【第4回全国集落営農サミット】集落営農の広域化・連携・再編へ 経営の持続へ課題を整理(上)2019年12月20日
集落営農は地域農業の担い手として重要な役割を発揮しているが、構成員の高齢化とオペレーター不足や、米をはじめとする農業政策の変化などに直面している。こうした課題を整理し、継続的な経営発展につなげていく取り組みが求められていることから、全国の関係者で実践交流を行い知見を広げようとJA全中は12月9日、10日の2日間、東京都内で「集落営農の課題と広域化・連携・再編」をテーマに第4回全国集落営農サミットを開いたが、前回に引き続き、その講演要旨(上)と事例報告(下)のポイントを紹介する。
集落営農のこれからを真剣に検討
【講演要旨】
◆人・農地プランの実質化
農水省経営政策課・依田學課長
「人・農地プラン」は今後2年程度で全国の8割の集落で「実質化」してもらうことにしている。要件は(1)集落内の農地の少なくとも過半について農業者年齢と後継者の有無をアンケートで確認、(2②結果を地図化し、とくに5年から10年後に後継者がいない農地を「見える化」、(3)地域の中心となる経営体への農地の集約化に関する将来方針を作成する、だ。
そのうえで、後継者のいない農地をだれがどう引き受けるかを考えることが重要になる。地域外の認定農業者の場合もあるが、基本は集落だとすれば、集落営農の役割は今後も大きい。集落営農で新規就農者を受け入れ、育成していくことも必要になるのではないか。
また、JAの生産部会にも期待したい。果樹などについては集落を超えて広域的に農地や後継者の状況を検証して将来の方針を示すことも人・農地プランの実質化と同じだと考えている。来年度は実質化の正念場。集落を支えるのはJAしかない。組織あげて取り組んでほしい。
◆Z―GISの活用
JA全農スマート農業推進室・大武勇氏
Z―GISは、ほ場の位置情報とエクセルデータを紐付けて管理するシステムで、普段からエクセルでほ場ごとに栽培管理などをしていれば、簡単に地図に記録することができる。また地図を印刷することができるのも大きな特徴だ。データはクラウド上で保管するため複数のスタッフがPC、スマホ、タブレットなどの端末で共有できる。
活用法では、収量を地図で表示することで、収量の良いほ場の管理手法の検証、悪いほ場の改善策協議などを構成員で共有するなどの例もある。
気象情報を新機能として追加した。風向・風速などが予測でき、農薬散布など適切な作業日を選定できる。積算気温も示すことができるため、出穂日から何日目が収穫時期となるかの目安を知ることもできる。
ドローンの利用や土壌分析データの活用などスマート農業のキーシステムとしてZ―GISを位置づけたい。
◆広域連携と税務対応
農業経営コンサルタント・森剛一税理士
集落営農の継続・発展のためのお勧めは「法人2階建て方式」だ。1階部分を農業者・地権者による非営利の一般社団法人で地域管理資源法人を設立。1階部分で地域資源管理や飯米づくり、利用集積などを行い日本型直接支払いや地域集積協力金などを受け取る。それらの交付金を活動に対する出役日当として支払うが、一社であれば給与所得となり控除もある。
同時に、1階が出資した2階組織は株式会社等の農地所有適格法人とする。2階は転作を行い水田活用の直接支払交付金を受け取る。これで農業経営基盤強化準備金の対象となる。
2023年から売手が買手に正確な税率などを伝える適格請求書保存方式(インボイス方式)が導入される。これがないと、仕入税額控除を受けられない。インボイスは登録を受けた課税事業者のみ交付可能だ。集落営農の従事分量配当を課税仕入とできることは農事組合法人のメリットとされてきた。しかし集落営農は、構成員の多くが免税事業者であるため、インボイス制度導入後、課税仕入額が少なくなり、還付申告から納税申告となる可能性がある。
【第4回全国集落営農サミット】集落営農の広域化・連携・再編へ 経営の持続へ課題を整理(下)
(関連記事)
・集落営農の課題を探り 広域化・連携・再編へ 第4回全国集落営農サミット(2019.12.17)
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