JAの食農教育に関心 若い母親 農業体験などに 頻度・告知方法の検討を2016年4月27日
食農教育の重要性が指摘されているが、JAはこれをどう進めるか。共済総合研究所の福田いずみ研究員は横浜市の地域子育て支援拠点の利用者を対象としたアンケート調査から、子育て世代の母親は地産地消や農業体験など、JAの食育教育に強い関心を持っていることが分かった。しかし一方でそのことが知られておらず、同研究員は、「イベントの開催回数や告知方法に検討の余地がある」と指摘する。
「農」と「食」にかかわるJAは、平成15年の第23回JA大会で「地域に根差した食農教育の展開」を決議し、学童期の子どもを中心に農業体験や学校給食における地産地消など、さまざまな活動に取り組んできた。一方で、最近は子育て中の若い母親や定年退職者など、あらゆる年齢層に活動が広がっている。
そこで福田研究員は、「地域子育て支援拠点」の利用者を対象に調査した。この支援拠点は、地域の子育て支援の充実を目的に市町村が設置する拠点。乳幼児とその保護者が交流する場で、子育てに関する相談、情報提供、助言などを行う。
◆きっかけは子ども
内閣府の食育に関する意識調査等によると、食育に関心をもったきっかけは「親になったこと」がトップ。次いで「食に関する事件」となっている。これに注目して、横浜市中区にある支援拠点の利用者の意識を調べた。
横浜市は行政区ごとに支援拠点を設け、行政から委託を受けた社会福祉法人やNPO法人が運営する。これにJA横浜の職員が出向き、地元農産物の紹介や試食などの食農教育を行っている。
4か所の支援拠点272件の回答者は全員母親で、うち30代が役7割を占める。食についての意識は、「料理をするのは楽しい」「産地や鮮度など、食材にこだわる」が、それぞれ7割以上を占める。そして回答者のほとんどが「子どもには食の大切さを伝えていきたい」と回答。
また、食の安全性への不安を、20%が強く感じており、程度の差はあれ8割以上が不安を持っている。不安の内容は、食品添加物が85%で最も多く、輸入食品の信頼性、残留農薬と続く。
◆7割が地元産食材
一方、地産地消では、地元産食材を優先している人が約7割。その理由は「新鮮」が68%と最も多く、次いで「安心」「季節感がある」となっている。農産物直売所の利用も「わざわざ出向いてでも利用」(3・3%)と「機会があれば利用」で5割以上を占める。
この機会があれば利用したいという人が多いのは、乳幼児を伴っての長距離移動が困難なためと考えられる。駅の近くの利便性の高いところにあれば利用するなど、「直売所の立地が影響しているのだろう」と、同研究員は分析する。
支援拠点におけるJAの食農教育活動については96%の人に好評だった。そのうえで「地元の農産物への理解が深まった」(74%)、「農産物直売所がどこに、どんなものがあるかわかった」(41%)という評価につながっている。
参加してみたいJAの食農教育では、上位3つが、農作業を行う「農業体験」(76%)、地元産の食材を使う「料理教室」(63%)、そして地元農産物の紹介を兼ねた「試食会」(57%)だった。
◇
アンケート調査結果からみると、支援拠点におけるJAの食農教育活動の認知度は決して高いとはいえない。しかしアンケート調査の自由記述には「知っていたら参加したかった」「食農教育の開催情報が欲しい」などの意見が多くあったことから、福田研究員は「開催回数や告知方法について検討のよちがあるのではないか」と課題提起する。
そのうえで「JAが地域のさまざまな主体と連携し、農業団体としての特色や専門性を発揮しながら、子育てが始まったばかりの若い親に向けた食農教育に参画していく必要があるのでは」と言う。
(写真)JAの食農教育に親子で参加(横浜市の地域子育て支援拠点)
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