営農指導はJAの根幹 詳報:第5回JA営農指導実践全国大会(上)-JA全中2021年3月11日
JA全中は2月19日、第5回JA営農指導実践全国大会を開いた。特に優れた産地振興や技術普及等に取り組んだ営農指導業務を担当する職員を表彰し、その取り組みを広く紹介することを目的に全国8地区代表による取り組み発表が行われ、今回はJA山形おきたまの営農経済部園芸販売課の柴田啓人士さんが最優秀賞に選ばれた。
コロナ禍のため今年は地元JA等からオンラインで参加するウェブ開催となった。
主催者の中家徹JA全中代表理事会長は新型コロナ感染症の拡大で国民の間に食料確保への関心が高まっているなか、国民が食べるものは国内で作るとする「国消国産」の重要性を発信していきたいと話すとともに、マーケットニーズに事業伸長の契機となる動きも見られると指摘して環境変化に応じたJAへの事業が求められていると話した。そのうえで「組合員がJAにもっとも期待することは営農指導。JA経営の根幹も営農経済事業だ」と現場の実践に期待を寄せた。
また、大会での発表がそれぞれの現場で課題解決の参考となり「全国各地で創意工夫に満ちた取り組みが実践されることで農業者の所得増大、農業生産の拡大が必ずや実現すると確信している」と述べた。
【最優秀賞】
若手の思いが結実

園芸事業における「おきたまブランドの確立と産地発展」のために~生産者手取りの最大化をめざして
JA山形おきたまは、主力のブドウ「デラウェア」を始め園芸品の品質格差や販売価格の伸び悩み、さらに施設の老朽化によるコスト増大などに直面するなかで(1)おきたま統一共選の実施(2)出荷施設の再編による集出荷の効率化(3)JAオリジナル商品の開発、の三つを戦略とする「園芸事業改革プロジェクト」を2015(平成27)年に立ち上げた。
それまで生産振興は各地域が独自に取り組み、出荷規格も長年のこだわりで設定するなど、ばらばらな取り組みが多く、それが販売チャンスロスにもつながっていた。統一共選の実現に向けてJA主導ではなく生産者自らが出荷基準をつくり上げるとともに、より専門性を持った職員がほ場に出向く営農指導体制を導入したほか、生産組織役員の園地巡回で地域間相互の栽培技術のレベルアップにつなげた。
SNSを活用した栽培管理情報の徹底した発信も行い若手職員の育成にもつながった。こうした取り組みに基づき、2018(平成30)年から統一共選を開始。取引先市場が集約され、それまでの46社が31社となった。
出荷施設の再編は広域集出荷施設の新設と既存集荷場の一部廃止を提起した。生産者と徹底して話し合い、「廃止されては不便になる」、「今までの地域ブランドはどうなるのか」という反対意見にも「おきたまを変えたい」との信念を持ち2年100回以上の会議で繰り返し説明した。
決め手となったのは若手生産者の意見。「年配生産者がリタイアし生産量が減少すれば選果料も上がりやっていけなくなる。JAの提案を受け入れたい」。これで大きく前進し、新たなシンボルとなる統一デザインの出荷段ボールでのPR強化や、新出荷施設での需要に応じた荷姿へのパッケージ化などで販売の幅も広がった。
「デラウェア」のさらなるブランド化に向け、地元有識者、シェフなどと連携した風味を生かしたJAオリジナルの食品や飲料を開発、販売も実践。こうした取り組みによって園芸品目の販売価格は6%~26%上昇し、また、リンゴで最大1玉5・5円の選果利用料を削減した。選果施設の事業損益も149%増加した。JAへの結集で「量は力、品質は信頼」が実現できる。
【審査員特別賞】
意欲と信頼が発展の鍵

琴浦ブロッコリーの躍進~Pioneering a new world
2007(平成19)年にJA鳥取中央琴浦営農センター管内で琴浦ブロッコリー生産部を設立、生産者80戸、栽培面積58haでスタートした。
2010(平成22)年にブラウンビーズ(生理障害)が大量発生したことを契機に、鳥取県初の発泡氷詰め出荷を実現し、琴浦ブランドを確立。栽培拡大に向けて機械化体系作りや予冷庫の導入などを提案した。
行政、JA、生産者で産地計画を策定し、順次、乗用管理機や全自動移植機などを導入していった。機械化体系の実現で10aあたり約10時間の作業時間短縮に成功した。また、予冷庫の導入によって、早朝からの収穫、出荷調整作業を前日の収穫、翌日の出荷へと働き方改善につなげた。生産者には子育て世代も多く、家族と過ごす時間を増やすことができたと評価され、産地の常識を変えた。
その結果、2012(平成24)年の100haが29年には141haへと拡大したが、出荷数量は激減した。理由は2年続けての降雨と日照不足。生産者の意欲は低下し、さらに新規病害、黒すす病が発生していた。
それらを解決するため自らブロッコリーを栽培し防除データを収集し、根拠のしっかりした防除暦を作成。それをもとに営農指導の強化に取り組み、生育状況や防除ポイントなどをファクスで10日ごとに発信。またSNSも活用して写真で生育状況を伝えることで、分かりやすくタイムリーに状況を共有できるようになった。こうした取り組みで台風や長雨時の緊急防除の徹底が可能になった。
産地の活性化には若い力が必須と考え2014(平成26)年に青年部を設立。20(令和2)年で20人の部員がいる。栽培勉強会や、消費者や市場との交流のための試食販売会、作業日誌をデータ化して経営分析する勉強会などの活動をしている。また、新品種の選定を青年部に任せ試験栽培にも取り組んでもらい、基礎知識を得る機会にもしている。
常に活動を提案したことによってJAへの信頼が増し、目標とした販売額4億円突破を2019(令和元)年に達成した。JA管内で200haの栽培面積を500haに拡大するプロジェクトも始動。琴浦管内がJA全体を動かした。産地維持発展の鍵は営農指導員。生産者とともに成長し次世代にバトンタッチしたい。
以下 詳報:第5回JA営農指導実践全国大会(下)に続く
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