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中央会を軸に、JAと地域の発展を 農協研究会2014年12月11日

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農業協同組合研究会第21回研究会「農協改革・その狙いと本質中央会制度を中心に」
・農業政策遂行の強力なバックボーン
・「新たな中央会」は農協法に位置づけを
・JAの総合事業で効率的・効果的に役割発揮
・国民と連携し改革

 農業協同組合研究会(会長:梶井功東京農工大学名誉教授)は12月6日東京都内で第21回研究会を「農協改革・その狙いと本質」をテーマに開いた。JAグループの自己改革の内容とともに、政府の農協改革で焦点となっている中央会や准組合員問題を中心に意見交換し、今後のJAグループとして対応すべき課題を探った。約50人が参加した。2つの報告と議論をまとめてレポートする。

協同組合の価値伝える
教育機能の発揮も重要

 

◆農業政策遂行の強力なバックボーン

あいさつする梶井功会長 研究会ではJA新ふくしまの菅野孝志代表理事組合長が「誇れる日本復活戦略?軸としての中央会」と題してJAの現場から報告した。
 JAグループは自己改革の大前提を「食と農を基軸として地域にねざした協同組合」として▽持続可能な農業と、▽豊かで暮らしやすい地域社会の実現をめざすものだ。
 菅野組合長はこれを実現するための軸としてJAグループの自己改革としてとりまとめた新たな中央会の3つの機能、[1]代表機能、[2]経営相談・監査機能、[3]総合調整機能が必要だと強調した。
 とくにJAを束ねる中央会の存在は農業政策遂行の強力なバックボーンとなるが、それは同時に現場の生産者の思いを実現する力ともなるはずで、今問われている課題のひとつとして戸別所得補償制度について指摘した。菅野組合長は米直接支払い交付金などを盛り込んだこの制度は「戦後最高水準の農業政策」だったとして“岩盤政策”として法制化を求めるべきだったなど課題を指摘した。
 これは日本農業と食料をどうするかの観点から農協改革議論が出発したかどうかを改めて問うもので、中央会の役割として「農政運動から国民運動へ」と展開していくことも求められているのではないかと提起した。その例としてTPP参加反対の際の1000万人署名運動の成果も思い起こすべきではないかという。
同時に、“地域協同組合”としての役割発揮については2009年第25回JA全国大会で決議した「大転換期における新たな協同の創造」を振り返り、「この時点から国民、消費者との新たな協同の創造に取り組んできたかどうか」を考えてみる必要があるのではとも指摘した。
菅野孝志・JA新ふくしま組合長 全中の総合審議会では自己改革をめぐって有識者会議を設置して外部の意見を聞いているが、そこには耳を傾けるべき提言もあることに注目すべきだという。たとえば、JAグループは生産から販売まで一貫して担う強みを持っているだけでなく、農村地域においては医療・介護分野にも貢献していることが国民には知られていない。その点で有識者からは、組合員だけでなく消費者にとっても利点があるJAであることを発信すべきことや、被災地の復旧・復興支援に果たした役割などの評価も含めて、国民目線でのJA改革、中央会改革の議論が必要との指摘、さらに今後は生産と消費を地域でつなげるため、准組合員、青年・女性の意思を反映し、単なる事業利用にとどまらず運動に参加してもらう必要があるのでは、との意見もある。
 そのうえで今回の議論のなかで外部からもこうした前向きな指摘があったことをふまえれば、食料、農業問題を国民運動として考えることこそが重要で、「よりよい社会を築きます」をスローガンにした2012年国際協同組合年や、今年は「国際家族農業年」であることなどを、“どれだけ自分たちの運動の契機とすることができたか”が問われると指摘した。
 また、JA改革はJA綱領の実現という視点も欠かせないと強調。JA新ふくしまでは綱領実現に向けて、市民とともに農業を育む、▽こんな故郷にしたい、こんなJAにしたい、▽組織活動は継続とリニューアル、▽原風景の維持こそJAの市民権、といったスローガンを掲げて実践を呼びかけているという。

