「下町ロケット」の舞台でスマート農業研修会 RTK-GNSS基地局を活用した自動農機を実演2019年7月1日
埼玉県行田市、加須市、羽生市の農業振興と農家への支援活動を行う加須農林振興センターは6月26日、JAほくさい行田カントリーエレベーターと近隣のほ場で「土地利用型スマート農業研修会」を開催。管内の認定農業者など約230人が参加し、RTK-GNSS基地局を活用したオートドローン、フルオート田植え機、ロボットトラクターの実演を行った。
完全無人で走行するロボットトラクター
会場となったのは、無人農業ロボットの開発をめぐる人間模様が描かれた昨年秋のTBSドラマ「下町ロケット」のロケ地に使われた地域。炎天下の中、主催者の予想を上回る参加者が集まり、スマート農業への関心の高さをうかがわせた。
開催にあたり、主催した加須農林振興センターの根岸喜代志所長は、「ドラマの舞台になった行田でこうした研修会ができるのも何かの縁だと思う。新しい技術を知るこの機会を実のある研修会にしてほしい」とあいさつ。続いてJAほくさいの 坂本富雄代表理事組合長は「スマート農業もまさに百聞は一見にしかずです。年々大きい農家が増える中、これを補完するためには機械力に頼らなくてはならない。当組合でも地域の農業の生産額を増やし、所得を増やすために、みなさんの期待に応える対策をしていきたい」と話した。
研修会ではまず、後付けの自動操舵システムを販売するトプコンの担当者から、高精度測位方式のRTK-GNSSと基地局についての説明があった。
RTKは、測位方法の一つで、衛星(GNSS)から送られる位置情報を補正し数センチ単位まで精度を高めることができる技術。これを使うには、衛星から位置情報を受信し、自動農機に設置されたGNSSアンテナ(移動局)に補正情報を送る基地局を地上に設置する必要がある。
一般的に衛星から送られる情報を利用した測位精度は1mから30cm程度だが、RTK-GNSSならわずか数センチの誤差で位置情報を知り、利用することができる。
このRTK-GNSSにより、カーナビの農作業版であるガイダンスシステムを利用したトラクターの自動操舵や直進アシストが高精度でできるため、効率よく、正確で無駄のない作業が可能になる。また、誤差数センチの精密な播種、田植え、耕うん、畔塗などの作業が夜間でも自動操舵や自動直進でできるようになる。
RTK-GNSSの技術を利用するには基準局が必要不可欠。移動式戸固定式があり、設置には70~550万円ほどかかる。
ヤンマーアグリの担当者は、「個人で設置するには負担が大きいが、基地局の設置に自治体やJAがいち早く取り組んだ北海道は、スマート農業化が進んでいる」と説明。関東近郊でも千葉県柏市や香取市で設置され始めており、自動トラクターなどスマート農機の普及の原動力になっているという。
オートドローン「MG1P-RTK」の実演
RTK-GNSSと連動したヤンマーアグリのオートドローン、フルオート田植え機、ロボットトラクターの実演も行われた。
フルオート田植え機の実演では、自動直進で田植えをしながら自動旋回する様子を披露。完全無人ではなく人が乗って安全確認や、苗継ぎを行う必要はあるが、きっちり3cm幅で苗を植え始めたオート田植え機は、畔が近づくとピッピと音が鳴り、いったん減速して停止。もう一度アクセルペダルを踏みなおすと植え付け部が上がって自動で旋回を始めた。旋回が終わると植え付け部が下りて再び自動運転を再開。直進時もハンドルが常に小刻みに動く様子に、参加者は、「ああいうハンドルの動きは人がやるのと一緒。ちょこちょこ動かさないと真っすぐは進まないものだよね」と話していた。
フルオート田植え機の実演
今回の研修会は、RTKの固定基地局の設置を望む行田市の6法人の希望で実現した。研修会を終えて6法人を代表し、あらい農産の新井健一代表は、「ぜひ、未来を支えるインフラ整備として早急にRTKの固定基地局の設置を検討していただきたい。また、スマート農業の技術をこの地域にあった形で進めていくスマート農業研修会の組織化をJAほくさいを中心に各市、加須農林振興センター等にお願いしたい」と集まった関係者に訴えた。
これを受けて、行田市環境経済部農政課の村田清治課長は、「(ドラマの)下町ロケットで台風の中、稲刈りをするシーンは、すぐそこのほ場で撮影された。行田の農家もその時、実際にメーカーから提供された自動運転の機械を現場で見ており、いち早く取り入れたいという要望は高い。スマート農業に取り組もうというみなさんの熱い思いをもとにスマート農業の研修会組織を作り上げていきたい」と話していた。
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