世界へ羽ばたく十勝農業2018年8月9日
海外を視野に入れた十勝農業には、JA帯広かわにしの長いも、JA中札内村の枝豆がある。いずれも土地条件を生かした作目で、徹底した品質管理のもと、生産から加工、販売まで一貫管理して付加価値を付けてJAのブランドを確立。国内はもとより、海外市場への輸出を伸ばしている。
◆JA帯広かわにしの長いも 輸出で豊作貧乏追放
JA帯広かわにしの長いもの特長は、昼夜の寒暖差が大きいという気象条件を生かした、きめが細かく真っ白な肉質と粘りにある。本州の長いも産地は鳥取、長野、青森などだが、十勝は寒冷地のため生育期間が長く、それだけ内容が充実しており、市場で長いもの評価は高かった。しかし、豊作時の価格下落は大きく、決して安定した作目ではなかった。そこで目をつけたのが海外輸出だ。
台湾で長いもは薬膳料理として人気があり、日本で不人気の太物が海外で好まれることが分かった。現在、国内販売は2L級(900g)が中心だが、台湾向けは4L級(1400g)が主流になっている。さらにアメリカ向けは3L級(1100g)が中心で、海外市場に活路を見出した。このほかアセアン諸国への輸出も順調に伸ばしている。
平成28年で、同JAの長いも作付面積は294ha。生産額は13億9000万円で全生産額の7.4%。生産額全体に占める割合は低いが、同JAは「海外輸出で豊作貧乏に泣かされることがなくなり、国内販売の価格安定に繋がった」と、輸出の効果を評価する。同JAで長いも10a当たりの収入は、輸出開始前が約60万円だったものが、輸出によって約80万円になった。
(写真)JA帯広かわにしの長いも
◆JA中札内村のえだ豆
JA中札内村の枝豆の特長は枝豆本来の食味を生かすところにあり、収穫から製品化までの時間ほ場までの時間をいかに短縮できるかが勝負。このため農道の整備、収穫の邪魔になる立ち木(防風林)の管理、ほ場に10m幅のハーベスタの旋回スペースの設置と、徹底して時間短縮をはかった。ハーベスタは1日60tの収穫能力を持つフランス製5台を揃え、ピークには24時間作業する。こうして、どんな遠いほ場からも、収穫から3時間以内で冷凍処理できるようにした。
安全で安心できる製品に徹底してこだわり、他のほ場からのドリフト(農薬飛散)を防ぐため枝豆ほ場の周囲に2.4m以上の幅でエン麦を育てる〝額縁栽培〟(四面囲み)を実施。十勝農協連農産化学研究所における残留農薬のサンプル検査のほか、生産履歴と農薬使用基準の確認を行う。
こうした取り組みが評価され、国内の生協や学校給食はもとより、海外でも味のよさが知られ、いまではカナダ、ハワイ、シンガポール、オーストラリア、ドバイなどのほか、今年からベルギーやフランスなどにも輸出する。これらの国には、組合長自ら出向いてトップセールスする。枝豆加工品の売上高は20億円を超える。
(写真)JA中札内村の枝豆
(関連記事)
・最新の技術に20万人超 国際農業機械展 in 帯広(18.07.19)
・【営農事業部門受賞】苦境乗り越え畜産振興 松山幸雄・十勝畜産農業協同組合代表理事組合長(18.07.13)
・【JA新代表に聞く】第4回 蛯原一治・JA忠類代表理事組合長(18.06.28)
・先進的な麦作農家と集団を表彰 ―全国麦作共励会中央表彰式―(18.02.01)
・【現地レポート・JA士幌町(北海道)】大手資本の搾取排し「農村ユートピア」創造(1)<JA士幌町の挑戦>(18.01.10)
・農業女子PJ「チームはぐくみ」に参加 産業能率大学(17.08.29)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(130)-改正食料・農業・農村基本法(16)-2025年2月22日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(47)【防除学習帖】第286回2025年2月22日
-
農薬の正しい使い方(20)【今さら聞けない営農情報】第286回2025年2月22日
-
全76レシピ『JA全農さんと考えた 地味弁』宝島社から25日発売2025年2月21日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付)2025年2月21日
-
農林中金 新理事長に北林氏 4月1日新体制2025年2月21日
-
大分いちご果実品評会・即売会開催 大分県いちご販売強化対策協議会2025年2月21日
-
大分県内の大型量販店で「甘太くんロードショー」開催 JAおおいた2025年2月21日
-
JAいわて平泉産「いちごフェア」を開催 みのるダイニング2025年2月21日
-
JA新いわて産「寒じめほうれんそう」予約受付中 JAタウン「いわて純情セレクト」2025年2月21日
-
「あきたフレッシュ大使」募集中! あきた園芸戦略対策協議会2025年2月21日
-
「eat AKITA プロジェクト」キックオフイベントを開催 JA全農あきた2025年2月21日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付、6月26日付)2025年2月21日
-
農業の構造改革に貢献できる組織に 江藤農相が農中に期待2025年2月21日
-
米の過去最高値 目詰まりの証左 米自体は間違いなくある 江藤農相2025年2月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】有明海漁業の危機~既存漁家の排除ありき2025年2月21日
-
村・町に続く中小都市そして大都市の過疎(?)化【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第329回2025年2月21日
-
(423)訪日外国人の行動とコメ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年2月21日
-
【次期酪肉近論議】畜産部会、飼料自給へ 課題噴出戸数減で経営安定対策も不十分2025年2月21日
-
「消えた米21万トン」どこに フリマへの出品も物議 備蓄米放出で米価は2025年2月21日