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決議実践でJAの強み発揮を トップフォーラム2013年12月2日

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 JA全中は第26回JA全国大会決議実践トップフォーラム(東日本)を11月21、22日に横浜市で開いた。JAの組合長らトップ層が参加。21日の全体会は「JAグループの果たすべき役割と事業展開」がテーマ。萬歳章・JA全中会長の主催者あいさつと冨士重夫・JA全中専務によるTPPや水田農業改革などをめぐる最新の農政情勢報告が行われた後、明治大学大学院の野田稔教授の講演「これからの日本と地域リーダーの役割」とJAさがみ・長嶋喜満代表理事組合長による「JAの総合力で営農と暮らしを豊かに」と題した実践報告が行われた。2日目は地域営農ビジョン策定・実践運動やJA地域くらし戦略、JAグループ人づくりビジョンなど4つの分科会が開かれた。西日本でのフォーラムは11月26、27日に神戸市で開催された。

全体会であいさつする萬歳会【第1分科会】
地域営農ビジョンとJAの総合事業支援

◆営農類型を策定

 第1分科会は「地域営農ビジョンに基づく新たな担い手づくりとJA総合事業支援の強化に向けて」がテーマ。JA全中の大西茂志常務が担い手・農地対策などをめぐる情勢報告を行った後、課題を提起した。提起されたのは[1]ビジョンに基づく地域の担い手経営体づくりの加速化、[2]JAの強みを活かした総合事業支援メニューの整備、[3]担い手経営体への出向く体制と事業間連携の仕組みの整備、[4]JAトップのリーダーシップによる意識・組織風土の改革の4つ。
 実践報告でJAさがえ西村山(山形県)の古沢明代表理事組合長が同JAの担い手づくり・支援の取り組みを紹介した。販売高ではサクランボなど果樹が4割程度を占めるが「農地の大部分が水田である以上、水田農業の取り組みは不可欠」だとして、集落営農の組織化に力を入れてきた。水田農業の受け皿として経営規模を問わずに参加できる組織をつくり、そのうえで園芸部門も含めて法人にステップアップしていくことを目標にして41組合ができた。このうち法人化した営農組合にはJAも出資するなどの支援を行っている。
 今後の重点的な取り組みは中核となる農家が地域の農業を牽引するため「農業所得1000万円をめざした営農類型の策定と実践」を掲げる。また、担い手のいない中山間地ではJA出資法人の立ち上げも検討しているという。 課題としては果樹経営などの初期投資支援、法人の冬期雇用の確保などをあげた。

(写真)
全体会であいさつする萬歳会長

◆融資担当と連携

 JAとぴあ浜松の源馬伸一常務は営農アドバイザーと融資担当者で合同会議を実施し、連携して担い手支援を行っている取り組みを報告した。農業融資を重視する理由は「他の金融機関に農業融資を握られたらJAは販売も購買も失ってしまう」からだ。そのため営農アドバイザーが農家を訪問し経営意向調査を年に1回行うようにしている。さらに融資担当者と同行訪問するという、いわばワンスストップ体制で資金面を含めた担い手の夢の実現をスピーディにめざす体制をとった。
 成果は23年度1年間でそれまで7年間平均の2倍近い支援件数となって現れた。今後は販売高維持のための特販課の設置や、販路拡大のために東京駐在派遣などの取り組みや、営農アドバイザー体制を担当品目の販売高を上げる目的も持たせた栽培指導を行う技術指導員と、適切な資材推進によるコストダウンをめざす営農相談員の2グループに分け、農業所得30%アップを目標に事業展開していくという。

