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大切な"時間"守るJA葬祭 JAセレモニーさが2014年12月12日

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 農家組合員だけでなく、地域住民の暮らしと命を守っているJAの総合事業のひとつに葬祭事業がある。社会全体の高齢化や地方の過疎化を背景に、福祉事業と並んでJAにとっても欠かせない事業となりつつあり、地域社会からの期待も大きい。9月に日本の協同組合を調査した国際協同組合連盟(ICA)の調査団も、「葬儀というのは単なるビジネスで済まされるものではない。地域社会への配慮という原則がある。実際、葬儀は農業者だけでなく、すべての人に関わることだ」として、JAの葬祭事業を高く評価した。今回、大型合併JAとして管内に都市部と農村部を抱えるJAさがを訪ね、JA葬祭事業の現状と課題を取材した。

事業環境大きく変容
地道な活動で利用者増やす

 

平成25年12月の人形感謝祭。たくさんの人形が供養された。


(写真)
平成25年12月の人形感謝祭。たくさんの人形が供養された。

 


佐賀事業所のプレアホールさが外観 JAさがは平成19年4月、県内の8JAが合併してできた大型JAだ。その葬祭事業については現在、旧JA単位で運営をしていた葬祭子会社を一本化する取り組みがなされている。そのなかで、(株)JAセレモニーさがは5事業所11斎場を運営し年間1600件の葬儀施行のお手伝いをしている。佐賀事業所は佐賀市中心部を管轄し、この地区にはこのほか3つの互助会系の葬儀社が存在する。
 いま、同社は地域住民への利用も呼びかけている。
 いまだに「JAの名を冠しているので、組合員以外は利用できないと思っている人は多い。そういう方々に対して、JAは地域のみなさんのために活動している、地域住民の方でも気軽に利用できる、ということをいかにアピールしていくかが大事」(副島貴幸・佐賀事業所所長)だという。
 地域住民へのアピール手段の一つが、毎年12月に行っている人形感謝祭だ。不要になった人形、ぬいぐるみなどを1世帯につき数に係りなく1000円で供養するという催しだ。今年で6回目を迎えるこの催しには、例年4000体ほどの人形が集まる。25年は事業会社の合併に伴い管轄地域が広がったことで、5800体もの人形が集まり、祭壇に乗り切れないほどになったという。また、感謝祭当日には、農産物即売会や、生活雑貨品のセールも併催し、200人ほどの地域住民が参加する大きなイベントとなっている。

(写真)
佐賀事業所のプレアホールさが外観

 

◆訪問重ねて信頼向上

副島貴幸・佐賀事業所長 一方、地道な活動として同社が取り組んでいるのが、アフターフォローも含めた利用者への訪問活動だ。葬儀の利用者に対して、初七日、四十九日、一周忌・三回忌・七回忌の最低5回は訪問し、可能であれば仏壇で焼香もさせてもらう。
 こうしたサービスが利用者の信頼を高めている。おそらく一般企業ではなかなかできないことだろう。
 しかし、利用者からは「葬儀が終わっても、JAの人たちは変わらず関係を持ってくれた」「故人を覚えていてくれた」と大変喜ばれ、次に親類縁者で何かがあった時にはJAに声かけしてくれるようになったという。
 このほか、農家組合員による集落座談会や女性部の会合などにも同社の社員が出席し、葬祭に関するチラシ・パンフレットを配り、地域住民へのPRも兼ねて利用を呼びかけている。また、各地区にモニター制度を設けており、利用者目線にたった意見交換会を年4回行うなど、より利用者の側にたった事業運営を心がけている。

(写真)
副島貴幸・佐賀事業所長

 

◆紙媒体のコスト対策

葬祭事業の印刷で活用されている高速プリンター「オルフィス」 副島所長は、近年の葬祭環境の変容ぶりについて、「もっとも変わったのは会葬者の人数。10年前はひとつの葬儀につき平均300人ほどの会葬者が参列したが、現在はその半分の140人ほど。郡部では200人ほどが集まる場合もあるが、市内では減少が著しく、葬儀といってもちょっとした家族葬のような雰囲気になっている」という。
 その一因ともなっているのが、県外への人口の流出だ。子どもや親族が県外へ移り住み交流が減り、地域住民同士のつながりも希薄になった。なかには、経済的負担や喪主がいないなどを理由に、大都市で増えつつある直葬(葬儀を催さず、遺体を直接荼毘に付すやり方)を希望する人も出始め、「葬祭のあり方そのものが変わりつつある」。
 葬儀が減ることはもちろん、会葬者の減少も、礼品や案内状の減少につながるため、経営面への影響も大きい。
 そこで、同社がコスト対策の一環として導入したのが、理想科学工業(株)の高速カラープリンター「ORPHIS(オルフィス)」だ。同社では数年前まで輪転機を使っていたが、これを3年前に同機種へ変えた。
 葬祭はその他のJA事業に比べ、奉書、受け付けカード、式次第、さらには会葬礼状、喪中はがき、返礼品の掛け紙など、とにかく紙媒体が多い。高速プリンターの導入により、こうした紙媒体でのコストを大幅に削減しようというのが狙いだった。
 輪転機では、あらかじめ「版」をつくる必要がある。版は1版約30?40円ほどのコストがかかるほか、製版段階でテスト印刷が必要なこともある。もちろん、高速で大量に印刷できることや、出来栄えがプリンターに比べてキレイだといったメリットもある。しかし、会葬者が減少傾向にあるなか、こうした量的メリットを享受し難くなっており、それが高速プリンターの導入を後押しした。
オルフィスを使って佐賀事業所で作られている印刷物 ORPHISのランニングコストは、カラー印刷1枚あたり2円前後。パソコンでデザインした文字をそのままプリントできるので版も必要ない。
 高速で印刷できるのも大きなメリットだ。葬祭は、第一報が入った後、すぐに案内状や式次第などを印刷する必要があり迅速な対応が求められるが、予期して用意できる類のものではない。さらに、実際の会葬者が予想より多かった場合など、急な追加発注が生じる場合もある。
 高速プリンターであれば、そうしたアクシデントにもすぐに対応できる。とくにORPHISはA4サイズであれば1分間に約120枚の印刷が可能で、一般的なプリンターの倍以上の処理能力だ。これにより、利用者へのサービスが向上し、苦情の件数も減ったという。
 前述の集落座談会などでのPR活動にもORPHISは役立っている。例えば10ページ建てのパンフレットを30人分作るとしたら総印刷数は300枚。一般のプリンターでその枚数を出力すれば、ほかの業務にも支障が出る。高速プリンターの導入によって、こうしたPR活動も、よりやりやすくなったともいえる。

(写真)
上:葬祭事業の印刷で活用されている高速プリンター「オルフィス」
下:オルフィスを使って佐賀事業所で作られている印刷物

 

◆あり方変わる葬祭

 人口減少、高齢化、過疎化、消費の落ち込み、宗教観・死生観の変化など、さまざまな要因を受けて“葬祭”を取り巻く事業環境は大きく変化しようとしている。
 しかし、冒頭のICA調査団が言うように「葬儀は単なるビジネスではない」。大切な人の新たな旅立ちを感謝の気持ちとともに送る時間を必要とする人々のために、そして、そうした時間の大切さを伝え残していくためにも、JA葬祭の役割と期待は今後ますます高まっていくだろう。


【ORPHISに関する問い合わせ】
 理想科学工業(株)お客様相談室(フリーダイヤル:0120-534-881)まで。

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