JAグループ 新たなスタート 第29回JA全国大会2021年11月2日
第29回JA全国大会は「持続可能な農業・地域共生の未来づくり」を決議した。「持続可能な農業の実現」、「豊かで暮らしやすい地域共生社会の実現」、「協同組合としての役割発揮」を次の10年に向かって挑戦する「めざす姿」として提起した。
意見表明するJA栃木農協青年部連盟の飯田勝市委員長
大会終了後、中家徹JA全中会長は「採択した議案についてはみなさんで共有できた。令和初めての全国大会で農協改革の5年後見直しも終わったなど、新たなスタート。県域やJAで実態にあったかたちで考え方を整理してもらい、早期に決議の実践に努めてもらいたい」と記者団に述べた。
大会にはICAのアリエル・グアルコ会長がビデオメッセージを寄せ、JAグループが持続可能な未来づくりに取り組むことを高く評価し、協同組合のアイデンティティを広げることが大事だと呼びかけた。とくに農業協同組合は、生産者だけでなく消費者のニーズに応へ「都市と農村の協同組合精神を広げる」と期待を寄せた。
JCA代表理事副会長の土屋敏夫日本生協連代表理事会長はJAグループが掲げた「持続可能な農業・地域共生の未来づくり」は「すべての協同組合にとって重要なテーマ。SDGsが掲げる課題についても共益の追求が公益に貢献する観点から事業を通じて協同組合全体で達成していきたい」とあいさつした。
第29回大会について金原壽秀大会運営委員長(JA全中副会長)が説明。昨年11月のJA全中理事会で全国大会議案の「検討の進め方」を決定し、全中のJA改革推進委員会を議案検討の機関とするよう要領を改定し審議を開始した。その後、今年1月には地区別のJA組合長の意見交換などの場を経て6月に組織決定し、8月までの2か月で組織協議を行った。組織協議では1200件を超える意見が出て10月7日に議案を決定した。
議長には小野寺敬作JA岩手中央会代表理事会長が選出。議案の説明はJA全中に馬場利彦専務理事が行った。
意見表明したJA栃木農協青年部連盟の飯田勝市委員長は米30ha、大麦18haを父と2人で経営、就農19年目。高齢化が進み毎年のように農地を引き受けてほしいという状況になっているが、労力に限界があることから省力化を目的に乾田直播に取り組んでいる。
現在では移植よりも単収を上げているが、取り組みにあたってもっとも頼りになったのはJAの営農指導員だった。失敗を繰り返しながら改良し、不安が大きいが新しいことに挑戦する組合員のために「試行錯誤しながら寄り添ってくれるJAの存在は心づよかった」と話した。地域の特性や天候を知り尽くしたJAの営農指導員だからこそ、それが可能で地域に新たな技術を広げていくことができる。
JA全青協では大会議案への意見集約を行ったが、営農指導体制の充実、人づくりに多くの意見が寄せられたという。JAには計画的な人材育成への取り組み、総合的なサポート体制の構築などを求めた。
みどり戦略については、30年後にどこまで実現するか疑問だが、持続可能な農業と地域を実現するためにも自分ができる農業から取り組む、と話した。「JAと対話し新しい未来を切り開いていきたい。今後のJAを担うのは青年農業者。JAに関わる権利と義務がある。今後3年のJAの歩む道は大きな影響を与えるターニングポイント。青年層の意思反映を」などと語った。
沖縄県農協女性部の宮城園子会長は、県内の子どもたちを対象にした食農教育活動、高齢者福祉活動、農産加工品づくり、組合員加入運動など幅広いの取り組みを紹介した。大会議案では地域農業の応援団のすそ野を広げることが提起されているが、「自分たちの活動を広く知らせることが仲間づくりにつながる」と述べた。
また、女性ならではの視点は生産と生活で不可欠だが、それをけん引するJAは少なく女性活躍の場が少ないのが現状で、女性が働きやすい環境づくりが全産業に共通で、とくに農業では次世代の女性リーダーづくりが急務だと強調した。
JA新みやぎの大坪輝夫代表理事組合長は合併3年目のJAとしての取り組みを話した。合併によって広範な地域からの集まる大型の直売所を仙台市内に設置し消費者からも好評を得ている。地域農業振興積立金を原資とする幅広い用途に対応できる対策も実施し、農業資材や新規就農者の支援などを実施している。
国民理解に向けた広報体制にも力を入れて情報連絡員を60名に増やし地域農業の発信を行っている。「組合員に合併効果を実感してもらえる取り組みを進めていく」として来年度から地区本部制から事業本部制に転換するという。「痛みをともなうこともあるが、合併成果の最大化こそが究極の自己改革」と話した。
JAおちいまばりの黒川俊継代表理事理事長は食堂や体験農園なども併設した多様な形態の直売所の運営に挑戦していることなどを紹介し、「食と農を通じて地域との接点の拡充」に取り組んでいる。また、金融機能と直売部門なども持つ多機能店舗も新設した。JA女子大学を開設し女性のJA参画にも力を入れている。「学びの場の提供が組合員の主体性を生んだ」。准組合員を経営管理委員に登用している。
力を入れているのは人づくり。「人が拠点となって組合員と温かくつきあう。これを将来も守り抜くことで地域と農業に貢献していきたい」と述べた。
閉会のあいさつで菅野孝志JA全中副会長は「新たな3ヵ年のスタートを確認した。組合員、地域、日本の輝ける社会に向けJAは実践を」と呼びかけた。
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