(写真)
上:あいさつする梶井功会長
下:菅野孝志・JA新ふくしま組合長

 

◆「新たな中央会」は 農協法に位置づけを

山下富徳・JA全中改革対策部長 研究会では「JAグループの自己改革」についてJA全中の山下富徳JA改革対策部長が報告した。JAグループの自己改革についてはすでに報じられているため、ここではJAグループと政府の考え方の違いをめぐって焦点となっている点を中心に山下部長の報告をもとにまとめておきたい。
 中央会改革については「生まれ変わる新たな中央会」として、現行の統制的な権限の廃止等により組合員・JAのための自律的な制度への移行を打ち出し、前出のように3つの機能([1]JAに対する経営相談・監査機能、[2]JAグループの代表機能、[3]JAグループ内の総合調整機能)に集約、重点化する。
 このうちの経営相談はまさにこれまでは「事前指導型」だったものをコンサルとしての「経営相談・事後点検型」に転換する。
 監査についても組合員の求めるJAの経営健全性と適正な運営を担保するため、会計監査と業務監査が一体となった監査を実施する必要があるとしている。継続して事業を利用できるJAとして存続することが組合員のニーズであり、そのために業務監査も一体的に実施されている。
 こうした監査機能や農業政策提案と推進のための代表機能、総合JAの立場に立った事業間調整を行う総合調整機能を持つ「新たな中央会」はJAグループの組織法である農協法に位置づける必要がある、との考えだ。
 これに対して政府の規制改革会議は11月12日まとめた「農業協同組合の見直しに関する意見」のなかで「民間組織として自由かつ自主的・自律的に活動するためにも農協法から中央会に関する規定を削除することが適切」と主張した。また、監査についても「全中監査は真の意味での外部監査とは言い難い」などと指摘している。

基本的考え方 ?自主自立の協同組合としての自己改革? 全体像自己改革(JA改革、中央会改革)の全体イメージ

 これらに対して全中は▽民間組織であることと法的権限を持つことは矛盾しない。自主的民間組織でも必要な取り組みを行うため法的権限を持つ組織は多数存在する、▽中央会は単協の発展を目的とした組織。単協と関係のない自由な事業を行う予定はなく農協法の規定によって活動に支障をきたしていない、▽会員農協の要望に応じて機能発揮するためには農協法に位置づけが必要などと見解を示し、新たな中央会も農協法に位置づけることが必要だと今後も強く主張していく方針だ。
 また、監査の独立性については全中はJA系統組織内の中立的機関であり、JAと個別契約で監査を実施しているのではなく賦課金方式のため、経営相談と監査を同一法人で実施しても独立性が確保されている、との考えを示している。
 業務監査と会計監査を一体的に実施しているのは「組合員が農協の事業を継続的に利用するため」であり、そのために「農協の経営健全性と適正な運営を担保すること」が組合員のニーズに応えることだと改めて農協の特質を明確に主張している。さらにこうした農協について熟知していない一般の監査法人に監査を義務づけた場合、「監査品質の格差拡大や業務監査と会計監査が一体的に実施できなくなることによるコスト負担の増加を招き、所得増大に向けた改革と逆行する」とも指摘している。

(写真)
山下富徳部長

 

