人・組織・地域の元気づくりを 家の光大会2014年2月26日
家の光協会は2月19日、大阪国際会議場で第56回全国家の光大会を開いた。全国大会を大阪で開催するのは4年ぶり3回目で、全国から2500人が参加した。大会では「人・組織・地域の元気づくりをすすめ、心豊かで安心して暮らせる社会の実現をめざし」、JA支店を拠点に協同の輪を広げる、農業の大切さとJAの役割の理解を深める、など4つの取り組みを実践しようとの申し合わせを満場一致で採択した。
(写真)
大会申し合わせは満場の拍手で採択された。
◆『家の光』で一致団結を
雑誌『家の光』の創刊は大正14年。今年の5月号で89周年を迎える。園田俊宏会長は冒頭あいさつで「これまで永きにわたり発刊し続けられたのは全国のJA組合員読者、女性組織、役職員の支援のたまもの」と謝辞を述べるとともに、これからも充実した記事づくりに努め、「協同組合や農業について、子どもから高齢者、組合員から地域住民まで」幅広い層へ情報発信し、「JA支店など身近なところから、協同の取り組みを通じて営農と生活を向上させ、JAの組織基盤強化を支援していきたい」と誓った。
来賓の村上光雄JA全中副会長は、2014年が国連の定める「国際家族農業年」であることにふれ、「今年は家族について改めて考える重要な契機になるだろう。家族農業は農業経営の基本であり、『家の光』の原点だ」として、「今こそ食と農について国内外への情報発信を強化し、JAのファンや協同の仲間づくりにつなげていきたい」とあいさつした。
杉本曻JA大阪中央会会長は「(政府の規制改革会議などでの)言われなき農協批判に対して毅然とした態度を取るためには、教育文化活動を通じた情報の共有や組合員、役職員の一致団結が必要だ。そのために『家の光』などを活用した教育活動がいっそう重要になる」として、教育文化活動のさらなる推進を呼びかけた。
そのほか、松井一郎大阪知事の「これからもアイディアと行動力を生かし、地域の元気づくりに取り組んでほしい」とのメッセージを小河保之副知事が代読した。
(写真)
(上から)園田会長、村上副会長、杉本会長
◆4JAに家の光文化賞
大会では、創意工夫に富む教育文化活動に取り組むとともに、家の光事業をJA事業・活動のなかで明確に位置づけ成果を上げているJAへ「家の光文化賞」を贈り、讃えている。
昭和24年制定の同賞は、これまで264組合を顕彰してきた。64回目となる今回は、
▽JAセレサ川崎(神奈川)
▽JA京都市
▽JA紀南(和歌山)
▽JA広島北部(広島)
の4JAが受賞した。受賞JAには正賞の床置時計と副賞賞金300万円のほか、ブラジル・コチア産業組合中央会記念賞、家の光文化賞農協懇話会会員プレートが贈呈された。
そのほか、普及実績表彰では、『家の光』普及率39.4%という県別では全国最高の普及率をほこるJAならけん(奈良)など、3JAを特別表彰した。
(写真)
家の光文化賞の表彰をうけるJAセレサ川崎の柴田組合長ら
◆時事問題で新たな挑戦
大会のイベントである体験発表では、前日18日の都道府県代表体験発表大会を勝ち抜いた9人が登壇した。それぞれ、『家の光』を活用した教育文化活動の取り組みや、活動への熱い想いを発表した。
審査委員長の石田正昭・三重大名誉教授が「環境問題、TPPなど時事問題をテーマにした、これまでにない切り口での取り組みが多く、従来の活動だけでなく新たなチャレンジを成功させた事例ばかりだった。多彩な世代と職員各層の方々が、それぞれの目線から自身の活動を語っており、どれも素晴らしかった」と全体を評した通り、全国の模範事例となるような発表が揃った。また、地元から駆け付けたJA役職員、女性部員らの応援もあり、熱気あふれる発表会となった。
記事活用の部では、『家の光』のTPP解説記事を元にTPPの寸劇をつくり地域で上演した「食と農を守ろう! 私たちのTPP反対運動!」のJAあきた北(秋田)嶋田恵子さんが最優秀賞の「志村源太郎記念賞」に、また、60年近くにわたり『家の光』12月号付録の家計簿を記帳し続け、そこから地域の産地づくりなどを実現した「継続は力なり」のJA南さつま(鹿児島)中村サチさんが審査委員会特別賞に選ばれた。
普及・文化活動の部では、とある女性部員の相談をきっかけにJA支店を中心にした加工品づくりなどに取り組んだ「『家の光』が育んだ夢?支店から広がる地域の輪?」のJAならけん(奈良)和田依子さんが最優秀賞の「JA全中会長賞」に選ばれた。
『ちゃぐりん』愛読者特別発表では、沖縄県伊江村立西小6年の仲宗根実夢さんが、離島での畜産経営の苦労や祖父との思い出、『ちゃぐりん』に掲載された牛の特集を読んで畜産について学んだこと、などを元気よく発表した。
