【 全農酪農体験発表会】静岡県の佐々木さんが最優秀賞2019年9月19日
未来に継ぐ資源循環型酪農-第37回全農酪農経営体験発表会
JA全農は9月13日、第37回全農酪農経営体験発表会を開いた。発表会はJAや県連・県本部が推薦する優秀な酪農家が経営内容や技術、地域との関わりなどを紹介し、その成果を広く共有し、全国の酪農経営の安定と発展に資することが目的。今回は静岡県富士宮市で資源循環型酪農を実践している佐々木剛さん、千尋さん夫婦が最優秀賞を受賞した。
最優秀賞を受賞した佐々木さん家族
◆家族経営の持続を
発表会では主催者を代表して齊藤良樹JA全農常務理事があいさつ。
わが国の酪農は後継者と労働力の確保などの課題があるなか、雌牛の増頭で今年度は4年ぶりに前年を上回る生乳生産量見込みとなっていること、飲用乳価の引き上げなど最近の情勢とともに、TPP11と日EU・EPAの発効などの影響を注視した対策実践や、生乳の共同販売の意義についての理解醸成、消費拡大などの課題を挙げた。そのうえで全国の酪農家の期待に応えるJA全農としての広域需給調整機能の発揮や海外対応、新技術開発などへの取り組みとともに、こうした発表会が全国の酪農家の参考になることへの期待と意義を述べた。
来賓として農水省の渡辺毅畜産部長と(独法)農畜産業振興機構の佐藤一雄理事長があいさつした(それぞれ代理)。渡辺部長は食料・農業・農村基本計画の見直しに合わせて畜産酪農でも「基本計画である『酪肉近』を見直すことになっており、意欲ある生産者と将来にわたって持続的な経営のための対策を検討していく」などの考えを示した。
佐藤理事長は消費者の健康志向などから本格的な生産回復の兆しも見えていることなどを指摘した。
発表者は6人。2回の書類審査と現地調査を経て選ばれた。審査委員長の小林信一日大生物資源学部教授は各地から推薦された経営体をふまえ、家族経営をどう守るか、その支援策が日本の酪農の維持・発展に期待されていると課題を指摘した。
体験発表をしたみなさん
◆放牧主体の酪農
最優秀賞に選ばれたのは「西冨士とともに未来に継ぐ資源循環型酪農を実践-自給飼料生産と牛群改良で日本一をめざす」を発表した静岡県富士宮市の佐々木剛さんと妻の千尋さん。
佐々木さんは発表のなかで動画を使い、牛舎から走り出してくる牛たちの姿を紹介した。放牧主体の酪農を実践している。基盤整備をしていない草地を利用し、小面積牧区に7~8月は暑熱対策として夜間に放牧するなど、毎日4~5時間を放牧している。1頭あたり50aを確保できている。佐々木さんはこれを「都府県型放牧酪農」と位置づけている。これによって周産期病、繁殖障害も防ぎ産乳成績も向上させている。
経営理念は循環型農業。デントコーンと牧草を輪作し280haを受託する飼料コントラクターも設立、粗飼料は5割を自給している。経営は現在、経産牛106頭、未経産牛70頭。両親のほか、従業員も雇用。後継牛は自家生産し育成している。
牛への環境配慮はもちろん、従業員主体で環境改善のための検討会を行うなど、終身雇用できる会社づくりもめざす。
また、子どもたちに良質の牛乳を飲ませたいと、乳質が優良な10人の酪農家で地域の乳業会社を設立した。学校給食への提供により良質な食の提供、酪農への理解づくりなどに貢献している。妻の千尋さんは静岡県農山漁村ときめき女性会員としても活動している。
小林審査委員長は牛にストレスのかからない飼養であることや、自給飼料を増やし乳飼比3割を実現するなど、優れた経営であることや「夫婦ともに地域のリーダー」であることなどが評価されたと述べた。佐々木さんはあいさつで思わず涙、これからも精進を続けますと述べた。
◆家族で酪農を楽しむ
審査員特別賞に選ばれたのは島根県雲南市の板井雄士さんの「地域に信頼・必要とされる酪農経営を目指して」と、北海道美瑛町の(株)ベイリッチランドファーム、浦薫さんの「家族と地域の未来につなげる酪農経営」。 板井さんは兵庫県出身。各地で研修を受けて雲南市で第3者継承で酪農家になった。当初、地域からは農場再開に反対されるも糞尿処理など徹底して環境美化に努めるとともに、自治会活動にも参加。「だんだん応援してくれる人が増えてきた」と話した。新規参入者としての意欲、経営力と地域との関わりなどが評価された。
(写真)審査員特別賞の板井さん
浦さんは3代目として経営を引き継ぎ、法人化することによって子どもたちが未来につなぐ経営を展開してきた。規模拡大のために搾乳ロボットなど最新技術の導入のほか、イヤーコーン生産など国産の濃厚自給飼料生産にも先駆的に取り組んでいる。長男が就農、ほかの子どもたちも就農を希望しているこれまでの取り組みが評価された。
(写真)審査員特別賞の浦さん
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