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【JA人づくりビジョン】着実な実行へ意志固め 組合員の「学び」の場を 人づくりトップセミナー2019年6月20日

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 JA全中は今年3月に開いた第28回JA全国大会の決議に基づき、5月の理事会で第3次人づくりビジョン全国運動方針を決定した。アクティブメンバーシップの確立に向けた「協同組合運動者としての人づくり」を強化する。そのキックオフとなるJA人づくりトップセミナーを5月23、24日、横浜市で開いた。JA全中の中家徹氏、須藤正敏氏の会長・副会長が出席し、JAの将来を担う人材の育成に臨むJAグループの決意を示した。中家会長は、これからの人づくりで、協同組合運動者育成の必要性を強調。JA東京むさし、JAえちご上越、JAぎふが、それぞれ「人づくり」に向けた実践を報告し、参加者一同は、全国運動展開へ向けた決意を固めた。

20190620 ヘッドライン 報告ごとにグループ討議する参加者報告ごとにグループ討議する参加者

 

◆3次運動展開へ 6つの重点課題

 第3次人づくりビジョン全国運動方針は、JAの主役である組合員のアクティブメンバーシップ確立のため「地域に根差した協同組合運動者としての人づくり」の決議に基づき策定した。今日の農業・JAをめぐる環境の変化に対応し、JA自己改革を遂行するため、(1)JAトップ層の人づくりビジョン運動の実践強化、(2)JA人材育成基本方針の見直し、(3)JAの主役である組合員学習・教育文化活動の強化、(4)協同組合運動者としての職員教育の強化、(5)JA人事労務・活力ある職場づくりへの取り組み、(6)中央会・連合会等によるJA人材育成支援体制整備の6つを重点課題として打ち出している。

20190620 ヘッドライン 西井賢悟・JCA主任研究員 セミナーではJA全中の木村政男教育部長、JCA(日本協同組合連携機構)の西井賢悟主任研究員が、ビジョン運動の重点課題について説明し、問題提起を行った。同研究員は、JAグループが実施している「組合員アンケート調査」による50JAの結果から、組合員の「学び」に対するニーズは高いとみる。正組合員は高齢者のいきがいづくり、地域環境をよくする活動、准組合員は高齢者の生きがいづくり、お祭りなどのイベントへの参加・参画希望が高かった。特に准組合員の49歳以下では、男女共に子どもたちへの食農教育のニーズの高さが目立つ。
 こうしたニーズに応える「学び」の場づくりの事例で、滋賀県のJA東びわこが文化活動として行っている「さんさん講座」、長野県のJA松本ハイランドの「夢あわせ大学」などを紹介した。

(写真)西井賢悟・JCA主任研究員

 

◆くらしの活動の中で(JA東びわこ)

 JA東びわこの「さんさん講座」は支店単位で開催し、JA全体では2018年度の97講座で延べ約1600人が参加。料理、カラオケ、社交ダンス、書道など内容は多岐にわたる。西井主任研究員は「組合員の『学び』のニーズに基づき、その参加者が自ら次にやりたいと考える『くらしの活動』をサポートする。その繰り返しの中で、自然と組合員のリーダーが育っている」と言う。同JAの「学び」の場は、料理やカラオケ、社交ダンス、書道など、内容はさまざまだ。

 

◆「若妻大学」50年に(JA松本ハイランド)

 JA松本ハイランドの「夢あわせ大学」(夢大)は、組合員・役職員の「学び」を体系化しているところに特徴がある。若妻大学、はつらつ大学、組合員セミナー、職員セミナー、協同組合みらい塾、人づくり塾があり、組合員はいずれかの「大学」で学ぶことができる。
 その一つ若妻大学は50年近い歴史を持ち、1期3年で卒業生は1099人に達する。卒業生は全員OB会に加入し、メンバーの一部はJAの生活指導普及員に登用され、また女性部やJAの役員として活躍するなど、卒業後もなんらかの組織に属してJAとの関係を保っている。
 こうした体系的な「学び」が機能するためには、本店の教育企画機能と職員の能力が求められる。そして西井主任研究員は職員が備えるべき役割として、「プランニング力」「ファシリテーション力」「農業・JA理解力」「コミュニケーション力」の4つを挙げた。

 

◇    ◆

 

◆卒業視察は海外へ(JA東京むさし)

20190620 ヘッドライン 須藤正敏・JA全中副会長 セミナーで実践報告したのはJA東京むさし、JAえちご上越、JAぎふの3JA。JA東京むさしは平成20年から「組合員大学」を開催。支店単位で推薦された正組合員とその家族が対象で、基礎講座と専門講座からなる。年間10回開講し、専門家による営農、農政、税制、健康、文化などカリキュラムの内容は幅広い。実行委員会を設置し、組合員自らが話しあってカリキュラムをつくって運営していることが特徴だ。 
 JA管内は都市化が進んでおり、全域が市街化区域で農地は約60haで全面積の8%。「JAはこれを守る役割がある。従って、私たちの組織は銀行などとは違うのだということを分かってもらわなければならない」と同JA会長理事の須藤正敏氏は強調する。

(写真)須藤正敏・JA全中副会長

 

◆新職員が農業クラブ(JAえちご上越)

