競争力強化へ向け定款変更 JA全農が総代会2013年7月29日
JA全農は7月26日に通常総代会を開き、平成24年度決算を承認するとともに、総代会の議決事項とされている法人の設立などについて一定の条件のもとで経営管理委員会や理事会で決定できる定款変更などを承認。また、25年産米の生産・集荷対策についてのJA全農の対応策も公表した。
◆意思決定を迅速化
定款変更は事業競争力を一層強化するため、意思決定の迅速化や内部手続きの効率化が目的。
飼料や肥料など生産資材価格が高止まりしている一方で、国産農畜産物価格は低迷が続き、生産者の交易条件は悪化している。こうしたなかで、生産者の手取りを増やし、地域農業を守るために、JA全農は今後の経済事業について「青果物や玄米などの素材提供中心の事業から、消費者ニーズの変化に応じ、ニーズを先取りする商品開発や食品加工など新しい事業分野へ踏み込む必要がある」との考えを示している。
また、農業・農村の6次産業化にむけ法律(6次化ファンド法)が制定されたことを受け、2次・3次産業から農業への進出も活発化している。このため付加価値を高めるノウハウを持った企業との連携などに、産地側から積極的に取り組むことも重要になっている。
◆関係業界と提携へ
こうした動きに対応するため、今回の定款変更で法人の設立・出資を経営管理委員会等で決定できるようした。 設立・出資案件の条件は、これまで経営管理委員会は1件あたり1?5億円、理事会は1億円以下とされていた。これを定款変更で経営管理委員会は「1件あたり10億円超」、理事会は「10億円以下」の案件を決定できるようになった。
ただし、「会社の範囲」と「年間の出資額の上限」については、毎年3月の臨時総代会で決める。
今回の総会で会社の範囲については、生産資材価格の低減や販売事業機能強化などを目的とした、▽全額出資で設立する会社、▽他法人との合併で設立する会社、▽株式を取得・出資する会社、と決めた。また、年間の出資額は100億円とすることも決めた。出資実績は毎年3月の臨時総代会に報告される。
中野吉實会長はあいさつのなかで、出資案件については「組織代表の経営管理委員を中心とした外部出資審査委員会を新設。理事会に付議する前に事前審査する」ことを強調した。
今回の権限委譲は農産物の生産から販売までの、いわゆるバリューチェーンづくりに機動的に対応するための措置で、中野会長は定款変更の承認を受け、「系統の内外を問わず食品関係業界に詳しい企業との情報交換を含め、具体的案件への検討に入る」と述べた。
◆消費減で需給が緩和
米の生産・集荷対策については、全農が実施した作付動向調査によると、主食用米は152万ha程度で新規需要米を含めた水稲作付け合計面積は164万5000haとほぼ前年並みと推定されている。
生育状況調査では「平年並み」が5月調査では29地域だったのが、6月調査では80地域となり「全体として生育が早くなっている」。
一方、米の需要は減退しており、端境期民間在庫水準は120万tを超えることも予想されている。需給緩和の見通しから、卸業者などに25年産米を積極的に扱う意欲が薄いという。
こうしたなか、生産者からJAへの出荷契約見込み数量は383万tと前年産集荷実績より16万t増えている。また、JAから連合会への出荷契約見込み数量は、米の市中価格が下落していることなどから前年産の出荷契約数量より2万t多い295万となっている。
しかし、卸や実需者との播種前・収穫前などの事前契約は低調だ。主要販売先を中心に24年産米の消化を優先していることから、成約数量は71万8000tと前年比55%となっている(いずれも6月末)。
◆買取りなど機動的に
今後、生産者からの出荷契約については、目標数量や前年実績を下回るJAや重点JAを中心に、フレコン集荷などの利便性の提供や販売先の明確化などに具体策を明示しながらの大規模生産者対策などによって、積み上げが必要だとしている。 さらに出来秋に向けては、大幅な需給緩和が想定されるとして、生産者・JAに対して消費地情勢を的確に伝達し情報の共有化も図る。
販売価格と概算金の設定については、▽実需者・販売先と価格の居所について早期に協議、▽早期米の販売・価格動向や業務用向けを含めた年間平均販売価格などをふまえて概算金水準を設定するなどの方針を示している。また、共同計算が基本だが、▽時期別概算金の設定、▽委託非共計、▽買い取りなど機動的な手法で集荷推進をしていく。
さらに25年産が平年作であっても、来年の端境期には持ち越し在庫が相当量発生するとJAグループは想定している。このためJA全農は全中とも連携し、今後の需給環境をみながら農水省などに対して▽需要実績をふまえた26年産米の生産数量目標の設定、▽JAグループ全体で米穀機構過剰対策基金を活用した市場隔離対策の実施を要請するなど、具体化を図っていく。
【中野吉實・JA全農経営管理委員会会長あいさつ】
8月には東日本大震災から3回目の盆を迎える。今後ともJAグループが連帯してしっかり支援をしていかなければならない思いを新たなにしている。引き続きご理解、ご支援をお願いしたい。
参院選結果からねじれ国会は解消された。政権与党に対し先の見通せる安定した新農政の確立、震災復興など期待する反面、今後もTPP交渉や、農業、JAに対する規制改革の動きなどに対して心配するところもある。 日本は23日からTPP交渉に参加し新たな局面を迎えることになった。全農としても情報収集のため担当者を派遣。遅れて参加をして日本は不利なる、重要5品目は守れないなどということはないということのようだ。いずれにしてもTPPについてはまだまだ不透明な状況だが、これまでの運動を継続して、われわれの思いを達成するまで団結力を示していきたい。衆参農林水産委員会、自民党の決議をふまえた対応を改めて求めていくとともに、TPP交渉がこの枠組みのなかで行われている以上、断固反対の立場を堅持していきたい。
25年産米は、最近の東日本の低温など懸念材料もあるが、生育は全体として順調に推移しているという。しかし、需要の減少で民間在庫が大幅に積み上がってきているのも事実。需給が過剰基調に転じていることを十分に承知したうえで全農としても対応していきたい。価格低下等に歯止めをかけるための政策を全中とともに要請し、基金等の活用を行っていきたい。
さらに26年産米の需要に応じた生産目標数量の設定、あるいは基金の活用による市場隔離などを柱として、国による需給実績の公表や25年産米の販売動向をにらみながら、関係機関との協議を早急に進め、全農としての買い取りによる計画販売実施なども含め、タイムリーに対策を打ち出していきたい。25年産米の集荷目標数量の達成、生産者手取りの確保に向けて、われわれJAグループの結集力が求められる。
農業を取り巻く環境は引き続き厳しい状況にあるが、事業計画に掲げた重点事業施策に役職員一丸となって取り組んでいく。農家組合員の負託に応えていく。
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