◆トップの役割重要

地域ビジョンづくりで意見交換する第1分科会 総合討議で農林中央金庫の種田宏平常務はJAとぴあ浜松の取り組みを例に▽営農部門が担い手の資金ニーズも含めてつかみ信用担当者と共有化すること、▽得られた情報と対応を「見える化」することの重要性などを指摘した。
 JA全農の神出元一専務は地域の農業持続と担い手の所得増に向けては「市場とマッチングした今までに経験したことのない営農類型」を提示することが重要な時代になっていることを強調した。たとえば、米も野菜も家庭用ではなく、業務用・加工用の需要が増えている。米でいえば今後、飼料用米の生産も重要になる。こうしたニーズに応えた販売提案を担い手の経営資源につなげ地域全体に生産計画を作りあげていくことが求められていると強調した。
 こうした時代変化でどう地域営農ビジョンを策定していくか、JA全中の大西常務はトップのリーダーシップが大事と訴えた。

(写真)
地域ビジョンづくりで意見交換する第1分科会


【第5分科会】
人づくりビジョン仕事で人を育てる

◆働き甲斐つくる

 第5分科会は「仕事で人が育つ経営の実現」のテーマで、JAグループの人づくりビジョンについて意見交換した。JAの人づくり運動推進委員長である村上光雄JA全中副会長が「人材育成におけるJAトップの役割と責任」で基調報告、ネッツトヨタ南国株式会社の横田英毅取締役相談役が「職員の働き甲斐を生み出すための経営者の役割」で実践報告した。
 村上副会長は、出身JAである広島県JA三次での取り組みを中心に、[1]人が育つ職場づくり、[2]自ら考え行動する人づくり、[3]絶えず学習する職場づくりについて話した。
 特に、職員が生き生きと仕事のできる環境づくりが大事であることを挙げ、「それが本人だけでなく、経営にとっても大きなプラスになる」と指摘した。

◆意識の共有化を

 また「協同組合精神の基本は“人間愛”である」という。同JAは平成3年に7JAが合併して誕生した。経営再建のため職員にも負担を強いたが、この精神から「協同組合運動に携わるものが犠牲になってよいはずはない」と考え、職員や動労組合と話す機会を積極的につくり、決算や事業計画などで情報・意識の共有化を進めるとともに、経営への参加意識を高めることに努めた。
 その過程で重視したのが職員の自主性、つまり自ら考え行動する職員づくりだ。特に支店を中心とした協同活動にこの自主性が求められる。JAは合併で広域化し、さまざまな特性のある地域を抱えている。地域の実態に合った事業は、その地域をよく知る職員でなければ成果が期待できないと言うわけだ。
 一方、職員が生き生きと働くには、組合員に満足してもらえる仕事ができるかどうかがポイントになる。そこで求められるのは職員の専門能力だ。このためJA三次は「3SAction」運動に取り組んでいる。サービス、スペシャリティー、スピーディの「3S」の展開である。「『やっぱり農協職員だからな…』といわれるのが一番いやだ。そういわれるのは、勉強させないトップの責任だ」と指摘する。

◆変化が生存の道

 その上で、ダーウインの進化論から、「最も強いものが生き残るのではなく、最も賢いものが生き残るものではない。唯一生き残るものは、変化できるものである」を挙げ、農協も変化が求められていることを強調した。
 横田英毅取締相談役は、企業における長年の採用担当の経験から、職員の働き甲斐について話した。マズローの欲求段階説によると、人間の欲求は、[1]衣食住の確保(生存安楽)→[2]安全・安心・安定→[3]集団への帰属→[4]地位の確保(自我地位)ときて、[5]自分の成長を実感できる自己実現である。このなかで[3]?[5]は目に見えにくい精神的な段階であり、これを重視すべきだという。

◆感動を“見える化”

 また、メンタルヘルス上の問題を抱える企業の多い社員の問題は、本来人間の持もっている“人間力”、つまり「感動する」「共感する」「発言する」「夢・目的を持つ」などの、精神的な価値観を実感できないところにあるという。この結果、社員の最大の不幸は「誰からも関心をもたれなくなったとき」だという。このような本来見えにくい事柄を“見える化”(言語化・数値化)することで社員の動機付け(やる気づくり)が必要だ」と指摘した。


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