協同組合10年計画を発表 ICA2013年6月28日
国際協同組合年(IYC)は2012年で終了したが、世界の協同組合をさらに発展させるために、国際協同組合同盟(ICA)は「協同組合の10年に向けた計画」(以下、協同組合10年計画)を作成。その日本語訳が6月5日に発表されたことを受け、6月21日、国連大学において講演会「ポスト国際協同組合年におけるICAとICMIFの最近の動向」が開催された。
10億の声、もっと世界に
◆協同の声を届ける
講演で、ICA会長のポーリン・グリーン氏が、「協同組合10年計画」の意味と意義について語った。ICAは、世界10億人の協同組合組合員のうち93%が参加する、世界最大のNGOである。グリーン会長はまず、ICAと欧州の研究機関ユリクシーズが行った調査「世界協同組合モニター」(2012年発表)の結果から、上位300の協同組合の事業高が約2兆4000億ドルであることを紹介した(前年の1.6兆ドルを大きく上回る)。
一方で、同調査を行ったユリクシーズのウエブサイトには大小さまざまな協同組合が紹介されており、そのなかで「大虐殺に苦しんだルワンダの女性たちによる協同組合」を例に出し、事業高だけでは語れない協同組合の社会的意義の重要性にも言及。
そのうえで「10億人の声を、もっと世界に届けなければならない」と力強くメッセージした。
(写真)
ICA会長ポーリン・グリーン氏
◆2020年を視野に
「協同組合10年計画」は、まさにこの「10億人の声を世界に届ける」ための、2020年を視野に入れた世界の協同組合の活動目標だ。2012年10月にマンチェスターで行われたICA総会で承認された。
そこには、協同組合という事業モデルを新たなレベルに引き上げるための「3つの目標」と、目標を達成するための「5つの戦略分野」が掲げられている(本文下参照)。
グリーン会長は「5つの戦略分野」について、自身の言葉も交えながら解説した。
【参加】
協同組合の運営方式のなかでよく知られる特徴だが、グリーン会長は「より多くの組合員が参加し、どこに問題があるのかを議論することが重要。組合員の決定権を損なってはならない」と、協同組合の「原点」を再確認した。
また「若い世代がより多く参加することで、経済に大きな影響を与えることができる」と、その重要性を強調した。
【持続可能性】
持続可能性というと環境問題がイメージされがちだが、「経済や社会も同様」とグリーン会長。協同組合こそが経済、社会、環境面でより高い持続可能性をもたらすことのできるモデルであり、「10年後に、アフリカの人々が土地だけを提供して食糧がないという状況にしてはならない」と語った。
【アイデンティティ】
近年「企業の社会的責任」「社会的企業」など「協同組合の言葉を使う企業が増えている」。しかし協同組合は「協同組合原則」をもつ点でこれらの企業とは大きく異なる。
このことを強く認識して組合員のアイデンティティを高めるとともに、外の世界にも伝えていく必要がある。グリーン会長はそのための1つの方法として、「要件を満たす組織で世界共通のロゴ(ドットコープ)を使う」ことを提案した。
(写真)
世界共通ロゴを紹介するグリーン会長
◇ ◇
このほか「法的枠組み」については、多くの国の法制度は現状では協同組合にとって不適切なものだが、そうしたなかでも、インド政府が憲法改正を行い、協同組合を形成する権利を基本的人権のひとつに定めたこと紹介し、「すばらしい進化だ」と評価した。また「資本」については、「多くの組合が苦難を感じている問題」であり、今後、組合員からの出資を奨励したり、新たな金融商品の開発を行うなど「長期的に考えていく必要がある」と語った。
◆協同組合の正念場か
協同組合という「もうひとつの事業モデル」は近年、不安定な金融界や格差の拡大、環境劣化などを背景に、その評価が高くなってきている。誤解を恐れずに言えば「チャンス」である。
2012年の国際協同組合年(IYC)は「国連からのすばらしい贈り物」であり、「協同組合のメッセージを構築し、組合員のアイデンティティを確立するうえで有効だった」(グリーン会長)。
この流れを今後10年でいかに発展させることができるか。世界の協同組合の正念場ともいえる。
【協同組合の10年に向けた計画(概要)】
◆2020年に向けた3つの目標
[1]経済・社会・環境の持続可能性において認知されたリーダーとなる。
[2]人々にもっとも好まれるリーダーとなる。
[3]急速に成長する事業モデルになる。
◆目標を達成するための5つの戦略分野
[1]組合員としての、またガバナンスへの「参加」のレベルを引き上げる。
[2]協同組合を「持続可能性」の構築者と位置づける。
[3]協同組合のメッセージを構築し、「アイデンティティ」を確立する。
[4]協同組合の成長を支援する「法的枠組み」を確保する。
[5]組合員による管理を保障しながら、信頼性のある協同の「資本」を確保する。
重要な記事
最新の記事
-
基本法施行後初の予算増確保へ JAグループ基本農政確立全国大会に4000人 生産者から切実な訴え2024年11月22日
-
「適正な価格形成」国関与で実効的に JA群馬中央会・林会長の意見表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
JAグループ重点要望実現に全力 森山自民党幹事長が表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
農林水産省 エン・ジャパンで「総合職」の公募開始2024年11月22日
-
鳥インフル 米モンタナ州、ワシントン州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
鳥インフル オランダからの生きた家きん等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
11月29日「ノウフクの日」に制定 全国でイベント開催 農水省2024年11月22日
-
(411)「豚ホテル」の異なるベクトル【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年11月22日
-
名産品のキャベツを身近に「キャベツ狩り選手権」開催 JA遠州中央2024年11月22日
-
無人で水田抑草「アイガモロボ」NEWGREENと資本業務提携 JA三井リース2024年11月22日
-
みのるダイニング名古屋店開業2周年「松阪牛ステーキ定食」特別価格で提供 JA全農2024年11月22日
-
【スマート農業の風】農業アプリと地図データと筆ポリゴン・eMAFF農地ナビ2024年11月22日
-
自動運転とコスト【消費者の目・花ちゃん】2024年11月22日
-
イチゴ優良苗の大量培養技術 埼玉農業大賞「革新的農業技術部門」で大賞受賞 第一実業2024年11月22日
-
「AGRIST Aiサミット 2024」産官学金オープンイノベーションで開催2024年11月22日
-
厚木・世田谷・北海道オホーツクの3キャンパスで収穫祭を開催 東京農大2024年11月22日
-
大気中の窒素を植物に有効利用 バイオスティミュラント「エヌキャッチ」新発売 ファイトクローム2024年11月22日
-
融雪剤・沿岸地域の潮風に高い洗浄効果「MUFB温水洗浄機」網走バスに導入 丸山製作所2024年11月22日
-
農薬散布を効率化 最新ドローンなど無料実演セミナー 九州3会場で開催 セキド2024年11月22日
-
能登半島地震緊急支援募金で中間報告 生産者や支援者が現状を紹介 パルシステム連合会2024年11月22日