徹夜討論で意思固め 農協運動を国民運動へ 韓国農協2019年4月17日
韓国農協中央会は毎年この時期、全国の農協役職員や幹部職員を集めて徹夜討論会「組合長フォーラム」を開いている。今年も4月2日から3日にかけて京畿道高陽市で行われ、1200人の組合長らが参加。日本からは、新世紀JA研究会名誉代表(JAしまね前代表理事組合長)の萬代宣雄氏、福間莞爾常任幹事らが参加。参加者に紹介され、討論会を盛り上げた。
中央のステージを囲み熱気あふれる1200人の夜通し討論
この徹夜討論会は、強力なリーダーシップを発揮する韓国農協中央会・キム・ビョンウォン会長が率いる農協運動の一つとして行っており、全国の農協組合長を対象としたものでは今回で3回目。徹夜の意味は、農協界の危機意識を共有すること、そのため日常の業務が終わってから集まることに意義があるという。
会場には、全国から集まった農協組合長らの1200名の熱気が満ち、討論会は夜の19時40分から翌朝の6時まで行われた。会場設営にも工夫があり、円形の議席配置の中央に舞台が置かれ、ここでキム会長はじめ責任者が原稿無しの身振り手振りで説明、質疑を行い、演出効果も十分。文字通りの徹夜討議で、終始議論を主導したのはキム会長だった。
議論は、韓国中央会からの各セクションの業務報告、それに対する農協組合長からのさまざまな要求とそれに基づく、キム会長・幹部との直接対話と続き、最後の締めはキム会長の基調講演だった。
組合長からの要望は、営農関連事業の無利子融資、ローカルフードの販売、直売所の運営、販路の拡大、資材の引き下げ、高齢者対策、有機農業の推進と価格面でのサポート、水管理、ライスセンターの共同運営等々さまざまなものが出された。
また、間に行われたキム・ヨンドン副首相が「愉快な反乱」と称して講演。このなかで、いま農協人にとって必要な心構えを、(1)情熱を燃やし、(2)何事にも覚醒し、(3)かくして、新機軸を打ち出すべし、と強調した。
さらに基調講演で、キム会長はガットウルグアイラウンドやFTAで打撃を受けた農民の心は癒されなければならないとして、営利追求ではない協同組合運動を通じて農民の復活を訴えた。
その上で、農協の役割として、(1)所得の向上、(2)生活の安定、(3)地域社会への貢献、(4)国民への寄与を挙げた。また、「農業人が幸せな国民の農協」をビジョンに掲げ、政府に頼らない自主・自立の農協運動を強調。農業人が幸せになるためには、国民が理解し国民に愛される農協運動が必要との考えを示した。
参加した萬代氏は「大変な熱気だった。それだけ韓米FTAなどによる韓国の農協の危機感を反映したものだと思う。夜通し討論は韓国の農協はこれだけ危機感をもっているということを組合員や韓国民にアピールする狙いもあるだろうが、組合員の意見を聞こうという姿勢がうかがえる。農協改革や日米貿易交渉が進む中で、日本のJAはもっと危機感をもって臨んでもいいのではないか」と感想を述べた。
徹夜討論会の前日に行った、元農林畜産食品部副大臣のミン氏との会談では、自ら主宰する韓国のベンチャー農業大学の活動内容を聞いた。ベンチャー農業大学は月1回(土・日)開催され、気鋭の講師がボランティアで農業経営にとって必要で革新的なマネジメントの方法について講義し、議論を行う。韓国中央会のキム会長もこの大学の卒業生であり、多くの優れた農業経営者を輩出している。
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