20190620 ヘッドライン 藤山作次・JAえちご上越理事長 JAえちご上越は、フィールド(実践)とフォーラム(研修)を繰り返すF&F型人材マネジメント実践プログラムを導入し、「信頼され親しみある職員づくり」に取り組んでいる。また全中のマスターコースや県中の中堅リーダー職員によるJA改革プロジェクトの活動を進めている。
 さらに1年を通じて田植えから収穫までを一貫して学ぶ新採用職員の農業実習のほか、農作物を栽培する「放課後アグリクラブ」のサークル活動などを実施。農業を知らない職員へ、農業の知識と経験の機会をつくっている。同JAの藤山作次・代表理事理事長は今後の課題として、(1)中堅若手管理職に偏った教育研修の見直し、(2)プレイングマネジャーからマネジャー専念へ、(3)経営方針・ビジョンの職員への明確で具体的なメッセージ発信などを挙げる。

(写真)藤山作次・JAえちご上越理事長

 

◆職員講師に内部学習(JAぎふ)

20190620 ヘッドライン 藤山作次・JAえちご上越理事長 JAぎふは、職場内研修として、JA岐阜中央会主催の研修会に参加した各部署の中堅職員を講師として、週1回、1か月間の学習会を行う。終了後は参加者全員が「JAMASTER」のバッジをもらい、全組合員訪問活動に備えた。また農産物を栽培から販売まで行う活動を支店協同活動として展開し、農家への援農活動なども行う。「自ら農作物を栽培することで農業の楽しさ、難しさを体験すると共に、収穫の喜びを共感でき、農業に興味を持つ職員が増えた」と同JAの近藤隆郎・常務理事は評価する。
 また平成30年度、組合員との対話運動として全組合員訪問を3回実施。同JAの岩佐哲司・代表理事専務は「座学ではだめ。訪問で農家の声を肌で感じることができたという職員の反応があった。意識改革が実感できる」と組合員訪問の成果に期待する。

(写真)近藤隆郎・JAぎふ常務

 

◆「運動者」の意識持って 中家徹JA全中会長

20190620 ヘッドライン 全中中家会長 JAの職員は農協運動の運動者だという意識をもってほしい。いまJAは「農業・農村の危機」、「組織・事業・経営の危機」、「協同組合の危機」の3つの危機に直面している。特に組織基盤の弱体化が心配だ。われわれの時代は常に農協を意識し「おらが農協」という意識があった。
 しかし、いまは世代交代で戦後3代目になりそれが薄れてきた。規制緩和が進むなかで、将来のJA事業のあり方、新しいビジネスモデルを考える必要がある。信用、共済で利益をあげ、指導・経済事業を支える形ができており、手数料を上げなくてよかったが、いまはそういう状況ではなくなった。
 そして少子化が進みJAの人材確保も難しくなると予想される。働き方改革も大きな問題だ。職員の質をいかにして高めるか。これから非常に重要な問題になるだろう。組合員の半分以上を准組合員が占めている。細い糸でつながっているが、これをいかに太い糸にするかだ。JAはこれから組合員の協同意識を高めるなければならない。それが教育文化活動である。
 しかし経営が厳しくなると、どうしても非採算部門が軽視される。教育文化は有機肥料だと考えている。有機肥料は遅効性ですぐには効かないが、やがてよい木が育つ。
 組合員とのコミュニケーションは大事です。コミュニケーションのない職場は不祥事が起きやすい。おもてなし、思いやりのホスピタリティの心で組合員に声掛けできる協同組合の運動者であっていただきたい。

(写真)中家徹・JA全中会長

 

◆総合質疑・討議

 ディスカッションではそれぞれ実践報告者とJA東京むさし組合員大学副実行委員長の髙橋金一氏、セミナーで講演した富士通(株)シニアエバンジェリストの松本国一氏、それにJA全中教育企画課長の田村政司氏が出席した。
 JCA主任研究員の西井賢悟氏をコーディネーターに、(1)組合員大学や女性大学・支店運営委員会の組織や運営(2)組合員組織のあり方(3)JAトップに役割と責任(4)働き方改革と職員のモチベーションなどについて意見交換した。


JA人づくりトップセミナー確認
これからのJA人づくりに全力を尽す

 

 JAグループでは、第28回JA全国大会決議にもとづき、「第3次JA人づくりビジョン全国運動方針を」を決定した。
 私たちJAは「協同組合は教育に始まり、教育に終わる」という先駆者の教えを受け継いできた。いつの時代にあっても相互扶助という協同組合理念を学び、たえず原点を振り返りながら、時代を先取りした協同組合運動を実践していく必要がある。
 私たちJAをとりまく環境は大きな変化の中にある。農家組合員の減少と世代交代、信用事業をはじめとするJAの経営収支の悪化、インターネットによるデジタル社会への移行など、組合員の営農と暮らし、JAの事業・活動・運営はかつてない変革期に直面している。
 こうした中、JAトップの強いリーダーシップのもと、組合員と役職員が共に知恵を絞り、共に汗を流し、組合員の営農と暮らしを守り、地域農業を振興し、安心して暮らせる豊かな地域社会を築いていかなければならない。
 その原動力となるのは、組合員・役職員の主体的な学習活動であり、それを促すのはJAトップの人づくりへの思いと行動力である。
 私たち本セミナーの参加者は困難な時代を乗り越え、将来にわたりJAの使命を実現するため、新たな時代の人材育成基本方針を定め、これからのJAづくりに全力を尽すことを確認する。
  令和元年5月24日
  JA人づくりトップセミナー参加者一同

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