(写真)
(上から)石田教授、仲宗根さん
【記事活用の部】
志村源太郎記念賞
嶋田恵子 JAあきた北(秋田)
「食と農を守ろう! 私たちのTPP反対運動!」
稲作専業農家の娘に生まれ、子どものころから農協や婦人部活動が身近だったため、嫁ぎ先は非農家だったが地域の女性部活動にも自然と参加した。そんな活動のなかTPPが話題に。「TPPは農業だけでなく、生活そのものを破壊してしまうものなのに、みんな農業が経済発展を阻害しているという認識だった。このままではいけない。地域全体の問題として考えなくては」と危機感を募らせた。そこで、毎年9月のJA女性部大会でTPPの寸劇を上演することに。
準備は『家の光』を参考にTPPの勉強からスタート。部員は年齢も仕事もさまざまで親の介護などもあり、なかなか全員集まれなかったが「練習しているうちに団結が深まり」10人だった参加者は23人に。本番は拍手あり、笑いありで大成功。「エンディングの瞬間は最高に幸せだった」。
その後、家族や地域でもTPPが話題になることが増え、寸劇はISD条項など新たな問題点も入れて他の支部が引き継ぎ、他県にも広がった。「TPPは偉い人たちが考えるものだと思っていたが、仲間と一緒に学び、表現したことで関心が高まった。10年先、20年先も安全な食と豊かな生活環境を守るため、自ら勉強し、地域へ情報発信していきたい」と力強く結んだ。
【普及・文化活動の部】
JA全中会長賞
和田依子さん JAならけん(奈良)
「『家の光』が育んだ夢?支店から広がる地域の輪?」
和田さんの勤める南宇智支店は中山間地域が多く高齢者が多い地区。「いつも身近にJAがあるという意識がとても重要」だと、支店を拠点にした活動から学んだことを発表した。
入組1年目に生活文化活動が何なのかもわからないまま担当になった和田さん。まずは活動の基礎を学ぼうと支店職員で『家の光』持ち寄り読書会をスタートした。そんななか、とある女性部員からの「地域の人たちと力を合わせて、ひとつのものを創りたい」との切なる願いをうけ、『家の光』を参考に塩麹、味噌などをつくる加工グループを設立。「この味を広めたい」との思いからJAファーマーズマーケットにも出荷するようになった。こうした成功でさらに力が入った持ち寄り読書会は、組合員へのアプローチの引き出しを増やし、普及推進にも貢献。支店の取扱い事業量が目標に対して300%超という実績にもつながった。 「JAの強みは人と人の結びつき。そして、支店は地域とのつながりの拠点だ。支店ができることは小さいかもしれないが、しかし小さな活動の積み重ねが豊かな地域社会の実現につながる」との思いから、これからも支店を核に生き生きと活動したいと力を込めた。
◇
体験発表の出場者や発表テーマ、表彰JAなどは次の通り(敬称略)。
【家の光協会会長特別賞】(発表順)
○記事活用の部
▽「『明日も、元気をもらうあの部屋よ』…私たちの成長の軌跡」村上宏子・JA福山市(広島)
▽「共に学び共に歩む女性部を目指して」小川桂子・JA尾張中央(愛知)
▽「食と農を守ろう! 私たちのTPP反対運動!」嶋田恵子・JAあきた北(秋田)
▽「『輝け!フレッシュミズ!チームサンシャイン!』?ママ友から始まった友達の輪・地域貢献の輪・組織の輪」廣田亜樹子・JA紀北かわかみ(和歌山)
▽「継続は力なり」中村サチ・JA南さつま(鹿児島)
▽「仲間と共に 咲かせます!」岩崎孝子・JAはが野(栃木)
○普及・文化活動の部
▽「『家の光』が育んだ夢?支店から広がる地域の輪?」和田依子・JAならけん(奈良)
▽2年目の想いをカタチに一歩、二歩、三歩。『家の光』で創る『食農立国』」山田茉未・JAいわて中央(岩手)
▽「絆?普及率60%をめざして?」前田光子・JAいわみ中央(島根)
【第64回家の光文化賞】
○家の光文化賞
▽JAセレサ川崎(神奈川)
▽JA京都市(京都)
▽JA紀南(和歌山)
▽JA広島北部(広島)
○家の光文化賞促進賞
▽JAにしみの(岐阜)
▽JA尾張中央(愛知)
▽JA京都にのくに(京都)
▽JA石見銀山(島根)
【普及実績表彰】
○特別普及実績表彰
▽JA八戸(青森)
▽JA兵庫西(兵庫)
▽JAならけん(奈良)
○『家の光』高普及実績表彰
▽JAはだの(神奈川)
▽JA横浜(神奈川)
▽JA大阪市(大阪)
▽JA福岡市(福岡)
▽JAいわみ中央(島根)
▽JA糸島(福岡)
▽JA下関(山口)
▽JAさいたま(埼玉)
▽JAにじ(福岡)
▽JA小松市(石川)
▽JAあつぎ(神奈川)