◆JAの総合事業で効率的・効果的に役割発揮

 准組合員について規制改革会議の意見では、准組合員がJAに参画するのであれば「農業者の協同組織という農協の原点から一層かい離することになる」として利用制限や、住民のためのサービス提供が必要であれば会社化や生協化など組織形態を変更すべきと主張している。
 これも今後の重要な論点であり、規制改革会議の意見は農業振興と地域振興の両輪を担っているJAの実態をふまえたものとなっていない。
 この点について全中は、地方の人口減少や高齢化が進むなか、雇用創出など地方創生と農業者の所得増大・地域農業の振興を実現するため、▽准組合員の事業量を規制するのではなく、正・准組合員に一体的にサービスを提供するJAの総合事業により、今後とも効率的・効果的に役割を発揮していく、と主張している。
 そのうえで「准組合員を農業・地域経済をともに支えるパートナー」として、共益権のあり方も含めて組合員制度について検討していくのがJAグループの自己改革で示された方針だ。
 研究会ではこの准組合員のJA事業・運営への参画推進について山下部長は支店運営委員会や利用者懇談会などへの参画に加え、「農業者の協同組合という基本」は維持しながらも一定の議決権を持つなどの方向で検討を進めていくとした。
 この問題はJAの職能組合化への狙いとも絡んでいる。
 山下部長も「准組合員の利用制限と専門農協化論はリンクしている」と指摘した。地域住民ためのサービス事業について、農協法改正では、株式会社化や生協化することが「できる」との規定を盛り込むことにとどまったとしても、一方で准組合員の事業利用制限が盛り込まれれば、結局はJAの総合事業分離につながる、という構図にある点に警戒が必要だと強調した。

 

◆国民と連携し改革

研究会のようす。農業・食料政策の視点も重要との指摘も 山下部長は今回の規制改革会議の農業・農協改革論議が「過去の政策等を断ちきる“非連続な農業改革”の断行」として打ち出されたことに象徴されているように、「結論ありきの進め方」を改めて問題だと強調した。
 「目的は農業所得の増大、農村地域の活性化のはず。中央会規定の削除がそれにどうつながるのか、まったく議論されていない。規定削除そのものが目的化するなど、改革を競い合い、いかに岩盤規制に穴を開けたかが重視されているように思えてならない」と批判。そのうえで制度だけを問題にしているときではなく、米価下落問題など農業者の所得安定、地域経済の活性化に向けての具体的な取り組みこそ重要、と強調した。
 菅野組合長は今回の農協改革論について「協同組合の基本を根こそぎ変えるもの。しかし、歴史を振り返ると全中を中心に跳ね返してきた事実もある。協同組合に注目を高めている世界の潮流に日本の流れを戻していくことが大事だ」と訴えた。
 その際に重要になるのは自身の体験からも教育だと強調、「JAがもっと力を持って農業・農協批判を跳ね返すための理論武装には教育の力が大きい。協同組合人としての人材を育てるべき」として重要な中央会機能として“教育”も位置づけるべきだと提起した。
 同時に准組合員も単なるJAの利用者ではなく「地域に住み続け地域を育んできた重要な人たち」との観点から一定の権利など位置づけが必要だとした。
 教育について山下部長は、とくに組合員に協同組合を理解してもらうことが重要で、直売所出荷や利用など「協同を実感できる場」の設定や事業展開が課題ではないかと話した。
 参加者からは今回の農協改革の狙いなどをめぐる指摘も相次いだ。
 規制改革会議の議論は「実は規制強化が狙い。農協改革ではそれが事業分離論だ。自ら准組合員の位置づけを検討するとともに、利用制限に反対していくべき」との指摘や「全中がTPP反対の先頭に立ったから政府は農協を解体しようとしている、といった見方があるが、それは違う。TPPの狙う世界が協同組合の存在を否定するからだ」と本質を指摘する意見も出た。
 さらに政府の「農業改革」そのものも問題にすべきで、成長産業としての競争力ある農業が叫ばれるものの、同時に「食料自給などかなぐり捨てている農政」であり、農業・農村に関心を高める国民とともに、対抗軸を打ち立てる必要性も指摘された。
 研究会の梶井功会長は「安倍首相の岩盤を崩すドリルとは日本の戦後社会それ自体を崩そうとしているのではないか。その第一陣が農協では。たとえば、農協法第一条で、改めて地域組合員でもあることを明確にするなど、しっかりと議論を深めなければならない」と話していた。

(写真)
研究会のようす。農業・食料政策の視点も重要との指摘も


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