農業 もっと効率的に-JA全農とBASFがオンラインセミナー2021年4月5日
JA全農とBASFデジタルファーミング社は4月1日から「水稲」と「大豆」を対象にAIを活用した栽培管理システム「ザルビオフィールドマネージャー」のサービスを開始した。サービス開始を機に4月1日、オンラインセミナー「AIが圃場の将来を予測? スマート農業を実現する栽培管理支援システム ザルビオ フィールドマネージャーとは?」を開いた。
右から山田氏、小宮山氏、関根氏、野田氏
ザルビオフィールドマネージャーは、高精度な予測を実現するために水稲などの生育に関する国内外のデータや学術論文を読み込ませたAIを搭載、これによって実際の気象データなどをもとに学習して予測し、必要な防除や施肥などの作業とその時期などを示すシステムだ。海外では2017年にサービスが開始され、現在16カ国500万ha以上農地で利用されている。セミナーではドイツやポーランドの小麦農家などが"畑に行かずに"栽培状況などが把握でき、効率的な作業を実現しているいった姿も映像で紹介された。
JA全農の久保省三常務は日本では過去5年で農家数が30万減少する一方、法人が1000経営体増えており農業構造の変化が加速度的に進んでいくが、農地はなかなか担い手に集約されておらず小規模に分散しているのが実態であり「これを解決しなければさらなる発展はない」と強調。全農は今年度の事業計画で生産基盤の強化を最重点課題とし、そのなかでICTなど先端技術の活用と他企業とのアライアンスに積極的に取り組むことにしており、ザルビオフィールドマネージャーはその柱であることなどを紹介した。
セミナーで機能と可能性について関根真樹BASFジャパン(株)アグロソリューション事業部マーケティング部デジタルソリューションマネジャーが説明した。
関根氏は農業に求められている世界的な課題は生産性向上だけでなく、環境への配慮、気候変動への対応など持続可能性であるとして、ザルビオフィールドマネージャーはそうした課題に応え農業生産を最適化できるツールだとした。具体的にはAIの活用によるほ場ごとの分析。それによって可変散布、可変施肥が可能になる。また、農場全体を俯瞰的にデータで管理する一方、ほ場で肥培管理を担当する作業者には個々の作業を具体的に示して割り振る機能も持つことなども説明した。
JA全農耕種総合対策部スマート農業推進課の小宮山鉄兵氏は全農のスマート農業戦略について解説した。
JAグループの機能として新技術の開発から実証、実用化まで一貫して行うことができる体制があることや、今後の農業生産を担う青年農業者と意見交換する研究会も設置するなど「農業者目線のスマート農業の推進」に力を推進し、それぞれの生産現場の目的にあったビジョンの提案を行っている。
また、「ほ場情報のデジタル化は農業DX(デジタルトランスフォーメーション)の第一歩」との考えで営農管理支援システム「Z-GIS」を推進。ほ場の情報を地図と結びつけ、生産履歴などを「見える化」できるシステムだが、今回、これとザルビオフィールドマネージャーが連携する。
これによってほ場ごとに推奨される防除などの作業を地図上に見える化することもできる。可変散布などの実装に向けては農機部門との連携も進めていく。「スマート農業によって生産基盤の維持、拡大を図ることが目的」と強調した。
セミナーではザルビオフィールドマネージャーを試験的に活用した生産者へのインタビューをもとにパネルディスカッションを行った。
生産者からは気象状況もほ場ごとに分析し、風、雨なども予測して最適な散布時期を提示するなどの機能の有用性を評価するとともに、将来に向けては最大の収量が得られる作付け時期の予想など収量シミュレーションへの期待も語られた。生産者はいずれも大規模化しており、2人で50haを管理していたり、1人で200枚のほ場を持つなどが実態で効率化への切実な期待が語られた。
関根氏は「春先に長期の生育シミュレーションができれば非常に大きなメリット。開発努力続けていきたい」と話したほか、野田信介BASFジャパン(株)アグロソリューション事業部マーケティング部部長は、生産者から「寒冷地の直播栽培の初期成育予測」などすでに多くの期待が寄せられて日本の特徴や課題に合わせた研究を進めていくと話した。
また、土壌分析と生育状況分析に基づく可変施肥による収量の安定化もスマート農業で実現したいとの声もあった。
山田正和JA全農耕種資材部次長は可変散布は世界では広まっており「
可変散布、セクションコントロールができる農業機械の開発に日本でも拍車がかかると思。散布マップデータと日本の農業機械との適合性を農機メーカーと協力して確認している。現地でも実証を進めていきたい」と述べた。
そのほかZ-GISを利用している生産者からは「ザルビオとの連携でZ-GISの価値を高め生産性向上につながる」との指摘が出るなど、さまざまシステムの連携を農業現場に取り込んでいくことが重要で「データの囲い込みから、データの標準化と連携へ転換することが求められている」との考えも強調された。
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