米国の圧力排し 政策議論を-バンセル氏2017年6月2日
協同組合運動の国際化を
フランスの協同組合の代表的組織コープ・エフェールの会長でICA(国際協同組合同盟)委員のジャン=ルイ・バンセル氏は、5月に来日しフランスの協同組合の現状と国際的な協同組合運動の重要性などについて講演するとともに本紙のインタビューにも応じた。「農協改革」について「国の利益にかなうかどうか」の観点から議論すべきでは、などと話した。
バンセル氏は、2014年9月に当時の規制改革会議が提起した「農協改革」に対してその問題点と日本の農協運動への影響を調査するためにICAが組織した「連携・調査団」の代表として来日した。バンセル氏は当時の萬歳JA全中会長らと意見交換するとともに、群馬県のJA佐波伊勢崎などの現場も視察している。JAが地域住民のための葬祭事業を行っていることや、直売所事業なども農業振興だけでなく住民の健康増進に貢献していると評価していた。
--バンセルさんが評価されていた、地域に貢献する農協の総合的な事業については、日本政府の「農協改革」で農協は農業関連事業に特化すべきという方向が強まっています。
「この間、国際レベルで新しいことが起きました。たとえば、トランプ大統領が登場しTPPからの離脱を決めました。 政府が農協改革を強調した当時、首相はTPPを何としてもまとめ署名したいと考えていて、そのために農協改革をするのだという気持ちがあったと聞いています。
そのTPPがなくなってしまうわけでしょう。それなのになぜ農協改革を続けるのかと私は思います。
トランプ大統領がなぜTPPはだめだといったかといえば、米国の国益にしか関心がない、米国第一だからです。彼が正しいとするならば、TPPが不透明な今、日本政府が農協改革を続けることは日本の国益に反することにもなり、なぜ改革をするのかということにもなります。もちろん私もすべてを分かっているつもりではありませんが、世界がこれだけ変わってきているのになぜそのまま農協改革を続けるのか、不思議に思います。日本政府は自国民に本当の理由を説明する必要があると思います。
大事なことは急激な変化にいち早く対応していくことです。今のこの時点で、国の利益は何かということを考えるべきです。農協を昔の農協活動だけに押し込めようとすることが本当に国の利益にかなうかどうかを検討するべきだと思います。
民主国家である以上、当事者、関係者が一堂に会してともに協議して農業をどうするかを決めていくことが大事です。今はTPPから米国が離脱し、米国の圧力がなくなるわけですから、日本の関係者は静かにこの問題について自分たちだけで考えることが大事だと思います」
「ICAは3年前、日本政府の農協改革の提起に関して調査チームをつくって日本に来ました。JA全中から要請があったときに、私たちは仲間として日本に来ました。ICAがそこまで取り組んだということはきちんと認識していただきたいと思います。今後は本の国会や政府も、広くICAのような専門家に意見を問うべきだろうと思います。世界からのいろいろな意見、専門家からの意見を取り入れながら日本の農業の発展を図るならば広く知見を求めていくことがいいと思います」
--協同組合の意義を改めてどう考えていますか。
「やはり農業にとって協同組合は有益な存在だと思います。農業大国といわれるドイツ、フランス、アメリカでは協同組合運動も盛んです。そこにも目を向けていただき、知見や協力を要請してもらえれば各国でその国の農業がこのように発展に役立っているという事例や、情報を提供できると思います。もっと開かれた気持ちで世界に目を向け、外の人間の意見にも耳を傾けていただければと思います。 国際的に協同組合運動を進化させることです。ただそれは事業活動の拡大のためではなく、政治的な課題にも連携してともに取り組んでいこうということでもあります。今年はクアラルンプールでICA総会がありますが、そこで変わりつつある世界に協同組合がどう行動すべきが、その行動計画を総会で提示するようまとめつつあります」
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