体験型農園でストレス軽減 初の科学的実証-全中と順天堂大2020年7月15日
JA全中と順天堂大学は体験型農園のストレス軽減に効果があることを初めて科学的に実証し、7月10日に共同記者会見で発表した。
左からJA全中の須藤副会長理事、順天堂の水嶋教授、NPO法人農園協会の加藤理事長
JA全中は順天堂大学大学院と共同で2018年11月にNPO法人農園協会の協力を得て体験型農園での農作業がどのような影響を与えるか調査を実施した。
(関連記事)農作業でストレス軽減 実証調査を実施-JA全中
練馬区の体験型農園「百匁の里」の利用者で研究に同意を得られた40人(男性23人、女性17人、20~70歳代、平均53歳)を対象に行った。当日は収穫作業の前後に唾液成分(オキシトシン、αアミラーゼ、コルチゾール、クロモグラニンA)を測定した。唾液成分はELISA法で解析した。また、気分アンケートも実施した。
解析の結果、ストレスにより増加するホルモンであるコルチゾール、クロモグラニンAは減少し、幸福度を表わすホルモンであるオキシトシンが男女差と個人差はあったものの、平均値として全体で増加した。また、ストレスで増加する酵素成分であるαアミラーゼも全体では減少が確認された。
気分アンケートでは怒り、混乱、抑うつ、疲労、緊張などのネガティブ因子は低下した。
こうした解析から体験型農園での農作業にはストレス軽減効果があることがホルモンの増減というかたちで定量的に示された。
JAグループでは、都市農業の振興などの観点から、種苗や農機具など農園側が準備し、農園主などの指導のもとで栽培できる体験型農園の普及を進めており、JA全中によると県庁所在地を管内とする都市的JAの6割程度で体験農園を設置しているという。利用者からは「ストレス解消になる」との声が寄せられているが、今回の研究はそれを初めて科学的に実証したことになる。
会見で須藤正敏JA全中副会長理事は「この研究成果をもとに、体験型農園の普及をいっそう進めていく。1人でも多くの人に農業を体験してもらい、農業や食を身近に感じてもらい国民の理解醸成が進むことに期待する」と話した。
順天堂大学大学院緩和医療学研究室の水嶋章郎教授は「現代社会はストレスがあふれ、軽減する手段が必要になっている。農が持つ癒し効果、アグリヒーリングや農医福連携は時代にマッチしたキーワードになる。農業体験は自然から得られる香りなども含めて総合的なもの」と農業体験の意義を強調した。
新型コロナウイルスの感染拡大で、業務用需要が減少して打撃を受ける一方、地産地消の重要性や自分の手で農作物を作ることへの関心も高まっている。
JAグループは体験型農園のストレス軽減効果が科学的に証明されたことをふまえ、一層の利用者の拡大に取り組むとともに、従業員のストレスを軽減など健康経営に関心を持つ企業との連携など「農地を農地として利用していくチャンス」(JA全中肱岡弘典常務)だとして「農業の応援団づくり」を進めていく。順天堂大学との連携も深めていく方針だ。
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