地域団体商標「みっかび牛」を支える「三ヶ日みかん」2019年10月8日
「三ヶ日みかん」で知られる静岡県浜松市北区三ヶ日町。そこで今年2月に「みっかび牛」が地域団体商標を取得した。
三ヶ日で生産された肉牛で、三ヶ日の肥育牛農家は「JAみっかび牛志会」に入ればこのブランドを使える。
「牛志会」は肉牛のブランド化だけではなく、地域全体を活性化させるという「志」をもって取り組んでいる(JAみっかび・畜産センター三ヶ日の田嶋秀俊氏)。
三ヶ日みかんの皮を食べて育ったみっかび牛
静岡県は、ホルスタイン去勢牛で有名な産地。肥育が難しいホルスタイン去勢牛に肉をつける高度な技術を持つ肥育農家が多い。三ヶ日での肥育は、1967年に大谷でホルスタイン種を導入したのが始まり。当時、若いミカン農家の後継者が参入し、静岡県下でトップレベルの規模となったこともある。現在の肉牛は「黒毛和牛」や乳牛と掛け合わせた「F1交雑種」が主力で、今日でも肥育牛頭数は県内の5分の1を占める産地だ。
「みっかび牛」の地域団体認証の取得は、まがい物が出回ることを抑止するためで、ブランドを守ることが目的だが、「ブランドは、他と違う物語をつくっていかなければ消費者に響かない」(畜産センター三ヶ日の田嶋さん)。
「みっかび牛」は、「三ヶ日みかん」のブランドを活用している。「みっかび牛」には、同JAが生産するミカンの加工品の製造過程で廃棄されるミカンの皮を乾燥・粉末化した餌を、18ヵ月齢以降の牛に与える。1回当たり50gを基準に、10?15日の間隔で出荷間際まで給餌している。肥育中期・後期に不足しがちなビタミンの補給とともに、ミカンの香りが牛の食欲を増進し、特に生体重の維持が難しい肥育後期の食欲低下を抑制する効果があるという。静岡県農林技術研究所が調べたところ、ミカンの皮を食べさせた牛の脂肪から抗酸化作用があるβ?クリプトキサンチンが検出された。田嶋さんは、「肉屋さんで肉の日持ちが少しよくなるかもしれない」と笑う。
◆JAみっかびが核となり循環型農業確立
しかし、このミカンの皮の乾燥・粉末に至るまでの開発過程で7?8年かかっている。たいへんな苦労と諦めない努力があって今日があることを田嶋さんは教えてくれた。
一番始めは青島みかんジュースの絞りかすを天日干しで乾燥することから始めた。その後、業者を変えながら「青島温州ミカン」ジュースの絞りかすを乾燥機で乾燥させるやり方を続けたが、絞りかすは水分が80%を超えることから乾燥機の中で焦げてしまうなどの失敗を重ねた。
最終的に、ミカンの瓶詰めをつくるのにミカンの皮をむく三重県の業者にたどり着いた。他の産地のミカンが混ざらないように、三ヶ日みかんを加工する日は他の産地のミカンは工場に入れないようにしてもらった。そして三ヶ日みかんに限定したミカンの皮を使った「ミカンの皮の乾燥・粉末」が完成した。
三ヶ日町柑橘出荷組合から「三ヶ日みかん」が加工業者に出荷され、ミカンの皮の乾燥・粉末を農協が買い取り、それを「みっかび牛」肥育農家が購入する。そして牛のフンは、三ヶ日みかんの土づくりに欠かせない良質な堆肥になる。
(写真)三ヶ日みかんの皮のフレーク
現在4戸で1100頭を肥育している「牛志会」のホームページには、「自然の摂理に基づいた循環型農業で、安全な食べ物を作っています」と書かれている。
2010年11月に結成された「JAみっかび牛志会」の農家は、上質な肉質と脂質を兼ね備えた最高級の「黒毛和種」とともに、ホルスタインに黒毛和種を掛け合わせた「交雑種」を肥育している。常時食べる牛肉は「交雑種」、贈答用や特別の日には「黒毛和種」と消費者の使い分けを想定している。「みっかび牛」と銘打てる牛は、厳選して導入した子牛を、ストレスを与えないよう衛生管理を徹底した環境の中で、気を配りながら、丹念に育てあげた牛のみだ。
◆目的は地域を活性化すること
牛志会はイベントでみっかび牛の牛串焼きを販売し知名度アップに取り組んでいるが、2014年には地元の三ヶ日中学校の生徒が「三ヶ日牛バーガー」を開発し、町内7店舗のハンバーガー店で販売が行われるなど「ご当地料理」として浸透している。
JAみっかびの畜産センター三ヶ日は、素牛(もとうし)の買付から餌の供給など牛志会の取り組みを支援してきた。同センターの田嶋さんは、こうした取り組みが他の肥育牛農家にも拡大し、三ヶ日町の観光資源となってほしいという。単に「みっかび牛」のブランド認知が高まるだけでなく、さらに「三ヶ日町に来てくれるお客さんが観光をしてくれ、食事をしてもらうことで地域が活性化していくことが目的です」と抱負を語ってくれた。
(写真)食欲をそそる「みっかび牛」
牛志会メンバーによる「みっかび牛串焼き」販売
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