尿素は値下げ、石灰窒素など値上げ-秋肥価格 JA全農2019年6月3日
JA全農は5月31日、令和1肥料年度秋肥の単肥価格を公表した。窒素質のうち尿素と硫安、りん酸質の過石と重焼りんは春肥対比で据え置き、または値下げとなったが、加里質と石灰窒素は値上げで決定した。
尿素(輸入)は前期比▲1.7%、重焼りんは同▲0.3%と値下げ。一方、石灰窒素は+6.8%、塩化加里は+3.9%となった。この価格変動率はJA全農から県JA・経済連向け供給価格ベースであり、JA・農家向け供給価格変動率ではない。6月から適用されるが、地域、作物によって異なることもある。
海外原料市況のうち、尿素は南米の旺盛な需要や環境規制を強めた中国からの輸出減、さらに米国のイランへの経済制裁による輸出制限などの要因で需給が引き締まり上昇基調が続いてきた。その後、昨年11月からはブラジルが不需要期に入ったことや、イラン産の尿素が中国市場を経由して国際市場に出てきたことなどから市況は軟化してきた。これらを反映して尿素は値下げとなった。
一方、石灰窒素は製造に電力を多量に使用することから電力代の上昇が値上げに反映された。
りん安はインド、ブラジルの旺盛な需要で国際市況は堅調に推移してきたが、ブラジルが不需要期に入ったことや、中国国内における春肥需要が低調だったことから市況は弱含みとなった。中国の需要減は天候不順とともに、有機質肥料への転換の動きの影響も考えられるという。
加里の国際市況は昨年10月以降高止まりで推移してきたが、今後も世界的な需要の増加による堅調な推移が見込まれている。
そのほか、肥料を輸送する小型船の数が限られていることに加え、国際的なSOx(硫黄酸化物)排出規制の強化によって、船舶に脱硫設備設置が求められるなど、船舶コストの上昇が見込まれることから海上運賃も堅調に推移すると見られている。
そのほか価格交渉に関わる要因として、今回初めて国内物流費を挙げた。国内物流は深刻なドライバー・船員不足と高齢化に加え、船舶修繕費の上昇、オリンピック需要などを背景とした運賃改定の動きが拡大していると指摘。全日本トラック協会の成約運賃指数は2年間で約15%上昇し、JR貨物も昨年10月から運賃を10%引き上げた。
そのほか包装資材や電力料金なども値上がりしているが、JA全農はメーカーの合理化努力、コスト削減を求め値上げ幅を圧縮した。
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