いまこそ協同組合の大切さを語るとき 農協運動の仲間達が集う農協協会「特別講演会」「新年の集い」 熱い思いを語り合い和やかに開催2017年2月1日
今年は農協法が施行されて70周年の節目の年となる。その新年を迎えて、農業協同組合のあり方とその役割を考える農協協会恒例の「新春特別講演会」(農協協会、農業協同組合研究会、新世紀JA研究会の共催)と、農協協会・農業協同組合新聞の「新年の集い」が、1月26日に東京・大手町で開催され、JAグループ関係者や研究者、農業関連産業の人たちが多数出席した。
「特別講演会」は、「JAは地域の生命線―日本の農業と地域とくらし、命を守るために―」をテーマに、経済評論家・内橋克人氏、鈴木宣弘東京大学教授、菅野孝志JAふくしま未来代表理事組合長が講演した。
「新年の集い」には、奥野長衛JA全中会長、安田忠孝JA全農参事、吉村保繁JA共済連常務理事、河地尚之(一社)家の光協会常務理事、山田俊男参議院議員が来賓として出席したのをはじめ、JAやJAグループ関係者、農業関連産業や研究者など約150名余が出席し、盛大に和やかに開催された。
今年の集まりは、特別講演を含めて「いまこそ協同組合の大切さをしっかりと語るとき」(奥野全中会長あいさつ)であり、「これからの進むべき方向が明らかになった」(松下雅雄農協協会副会長)集いとして、農協改革など厳しい環境下でも協同組合としてしっかりと活動していくことを出席者一人ひとりが決意して散会した。
「新年の集い」は、佐藤喜作(一社)農協協会会長が主催者としてあいさつ。日本農業、農協運動を取巻く環境は厳しいが、そのなかで「転ばぬ先の杖としていまどんな杖を持つべきかと考えると、人間はすべて自然によってつくられている存在で、その体は微生物の協同で成立っているように、協同の力こそその杖となる」と語り、さらに「日本農業を守り、地域とくらし、命を守るために、農業協同組合のあり方、その役割を考えることがいまこそ大事だ」と述べた。
JA全中会長としては初めてこの集いに来賓として出席した奥野長衛会長は来賓として要旨次のように挨拶した。
――昨年は「農業改革」が「農協改革」に変わり、振り回された年だったが、今年もいろいろなことがスピードアップして起きるだろうと予想している。また、昨年はユネスコで協同組合が世界文化遺産に登録されたが、マスコミでの報道が少なかった。このことの大事さをしっかり伝えなければいけない。
いまこそ協同組合の大切さを語っていく時ではないかと考えている。協同組合の仲間として一緒にしっかりとやっていきましょう。 次いで、安田忠孝JA全農参事が、
――安倍首相の施政方針演説でも(全農の)名前が上げられたが、現在、28年度からの中期3カ年計画の2年目にあたる29年度事業計画を組織的に検討している。中3計画の重点事業施策である「持続可能な農業生産・農業経営づくりへの貢献」「元気な地域社会づくりへの支援」による「農業者の所得増大・農業生産の拡大・地域の活性化」の実現は変わらないが、そのための事業モデルの探求を大胆に追求していく
と決意を述べた。 吉村保繁JA共済連常務理事は、
――28年は災害の多い年だったが、全力で共済金支払に取組み、すべて完了した。そのなかで、農村部のように地域のつながりの強い所は、互いに助け合って暮らしていることを教えられた。JA共済連の中期3か年計画でも地域の活性化についても力をいれており、JAの農業振興や地域貢献活動を支援するための目的積立金として「地域・農業活性化積立金」を28年度から設置。JA共済連の各都道府県本部が、それぞれの地域の実情にあった活動計画を策定し、積立金の資金を活用することにしており、共済保障と併せて、農業振興や安心して暮らせる地域社会づくりに貢献していきたいと語った。 河地尚之(一社)家の光協会常務理事は、
――これまで以上に情報発信力を強化し、メンバーシップの強化につながるような企画の質的向上をはかっていく。そして
2025年の『家の光』創刊100周年に向けて、創刊の原点に立ち、JA教育文化活動を支援し、人・組織・地域の幸せづくりをめざす農協運動の底力となる。
と決意を込めて語った。 山田俊男参議院議員は、
――国会議員となって10年になるが、初めの5年と後の5年ではまるっきり変わり「物事の整理がつかない」と胸の内の苦衷を吐露した。そのうえで「これをどう打ち破るのか、徹底して詰めていかなければいけない」。それができなければ、協同組合はしょせん「世界文化遺産か」といわれる。そうなってはいけないので「戦える思想、方策をつくりあげよう」
と力説した。
新年の集いは、来賓のあいさつの後、「鏡開き」を行い、梶井功東京農工大学名誉教授が、「今後の農協運動のさらなる発展を祈念して」乾杯の音頭をとった。
そして農協協会の事業および農業協同組合新聞(JAcom)に協力・支援をいただいている方から、以下のようなあいさつが続いた。
加藤好一生活クラブ生協連会長は、前日に長野県のJAで講演し、農協組合員と減反が廃止される「平成30年問題」などについて話し合ってきたことから「生産者と消費者がきちんと話し合わなければいけない」ことを痛感したという。今後も「現場の生産者との連携を強めていきたい」と、協同組合間提携の大切さを強調した。
萬代宣雄JA島根中央会相談役は「農協の立場で地域を守る、それしかありません。とにかく地域でがんばりましょう」と力強く語った。
村田興文前シンジェンタジャパン会長は、トランプ大統領就任後、TPPからの永久離脱宣言もあり「米国の農業団体は大混乱している」ことや、中国はコメやコーンは自給するが大豆は輸入に頼るだろうと、世界的な農業関連の情報を話題にすると同時に、日本もコメや農産物の輸出を真剣に考えるべきだとし、そのためには、グローバルGAPのような世界的に認められた認証の取得が必要だと強調。そして、JAがその力を発揮するためには「JAの職員を強くしなければならない」と、農協協会が進めているコミュニケーション力を向上させる「DiSC(ディスク)」事業の大切さを語った。
また、加藤一郎JA全農元専務は、数多くのメディアがあるが、「農業関係では、農協新聞・JAcomのクオリティがNo.1」だとし、これからも支援していくとあいさつした。
新年の集いは、その後、恒例の出席者全員参加による商品券や宝くじを獲得できる「ジャンケンポン大会」が行われ、いまやこの集いのテーマソングと化した「ふるさと」を全員で斉唱し、松下雅雄農協協会副会長の挨拶で閉会した。
なお、参加者全員に、全国の農協などから贈られた農畜産物やその加工品がプレゼントされた(詳細は別掲)。
(写真)順に佐藤喜作農協協会会長、奥野長衛JA全中会長、安田忠孝JA全農参事、吉村保繁JA共済連常務理事、河地尚之(一社)家の光協会常務理事、山田俊男参議院議員、鏡開き、加藤好一生活クラブ生協連会長、萬代宣雄JA島根中央会相談役、村田興文前シンジェンタジャパン会長、加藤一郎JA全農元専務
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