自給率向上に抜本策が急務-JA全青協2017年11月16日
JA全青協(全国農協青年組織協議会)は11月14日に委員長・事務局拡大合同会議を開き、「食料を安定的に確保することは国の責務」、「自給率の維持・向上を図るための抜本的な対策が急務」などとして、政府・与党などへの「農業政策等に関する要請」を決めた。全国で青年部の盟友が政治家や行政にこの要請文をもとに働きかけていく。
合同会議では農政をめぐる情勢についてJA全中から30年産以降の水田農業対策や、卸売市場法改正の議論、TPP11交渉結果などについて報告を受けた。
そのなかで解散・総選挙があったことから、米の30年産問題や卸売市場法改正など「矢継ぎ早に審議・決定しなければならない状況になっている」として、会議では「このような情勢でも真に農業者の求める政策や対応を実現するため、われわれJA青年組織も意見を表明していかなくてはならない」との考えを確認した。
それに基づき「農業は国民に安全安心な食を供給し、くらしを支える生命産業」、「将来にわたって食料を安定的に確保することは国の責務」と強調し、政策、法案の検討には「担い手の声を聞き、現場の実態をふまえたのものとならなければならない」とする政策要請を決めた。
また、JA自己改革についてJA全中は、政府に農協改革集中期間が平成31年5月までになっており、現在、組合員のJA改革への理解と准組合員との関係強化が課題となっているとした。そうした問題意識をJA全役職員が共有するとともに、JAの役割、改革によってすでに出ている成果などについて「もっと情報発信が必要。31年5月という期限を意識し、組合員の理解と評価を得ることが最大の課題」と強調した。
JA全中は31年1月から3月にかけて全国のJAで役職員訪問による全組合員へのアンケート調査を実施することにしている。会合では「JA全青協としても、自己改革について引き続きしっかり取り組んでいく」とした。
そのほか、よしもとクリエイティブ・エージェンシーの協力でお笑い芸人と食と農の理解を図るトークイベントについての報告や、JA全青協ポリシーブックの取り組み方向、来年の第64回JA全国青年大会の日程(平成30年2月26日~27日)などを決めた。
(写真)会合であいさつする飯野芳彦JA全青協会長
【農業政策等に関する要請】
農業は国民に安全安心な食を供給し、くらしを支える生命産業である。したがって、農業生産基盤を確立し、将来にわたって食料を安定的に確保することは、国の責務である。また、近隣諸国との緊張感が高まる中で食料安全保障の重要性は一層増しているなか食料
自給率は38%と極めて低く、自給率の維持・向上を図るための抜本的な対策が急務である。
現在、農業生産の根幹を支える重要な政策や法案の検討が、集中審議されているが、担い手の声を聴き、現場の実態をふまえたものとならなければならない。
我々、青年組織は、農業の担い手として国民の食を守る責務と誇りをもって情熱的に農業を営み、地域を支えている。そして仲間とともに研鑚し、新たな技術に挑戦し、自身の経営の安定をはかることに留まらず、地域の発展に最大限の努力をしている。今後、生産者が未来に向けて希望をもって営農ができるよう、下記について要請する。
記
1.水田農業対策
(1)平成30年産以降、コメの直接支払交付金について政府は使途を明確にしたうえで、前回の参議院選挙における自由民主党の選挙公約にもあるとおり、その財源を活用し水田フル活用の予算を恒久的に確保すること。
(2)水田フル活用への継続的な政策支援は最低限必要であり、そのうえで政府は輸出用米等についても、水田フル活用の政策支援の対象とすることや、主食用米から戦略作物等への積極的な転換を図る都道府県等へのインセンティブとなる仕組みを措置すること。
(3)収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)は、引き続き農業再生協議会等の仕組みを通じて、需要に応じた生産に取り組む農業者を対象にすること。
(4)耕種農家がWCSや飼料用米を今後とも安定して生産していくために、畜産農家の経営を安定させ投資拡大ができるよう、政府は制度および予算拡充を措置すること。
(5)平成30年産以降も需要に応じた生産を奨励することが必要であり、都道府県農業再生協議会の役割がこれまで以上に重要になることが想定される。そのため、政府は協議会運営を都道府県任せにせず、責任をもって協議会の機能発揮のための支援を講じること。
2.中山間地域農業対策
中山間地の圃場は平場の圃場と比較して条件不利地であり、離農・耕作放棄地が増加している。中山間地農業の衰退は農業用水の供給等、平場の農業へも重大な悪影響を及ぼすため、中山間地を守る零細農業者の現状(担い手不足等)を把握し、中山間地域等直接支払制度をさらに充実させるなど、中山間地でも農業が続けられる具体的な対応策を講じること。
3.卸売市場法の見直し
(1)天候により収量が左右されやすく、鮮度劣化が早い園芸作物の流通において、産地の安定的な生産・出荷を確保するために「受託拒否の禁止」「差別的取扱い禁止」規定を維持すること。
(2)迅速・確実の代金回収は、生産者の資金繰りに寄与しており、次期作にむけた円滑な準備・投資に向けられていることから、「代金決済の確保」「卸売市場業務の代行」規定および関連する通知等の枠組みを維持すること。
(3)実需者ニーズを踏まえた低コスト・鮮度保持を図るための直送等を推進し、生産者手取りの拡大を図るため「商物一致の原則」規定について現場に即した見直しをすること。また、「第三者販売の原則禁止」規定については、大手量販店等の買い叩き防止の観点から慎重に検討すること。
4.果樹対策
(1)生産コスト削減による収益性向上や省力化技術の積極的な導入による作業性向上、産地の若返りが図れるよう適切な支援策を講じること。また、産地パワーアップ事業については、財政基盤が脆弱な地方圏でも、取り組めるよう、当初予算化など適切な措置を講じること。
(2)39歳以下の果樹経営者の割合は1.3%と極めて少なく、高齢化が著しく進んでいることから、親元就農を含めた新規就農者に対する支援を拡充すること。
5.野菜対策
(1)加工・業務用の需要に対応できるよう、多収量性品種・収量向上技術・機械化・規格簡素化への支援策を講じること。また、品種・施設・生産技術の研究による産地育成や災害に強い栽培体系の確立に向けた支援策を講じること。
6.畜産・酪農対策
(1)繁殖素牛、搾乳素牛確保のために性判別精液受精卵の利用促進、育成牛生産基盤の整備への支援を拡充すること。
(2)畜産クラスター事業については、事業の検証及び現状を踏まえ、計画的、継続的に取り組みが支援できるようにするとともに、家畜導入や施設整備に対する支援を拡充すること。
(3)子牛価格の高騰等が経営を圧迫し、経営に深刻な影響を与える中で、体質強化の取り組みに支障をきたすことのないよう、肉用牛肥育経営安定特別対策事業等(牛・豚マルキン等)の経営安定対策の拡充・法制化を早急に実施すること。
7.都市農業対策
(1)都市農地の貸借の円滑化に関する法律案について、早期に成立させること。また、同法に基づく貸借を相続税納税猶予制度の対象とするとともに、三大都市圏特定市以外においては農業者の意欲を損ねることのないよう20年間の相続税納税猶予制度を堅持すること。
(2)三大都市圏における生産緑地制度の追加指定をすすめること。
(3)地方圏においては生産緑地法に関する理解が不十分な行政や農業者も多いことから、説明会や研修会を開き、早期に生産緑地導人にむけた対策を講じること。
以上
平成29年11月14日
全国農協青年組織協議会
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