農家のために JA・商系の壁を超える JA水戸 農家の店しんしん内原店オープン2017年9月2日
JA系統と商系という壁を越え「農業者の利益に貢献する」を目的に、JA水戸と「農家の店しんしん」を経営しているアイアグリ(株)で共同経営する「JA水戸・農家の店しんしん内原店」が、9月1日にオープンした。
(写真)JA水戸・農家の店しんしん内原店新規開店のチラシ
既報のようにすでに式典やJA組合員対象の「特別招待販売」を終えているので、この日はセレモニーのない静かなオープニングだったが、JA水戸は八木岡努組合長をはじめ井坂英嗣専務、根本順一常務が、アイアグリ(株)は木村泰行社長、初澤智幸執行役員兼直営店舗統括部長が来店するJA組合員やお客一人ひとりに挨拶し、顔なじみの人とは近況などを語り合っていた。
店内では、塙賢二店長を先頭に、来店客を案内して質問に的確に応えたり、肥料など商品説明をていねいにしているのが印象的だった。
JA組合員を対象にしたプレオープンが前日まで催されていたことや、平日で兼業農家は来店しにくいこと、大型台風の接近が報じられ「まずは田んぼや畑を見てこなくては...」という当然の農家心理もあり、大勢のお客が押しかけるという風景は見られなかった。しかし、早朝からのほ場の見回りが一段落した生産者や、朝の家事をすませた農家の主婦の来店がしだいに増え、熱心に展示されているさまざまな商品を手に取る姿が多くなった。
店内には例えば肥料などは、JA系統の商品と商系・しんしんの商品が同じように並べられ、店員の説明を聞きながら比較して購入できるようになっている。また、潅水チューブ、刈払機、チェーンソー、バッテリー動噴や自走式動噴から米袋、ホウレン草や小松菜用の三角袋から作業用手袋など、農作業に必要なありとあらゆる商品が陳列され「農業を総合的に応援する店」「経済性と機能性を追求! 増収・生産コスト低減を応援」というコンセプトを具体的に見せていた。
(写真)JA水戸・農家しんしんの店の外観
※ ※ ※
開店目玉商品の一つで1人の購入50袋までという「国産高度化成オール14」20kg袋を、50袋購入したJA組合員の男性は「これは春に撒く肥料で、いつもはJAの予約で購入しているけれど、品質も同水準で価格が安く2万円近く得なので買いに来た」。いつもJA利用で「農家の店しんしん」は「使ったことがないけれど、ここはJAとの共同経営だからいいと思うし、これからもこの店を使うよ」と話してくれた。
(写真)新規開店で訪れ、丁寧に商品説明をする店員に耳を傾ける利用者
同じく目玉商品の国産高度化成オール14と菜種粕(粉)を購入した男性は、農家の店しんしんのファンで「家の近くにあった店の定員さんに親切に面倒を見てもらい、その店がなくなってからは、少し遠いけど本店から買っている」という。なぜ、しんしんかという問いには「面倒見がよく、信用できるからさ」と答えが返ってきた。これからは「ここが近いし、JAの商品もあるので、店頭で比較して買えるので便利だね」とも。
※ ※ ※
(写真)店内に大量に用意された肥料など
アイアグリの木村社長は、四国のJA資材店で「コンサルティングをしたりしているが、共同経営は初めての試み。ここをぜひ成功させたい」と意気込みを語ってくれた。
JA水戸の井坂専務は「JAは価格などで努力しているが、それが組合員に伝わっていないことが多い。商系では価格表示のPOPを工夫して店の努力を客に伝えるなど、売る努力やノウハウなどJAが学ぶことはたくさんある」とも。
八木岡組合長は、茨城県内の販売・購買事業を合わせた「JA結集率は30%。米は20%」と指摘し、「これを40%にするには、小手先では実現できないので、思い切った改革が必要だと考えてこの共同経営をすることにした」という。
そして「たとえ商系の商品でも組合員が使って評価が高く買われていく商品は、JAが予約販売用に仕入れることも視野に入れている」という。
木村社長も八木岡組合長も、この店での販売動向などを丁寧に見ていくことで、「新しい商品開発もできる」と期待している。
組合員・利用者からも喜ばれ、新しい可能性に挑戦したこの試みへの関心は高い。「ぜひ成功させて、農家のために貢献する新しいモデル」にしていきたいというのが、JA水戸とアイアグリ両者の熱い思いだ。
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