協同組合の世界遺産登録2017年8月19日
協同組合思想登録の意義JC総研「にじ」が特集
昨年11月、協同組合の「共通の利益を形にするという思想と実践」が、ユネスコの無形文化遺産に登録された。日本では直接報じられなかったこともあり、その経過や意義について充分伝わっておらず、「なぜドイツが提案したのか」「なぜ協同組合が〝遺産〟なのか」よく分からないところがある。この疑問に答える形で、JC総研が研究誌「にじ」の夏号で、特集を組み、詳しく説明している。同誌の内容から、無形文化遺産登録の意味するところとその意義をまとめた。
ユネスコ無形文化遺産登録の特集について、JC総研協同組合研究部長の前田健喜主任研究員は、登録の内容・プロセス・背景等についてできるだけ正確に伝える、それを踏まえて日本の協同組合としてどのように受けとめるべきかについて問題提起することを、その目的に挙げている。
というのも、
(1)今回の登録はドイツの提案であって、日本の協同組合とは関係ないのではないか
(2)「無形文化財」というものは過去のもので、放っておくと無くなってしまうものではないか
(3)「保護」とは、そうした過去のものを後生大事に保存しておくことで、日々現場で組合員・地域の課題に取り組む我々日本の協同組合関係者にとってあまり意味がないのではないか
と思った人も多かったのではないかと推測する。特集はこうした疑問にも応えを出している。
登録はドイツの提案であって、日本の協同組合とは関係ないのではないか。 2013年に無形文化遺産保護条約締結国入りしたドイツにとって、「協同組合の思想と実践」は同国にとって無形文化遺産として最初の提案となった(日本の締結国入りは2004年)。その理由は「ナチスの時代に習慣、文化的な祭事、舞踊は乱用され、政治的なイデオロギーのために利用された」ことも関わっていると言う。ドイツの提案は、こうした歴史を踏まえ、文化について国内で多くの議論を重ねた結果であり、歴史の重みがある。
「協同組合の思想と実践」はユネスコ条約に明記している「社会的慣習、儀式及び祭礼行事」の分野に入り、「協同組合において共通の利益を形にするという思想と実践」(正式登録名)であり、ドイツにでは有効な構成要素となっているが、「利益を形にする」ということは、特定の国や組織に限定されるものではない。
(写真)協同組合研究誌「にじ」659号の表紙
無形文化遺産保護条約には「無形文化遺産は世代から世代へと伝承され、社会及び集団が自己の環境、自然との相互作用及び歴史に対応して絶えず再現」するものとしている。この「再現」は英語でrecreate(リクリエイト)、つまり「再創造」をいう意味を含んでいると言う。
「保護」というのは過去のものを後生大事に保存しておくもので、われわれ日本の協同組合の関係者にとってあまり意味がないのではないか。
協同組合の思想と実践を日々の協同組合活動のなかでつみ重ね、伝えていくことが重要であり、JA全中の奥野長衛会長は「にじ」の寄稿で「協同組合に参加し、協同組合で働く私たち一人ひとりの日々の取り組みが協同組合の思想と実践を形づくっていると思う。だからこそ協同組合に現されるような『協同組合の思想』を大切にしながら、協同組合が社会の変化とともに、変わっていくことが必要」と述べている。
つまり、人々の仕事やくらしは時代と共に変わり、ニーズも思いも変わる。それを実現するために協同組合も変わる必要があるというわけだ。従って、今日の日々変化する協同組合活動の中で常に、「協同組合の思想」の再創造、維持していくことが無形文化遺産の「保護」であり、今日のわれわれが現場で、組合員や地域の課題に取り組んでいることが大事だと指摘する。
重要な記事
最新の記事
-
集落機能強化加算 「当分の間、継続」江藤農相 対象は現行555組織 経過措置導入へ2024年11月29日
-
「子どもの食事って大切」 心身育成にも一役 全国オーガニック給食フォーラム2024年11月29日
-
着実な担い手確保へ JAきたみらいなど先進3JAに学ぶ JA全中・次世代総点検セミナー2024年11月29日
-
宴会やパーティーで食品ロス削減「おいしい食べきり」全国共同キャンペーン実施 農水省2024年11月29日
-
「食品関連企業の海外展開に関するセミナー」環境規制に関する事例紹介 農水省2024年11月29日
-
【農協研究会】たい肥センター核に 放棄地再生も JA佐久浅間で農業戦略探る2024年11月29日
-
日銀「地域金融強化のための特別当座預金制度」適用対象機関名を公表 農林中金2024年11月29日
-
【役員人事】JA全農くみあい飼料株式会社(11月19日付)2024年11月29日
-
内部統制と働きやすさは両論 コンプラでトップセミナー JA全中2024年11月29日
-
ノウフクレンケイってなんだ? 根本凪の「ネモト宅配便 特別編 」配信 JAタウン2024年11月29日
-
「冬の京野菜フェア」全農直営3店舗で12月1日から開催 JA全農2024年11月29日
-
柑橘王国えひめ「紅コレクション」始動「愛媛県産紅まどんなフェア」開催 JA全農2024年11月29日
-
「ランピースキン病の発生」影響に関する相談窓口 福岡・熊本に設置 日本公庫2024年11月29日
-
シニアの外国語:その可能性【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年11月29日
-
東日本のカシノナガキクイムシの由来を遺伝情報により解明 森林総合研究所2024年11月29日
-
島根県大田市 三瓶山麓で有機米を初収穫 報告試食会を開催 三菱マヒンドラ農機2024年11月29日
-
JAタウン「国産のごちそうディナーセット」数量限定で販売開始2024年11月29日
-
JAグループ茨城オリジナル肥料「サステナフルーツZⅡ」 の販売を開始 朝日アグリア2024年11月29日
-
福岡県産「あまおう」のミルクレープ 期間限定で登場 カフェコムサ2024年11月29日
-
農業用ドローン向けワンストップサポートサービス提供 NTTイードローン2024年11月29日