藤正典・JA全国監査機構監査委員長
◆特性をより発揮して
また、「私企業と公的機関の中間的位置づけの監査の必要性とその目的」もテーマとなった。佐藤監査委員長は「JAの監査制度を公認会計士制度にすべて合わせていくより、協同組織経営体の特性をふまえたものとして確立していく必要がある」と指摘した。
JAの監査については、中央会監査が農協法制定時から農協の健全な発展を図ることを目的として法律に位置づけられたもであり、“その原点は指導監査にあった”ことや、「一般企業とJAでは利害関係者がまったく異なるという事実をふまえ、改めて自らの立ち位置をしっかり自覚したうえでの取り組みの重要性」なども指摘された。
◆JAの経営戦略と人づくり
JAの経営改善のために監査機構が取り組むべき課題としては、▽業務監査の充実、▽監査業務の品質管理強化、▽これらの取り組みを担う人材の育成などが指摘された。
とくに「業務監査から業績監査への転換」が求められていることが強調された。現在、金融庁をふくめて3者要請検査が開始されており、そこでは個々の事務的な不備事項の指摘にとどまらず、不備の発生原因にまでさかのぼって指摘される、いわゆるプロセスチェック型の指摘に対応することが求められている。
鈴木教授は、これをふまえ「さらにJAの経営戦略や方針を評価することが重要」と指摘した。また、こうした取り組みは「甘い身内の監査ではないのか」といった規制改革会議などの外部批判にしっかりと対応するためでもあり、JA側もプロセスチェック型監査に機敏に対応できる体制づくりが必要という提言もなされた。
また、JA大阪中央会の菊井専務は、それぞれの取り組みを担う菊井専務は「肝心なことは人づくりと5年後、10年後を見据えた体制づくりへのトップの理解を得る必要性」を強調した。
こうした指摘をふまえ五十嵐常務は「JA監査士とは単純に公認会計士に置き換えることのできない重要な期待と役割を担っている。その期待に応え得る人材を育成し続けることが大変重要であると認識した」として、人材の育成に一層の注力が必要との考えを強調した。
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