持続可能な社会目指して ICAとの連携セミナー2015年3月30日
日本協同組合連絡協議会(JJC)は3月27日、東京都千代田区平河町のJA共済ビルで第2回ICA(国際協同組合同盟)連携セミナーを開き、「持続可能な地域社会づくりに貢献するわが国協同組合」のテーマで意見交換した。ICAのジャン=ルイ・バンセル理事やチャールズ・グルード事務局長、Dr・マーティン・ローリー理事、イタリア協同組合総同盟ブリュッセル事務所のエンゾ・ペツィーニ氏が講演・報告し、日本の協同組合の役割と可能性について話し合った。JAや生協などの関係者約250人が出席した。
◆進化みせる協同組合
バンセル理事は教育の重要性を強調した。背景として世界の経済、社会の急激な変化を挙げ、協同組合の信頼関係について、「言葉の意味も内容も変わっており、われわれの話していることを、30歳未満の人がどう理解しているかを考える必要がある」と世代間ギャップを指摘。
また日本の今の協同組合について、「いま、桜が満開でも、風が吹くと散ることもあり、大きな樹は折れることがある。だが、必ず芽があるから大丈夫だ。小さな地球の市民はこれまで連帯の原則に則ってやってきた。日本の協同組合のアイデア、関与が必要だ」と、世界の協同組合に日本の積極的な関与を促した。
また、チャールズ・グールド事務局長は1995年のICAマンチェスター大会で打ち出された協同組合の第7原則「地域社会への関与」に触れ、「そもそもローカルコミュニティに担保されて発展してきたのが協同組合である。本質的にサスティナビリティ(持続可能)な組織なのだ」と、地域社会と共生することの重要性を強調した。
さらに現在、世界で2億5000万人が協同組合で糧を得ていることを挙げ、持続可能な社会に協同組合が安定した雇用確保に貢献しているとして「ローカルからグローバルに協同組合を広げることこそ、われわれの任務である」と、世界の協同組合運動の広がりに期待を述べた。
全米農村電力協同組合協会副会長でもあるローリー理事は、水と食糧と電力エネルギーを結びつけて考える必要性を強調。「いずれも、協同組合が見えないところで重要な役割を果たしている。より広く理解を得る努力が必要だ」と言う。
またアメリカとの関係が軟化しているキューバで新しい協同組合が生まれつつあることを紹介。「公務員も協同組合のオーナーになって、政府の仕事を引き受けることで、社会の移行時のひとつのモデルになるのではないか」と問題提起した。
◆実績もっと発信して
最後にペツィー二氏は、イデオロギーにとらわれた協同組合の時代は終わり、多様な組織が並立するイギリス、フランス、イタリアの現状を紹介。その中で貧困や失業など、社会的に支援を必要とする人々のための協同組合である社会的協同組合の動きに注目する。
イタリアでは「ヘルス」という健康組合が生まれており、これをヨーロッパの新しい協同組合の挑戦とみる。またこうした挑戦には既存の協同組合のセクターの枠を超えた横断的な取り組みが必要で、「広い視野で俯瞰するため、フランスやイタリアで生まれている全国レベルの連合会の役割が重要になる」と指摘した。
ディスカッションでは、(1)協同組合の認知度向上のために協同組合は何をするべきか、(2)協同組合運動持続のため必要な教育活動はどのように行うべきか、(3)協同組合セクターの横断的連携をどう進めるかーなどで意見交換した。
認知度向上では、バンセル理事が組織の透明性の必要性を強調。「言ったことはやる、やったことは言う。ブラックボックスでは駄目だ」と述べた。ペツィーニ氏も“見える化”が重要としたうえで、「協同組合のストーリーや、成功事例をあらゆる機会を使って語るべきだ」と述べた。
教育に関しては、日本に参考になりそうなものとしてバンセル理事が、(1)理事と労働者(組合員)が一緒に学習する機会をつくる、(2)高校や大学のカリキュラムに協同組合のことを入れる、(3)ソーシャルメディアを使った在宅教育の導入ーなどを挙げた。
(写真)日・欧の協同組合の今日の状況で意見交換したICA連携セミナー
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