▽JAひがしうわ(愛媛)
▽JA山口宇部(山口)
▽JAあさひな(宮城)
▽JAいずも(島根)
▽JAあいち知多(愛知)
○『家の光』複数年連続増部実績表彰
▽JA大阪中河内(大阪)
▽JA筑前あさくら(福岡)
▽JA兵庫南
○『家の光』長期愛読者拡大実績表彰
▽JAめぐみの(岐阜)
▽JAしらかわ(福島)
▽JA利根沼田(群馬)
▽JAいわて中央(岩手)
▽JAたむら(福島)
▽JAいずみの(大阪)
▽JA東京むさし(東京)
▽JAむなかた(福岡)
▽JAふくおか八女(福岡)
▽JAおきなわ(沖縄)
▽JAひまわり(愛知)
▽JA秋田しんせい(秋田)
▽JA京都やましろ(京都)
▽JA京都(京都)
▽JA大阪南(大阪)
▽JAたかつき(大阪)
○『地上』長期愛読者拡大実績表彰
▽JAからつ(佐賀)
▽JAいわて南(岩手)
○『ちゃぐりん』長期愛読者拡大実績表彰
▽JAからつ(佐賀)
▽JAさがみ(神奈川)
▽JA京都中央(京都)
▽JA花咲ふくい(福井)
▽JA岡山西(岡山)
▽JAしらかわ(福島)
▽JA邑楽館林(群馬)
▽JA松本ハイランド(長野)
▽JA津軽みらい(青森)
○「家の光図書」普及実績表彰
▽JA福山市(広島)
▽JAおきなわ(沖縄)
▽JAくにびき(島根)
▽JA香川県
○「図書予約組合」増口数実績表彰
▽JA相模原市(神奈川)
▽JA秋田おばこ(秋田)
▽JAグリーン近江(滋賀)
▽JA北びわこ(滋賀)
▽JA兵庫みらい(兵庫)
▽JA佐伯中央(広島)
○「家の光図書」記念品活用実績表彰
▽JA筑紫(福岡)
▽JAほくさい(埼玉)
▽JAあつぎ(神奈川)
(関連記事)
・阿江美穂さん(兵庫)に家の光童話賞(2013.12.27)
・農村の読書離れ一層進む 家の光調査(2013.10.16)
・戦後の農村読書傾向が一目 家の光協会(2013.06.05)
・家の光協会新3か年計画 協同の大切さ広める(2013.03.27)
・協同の心で次代につなごう 第55回全国家の光大会(2013.02.15)
重要な記事
最新の記事
-
【人事異動】JA全農(2025年1月1日付)2024年11月21日
-
【地域を診る】調査なくして政策なし 統計数字の落とし穴 京都橘大学教授 岡田知弘氏2024年11月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】国家戦略の欠如2024年11月21日
-
加藤一二三さんの詰め将棋連載がギネス世界記録に認定 『家の光』に65年62日掲載2024年11月21日
-
地域の活性化で「酪農危機」突破を 全農酪農経営体験発表会2024年11月21日
-
全農いわて 24年産米仮渡金(JA概算金)、追加支払い2000円 「販売環境好転、生産者に還元」2024年11月21日
-
鳥インフル ポーランドからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
鳥インフル カナダからの生きた家きん、家きん肉等の輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
JAあつぎとJAいちかわが連携協定 都市近郊農協同士 特産物販売や人的交流でタッグ2024年11月21日
-
どぶろくから酒、ビールへ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第317回2024年11月21日
-
JA三井ストラテジックパートナーズが営業開始 パートナー戦略を加速 JA三井リース2024年11月21日
-
【役員人事】協友アグリ(1月29日付)2024年11月21日
-
畜産から生まれる電気 発電所からリアルタイム配信 パルシステム東京2024年11月21日
-
積寒地でもスニーカーの歩きやすさ 防寒ブーツ「モントレ MB-799」発売 アキレス2024年11月21日
-
滋賀県「女性農業者学びのミニ講座」刈払機の使い方とメンテナンスを伝授 農機具王2024年11月21日
-
オーガニック日本茶を増やす「Ochanowa」有機JAS認証を取得 マイファーム2024年11月21日
-
11月29日「いい肉を当てよう 近江牛ガチャ」初開催 ここ滋賀2024年11月21日
-
「紅まどんな」解禁 愛媛県産かんきつ3品種「紅コレクション」各地でコラボ開始2024年11月21日
-
ベトナム南部における販売協力 トーモク2024年11月21日
-
有機EL発光材料の量産体制構築へ Kyuluxと資本業務提携契約を締結 日本曹達2024年11月21日