JAしまね 船出祝う 2015年3月16日
組合員数23万人全国1の規模
JAしまねが3月1日スタートした。正・准合わせた組合員数は約23万人。規模では全国一のJAとなり、1県1JAでは奈良、香川、沖縄について全国4番目となる。人口減少という将来の経済・社会の変化を見通し、体力のあるうちに経営基盤を強化しておこうと考えた。特に地域の条件に応じた事業を展開するため地区本部制を導入したところに特徴があり、将来、県1JAや広域合併をめざすJAにとって、JA運営方法の範を示す挑戦になりそうだ。3月8日、約300人がJAしまねの設立を祝った。
出雲市のラピタウェディングパレスで開かれた設立記念祝賀会には、溝口善兵衛・島根県知事や萬歳章・JA全中会長をはじめ、JA全国連各会長など常勤役員が出席。
新JAの組合長の萬代宣雄組合長はあいさつで「誕生した"島根丸"は大型だが、まだ速度はゆっくりだ。秘めた能力を出し、将来この船に乗船してよかったと言われるよう頑張りたい。人口の減少など、将来の経済・社会の変化を見通し、足元の明るいうちに経営基盤を確立しようと、最初から全農県本部も含めた統合など、全国初の試みであり、その責任は重い。統合を機にJA組織の機能・体制をさらに強化し、地域特性の発揮と組合員の視点に立ったJA運営のめざす。組合員ならびに利用者に信頼され、選ばれ、必要とされるJA組織になるよう役職員一同新たな決意をもって鋭意努力する」と、決意を述べた。
溝口島根県知事は「新JAは島根県農業のけん引役として農産物の生産・販売の強化、組合員への支援・サービスの充実などに一層取り組まれることを期待する。県も生産支援や農業の共同利用施設の整備などを支援し、全県一体となって取り組みたい」と、新JAへの大きな期待を寄せた。
また萬歳JA全中会長は、「今回の農協改革は、JA組織の大転換となる大きな一歩を踏み出す重大な判断をした。自主・自立の組織で協同組合として総合事業の真価を発揮して、改革の本来の目的である食と農を基軸とし、地域に根差した組織を構築していく必要がある。JAしまねが掲げる生産・販売の強化策は、全国のJAグループの改革への先駆けとなるものだ。組織、事業、経営の強化発展へ全力を挙げて支援する」と激励した。
(写真)
JAしまね設立記念祝賀会であいさつする萬代組合長
◆地区本部制で地域特性生かす
発足したJAしまねの組織機構の特徴は地区本部制にあり、支店・事業所も統合を理由とする統廃合は行わない方針だ。統合前の11JAをそれぞれ地区本部とする。各地区本部には、本店との機能分担の視点に加え、各地区の地域性や経営特性などの実情を考慮し、地区本部内の推進方策・計画策定と目標管理を行う。また、組合員と直接に接する支店・事業所などは、これまでと変わることなく、営農指導・推進・相談業務・くらしの活動などを担う。
一方、本店の業務は共済事業、信用事業、生活事業、営農経済事業、総務・管理事業、それに地区本部の6部門からなり、それぞれ担当常務と本部長を置く。そのもとに1室・15部があり、県域戦略をはじめ、各事業の方針・計画策定と目標管理を行う。
また地区本部から集約可能な業務を分担するとともに、地区本部への指導、事務統一、リスク管理・内部統制などを担う。特に地区本部独自の事業展開を促し、そのリスクを一定程度本店が負うなど、地区本部の自立性を促すとともに、経営面で収支均衡を基本とする仕組みになっている。
(写真)
新役員と全国連会長らによる鏡割り
◆県域・広域別に 振興作目設定
また新JAの農業戦略は、地区本部の体制を維持・強化し、本店と地区本部が一体となって農業振興・販売・指導事業を展開するところに特徴がある。
販売や購買事業で規模のメリットを発揮するとともに、共同利用施設の広域利用、県域・広域別の振興作目の設定、それに合わせた営農支援など、広域(地区本部)と県域(本店)の機能を明確にして統一的な取り組みを行う。さらに農地活用対策としてJAによる農業経営なども視野に入れている。
この考えから畜産部門で、種雄牛「糸桜」で全国制覇した和牛繁殖産地の復活をめざし、その中心地だった雲南地区に「総合畜産センター」の建設を計画している。併せて隠岐の島を含む県内3か所に「広域畜産センター」を設置する考えだ。また、他の作目では、県域でブドウ、柿、メロンを、広域でキャベツ、トマト、アスパラガス、トルコギキョウの振興作目として取り組む。
なおJAしまねは、このあと、3月下旬に総代の選挙(1000人選出)を行い、6月中旬に地区本部別総代会、6月28日に第1回JAしまね通常総代会を開いて新体制を整える。また、11月1日にはJAしまね信連の業務を包括承継する。
(写真)
出雲大社に参拝するJA全国連の役員
(関連記事)
・経営資源を集中、県農業の振興へ 萬代宣雄組合長に抱負を聞く(2015.03.03)
・【沖縄・島根座談会】県単一JAの総合力、離島・中山間地で発揮(2014.08.07)
・【時の人 話題の組織】萬代宣雄・JA島根中央会会長 いま、なぜ1県1JAなのか?(2014.05.09)
・「JAしまね」発足へ前進(2014.03.26)
・「JAしまね」誕生へ 合併予備契約を締結(2014.03.11)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(130)-改正食料・農業・農村基本法(16)-2025年2月22日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(47)【防除学習帖】第286回2025年2月22日
-
農薬の正しい使い方(20)【今さら聞けない営農情報】第286回2025年2月22日
-
全76レシピ『JA全農さんと考えた 地味弁』宝島社から25日発売2025年2月21日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付)2025年2月21日
-
農林中金 新理事長に北林氏 4月1日新体制2025年2月21日
-
大分いちご果実品評会・即売会開催 大分県いちご販売強化対策協議会2025年2月21日
-
大分県内の大型量販店で「甘太くんロードショー」開催 JAおおいた2025年2月21日
-
JAいわて平泉産「いちごフェア」を開催 みのるダイニング2025年2月21日
-
JA新いわて産「寒じめほうれんそう」予約受付中 JAタウン「いわて純情セレクト」2025年2月21日
-
「あきたフレッシュ大使」募集中! あきた園芸戦略対策協議会2025年2月21日
-
「eat AKITA プロジェクト」キックオフイベントを開催 JA全農あきた2025年2月21日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付、6月26日付)2025年2月21日
-
農業の構造改革に貢献できる組織に 江藤農相が農中に期待2025年2月21日
-
米の過去最高値 目詰まりの証左 米自体は間違いなくある 江藤農相2025年2月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】有明海漁業の危機~既存漁家の排除ありき2025年2月21日
-
村・町に続く中小都市そして大都市の過疎(?)化【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第329回2025年2月21日
-
(423)訪日外国人の行動とコメ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年2月21日
-
【次期酪肉近論議】畜産部会、飼料自給へ 課題噴出戸数減で経営安定対策も不十分2025年2月21日
-
「消えた米21万トン」どこに フリマへの出品も物議 備蓄米放出で米価は2025年2月21日