キュウリ栽培施設「ゆめファーム」 高収益モデル普及めざす2021年1月20日
佐賀市でキュウリの大規模栽培を行うJA全農の大規模栽培実証施設「ゆめファーム全農SAGA」で、運営開始から1年となる昨年12月までのキュウリ収量が全国平均の約4倍の10aあたり55.6tを達成した。今回の成功を基に、農家の手取り向上に向けた高収益モデルの普及を図る考えだ。
養液区でのキュウリ栽培の様子
同施設は、施設園芸における大規模多収技術の確立・普及、人材育成を目的としたプロジェクトとして、2019年12月に運営を開始。JA全農は施設園芸における大規模多収技術の確立・普及、人材育成を目的としたプロジェクトとして、高度施設園芸の実証農場「ゆめファーム全農」の運営を2014年に「ゆめファーム全農とちぎ」(栃木県栃木市)でトマト、2017年から「ゆめファーム全農こうち」(高知県安芸市)でナスの栽培をスタートした。2019年には第3弾として、キュウリの大規模多収栽培に向けた「ゆめファーム全農SAGA」の運営を開始。JAさが、佐賀市と包括連携協定を締結し運営している。農業経験を問わず高収益を実現できる経営モデルの構築を目標に掲げ、地元の指導生産者のサポートを受けながら、作業従事者のほぼ全員が農業未経験者という状況で施設を稼働している。
栽培は土耕と養液の両方を採用。特に養液栽培システムは、世界最先端のオランダ栽培技術を基に開発したロックウール培地や国内では珍しいハイワイヤー栽培で取り入れたほか、ハウスに隣接する佐賀市清掃工場から供給される二酸化炭素を利用したスマート農業技術等を取り入れ、栽培実証に取り組んできた。
目標収量は全国平均(約14t/10a)の3倍以上にあたる45~50t/10aに設定。昨年12月16日までに、土耕区(栽培面積42.5a)と養液区(同44a)で、それぞれの目標収量を大きく超える収量を達成した。これにより、土耕区と養液区を合わせた施設全体の年間出荷量は481.5tとなり、当初計画の411.3tを上回った。これを10aあたりの収量に換算すると、JA全農による関係者への聞き取りでは国内最高記録の収量となる。
多収を実現できた主な理由は、栽培技術のソフト面と施設資材のハード面を組み合わせ、経験に頼らず多収を収穫できる独自の生産パッケージで行ったことが大きい。ハウスは全面両天窓で軒高5mまで伸ばし、柱のスパンを広くして光合成を促す環境を整えた。また、ほとんどの部材がアルミ製で屋根全体の軽量化を実現した。温湿度や二酸化酸素濃度を自動コントロールする環境制御機器を導入。このシステムには潅水装置の取り扱いもあり、環境・潅水制御の両面で施設管理を実施している。茎の太さや葉の大きさや肥培などをデータ化し、栽培管理の改善を進めてきた。その結果、冬春、夏秋と年に2作の栽培体制で土耕と養液の両方で収量を大幅に伸ばすことに成功した。
JA全農は「運用1年目で収量は高水準を示したが、収支バランスを見極め安定した収益が見込める営農モデルを確立することが重要となる。手取り最大化に向けた高収益モデルの普及を目指し、2年目以降もこれまで培った大規模多収技術で生産基盤の維持・拡大に注力していく」(耕種総合対策部高度施設園芸推進室)と話している。
温室の外観
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