雪害対策で奮闘するJA全農2014年3月20日
営農を継続できるよう全面的に支援
今年の2月上・中旬に東北・関東甲信地区を襲った豪雪は、農畜産物・農業関連施設に甚大な被害をおよぼした。JAグループとしては2月20日にJA全中に対策本部を設置。JA全農も2月21日に「平成26年豪雪災害対策本部」を設置、24日に「平成26年豪雪による災害対策特別基本要領」を制定。さらに3月6日に「関東甲信地区県本部長対策会議」を開催し、被害状況を把握するとともに、営農活動を継続し続けられるように具体的な対策に取組んでいる。
◆史上初の豪雪 被害1155億円
2月8日そして14日と2週連続で関東・甲信、東北(主として福島、宮城)を襲った豪雪は、上空の気温が低いなかで南岸低気圧が通過した影響によるという。
その積雪量は、山梨県の甲府で114cm、埼玉県秩父で98cm、長野県の飯田81cm、松本75cm、長野市70cm、群馬県の前橋で73cm、埼玉県熊谷で62cm、栃木県宇都宮で32cmとなっている(いずれも2月15日)。甲府の場合、1894年に観測を開始して120年経つが歴代1位の積雪量だという。そのほかも、長野県の松本、長野以外はいずれも「観測史上歴代1位」の積雪量だと報告されている。また、千葉県千葉市でも観測史上初めて33cmの積雪を記録している(2月9日)。
この豪雪は、地域の基幹産業である農業に強烈な被害をおよぼし、地域経済への影響はもとより、今後の首都圏への青果物の安定供給にも支障をきたす事態を引き起こしたといえる。
全農がまとめた3月14日現在の被害の状況は表1の通りで、被害総額は1155億円にのぼる。
(写真)
営農再開へ復旧急がれるパイプハウス
◆被害4万棟 復旧に原管3万トンが
農業関連施設のなかでも甚大な被害を受けているのは、水稲育苗やトマト・キュウリ・ナスなどの野菜、ブドウなどの加温栽培に広く使用されている「パイプハウス」だといえる。全農によれば福島を含めた被害棟数は、現在4万棟を超えると考えており、「この被害棟数から推定される復旧に必要なパイプ原管の必要量は3万トンを超える」と全農では推定している。
災害の発生していない通常年の農業用パイプ生産量は、全国で5万?6万トンだというから、今回の災害復旧に必要な量はその50?60%に相当することになる。つまり、通常年の1.5倍生産されなければ間に合わないということだ。しかも、26年度上半期に復旧ウェイトが高いことを考えると、26年度上半期だけみれば、通常年の1.5倍の生産では済まない計算となる。
図は、農業用パイプの製造工程を図式化したものだが、大きく4つの段階に分かれている。
まず、[1]新日鐵住金などの製鉄会社で「熱延広幅帯鋼」(ホットコイル)が製造され、それを[2]淀川製作所などの単圧メーカーが「溶融亜鉛メッキ」した「冷延コイル」にし、それを[3]造管メーカーが「農業用パイプ原管」にして、[4]ハウスメーカーが曲げ加工し、組み立てている。
(画像をクリックするとPDFファイルが開きます。)
◆急がれるパイプ確保 迫る育苗時期
ところが、いま全国のパイプハウス業者から造管メーカーにパイプ原管の発注が殺到しているが、4月からの消費税増税前の需要や復興需要が旺盛で、造管メーカーはフル稼働の状態にあることから、雪害復旧用のパイプ原管の手当てが間に合わない状態が続いているという。
その背景には、製鉄会社が製造しているパイプ原管原料であるホットコイルや冷延コイルについても、公共事業の好転や自動車、建築関係の需要もあって、入手しにくくなっていることがある。
だが、関東甲信地区の代表的な作型からみると、△水稲育苗が4月?、△レタス、ハクサイ(長野)3月?、△イチゴ育苗5月?、△トマトハウス抑制栽培7月?、△キュウリハウス抑制栽培8月?、△イチゴハウス栽培8月?、△トマトハウス促成栽培9月?、△キュウリハウス促成栽培10月?となっており、水稲やレタス、ハクサイの育苗時期が迫っており、現時点では育苗用パイプハウスの復旧は急がれている。
◆本所・県本部一体で優先課題に取組む
そこで全農では、各県本部と本所が連携して、産地ごとの優先順位をつけて、被災した生産者の営農再開にむけた復旧支援を進めていこうとしている。なにより、農業用パイプ自体を確保することが、最優先課題と位置づけ、必要量を県本部がとりまとめ、本所と造管メーカーと協力してパイプ確保のスケジュール明確化に取組んでいる。
さらに、入手したパイプの曲げ加工・配送体制の整備を行うために、県内だけではなく隣接県の加工場の確保にも取組んでいる。
パイプが確保できても、最後の組み立て作業を行うハウスメーカー自体が、公共事業などで人手不足になっており、施工が遅れることも考えられるので、ハウスの建て方支援のためのマニュアルDVDを作成し、自家施工にも対応していくことにしている。
そのうえで、再発防止対策として、「施設園芸用ハウス自然災害対策マニュアル(台風・強風・雪対策)」の全県への配布、「園芸用パイプハウス補償制度」の周知・拡大、補助事業への対応支援にも取組んでいくことにしている。
また、各県本部では、国と地方自治体が実施する補助制度もふまえ、2月24日に制定された「豪雪による災害対策特別基本要領」に基づいた県別支援策の策定に取り組んでいる。
被害状況についてはまだ不明な部分もあるが、それも含めて、「全農としては必要に応じて県間で資材を融通しあってハウスを復旧するなど、生産者の営農活動が継続できるように全面的に支援していく」と山崎周二常務は決意を語ってくれた。
(関連記事)
・営農継続へ支援 農水省の豪雪被害対策(2014.02.25)
・農業ハウス1万4000損壊 大雪被害(2014.02.25)
・JA全農が豪雪対策本部を設置(14.02.24)
・今年の夏は「異常気象」 木本昌秀・東大教授(2013.09.20)
・梅雨期の豪雨被災農業者に総合対策実施(2013.08.20)
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