農業・地域の新時代へ多様なチャレンジ-JAアクセラレーター第3期2021年11月15日
一般社団法人AgVenture Labは、11月11日にJAアクセラレーター第3期の成果発表会を開催した。応募総数211件から採択されたスタートアップ9社が成果を発表した。
JAアクセラレーターは、革新的なアイデアや技術を持ったスタートアップ企業を選抜して、短期間で集中的に成長を支援して新ビジネスやサービス開発につなげるためのプログラムでJA全農と農林中央金庫の職員が6か月間、伴走者としてさまざまに支援する。
第3期は211社の応募があり9社が採用された。これまでに応募したスタートアップ企業は600社近くとなり、JAグループと連携し、食と農と地域の課題解決に関心の高い次世代が多いことを示す。
(株)Ciamoは古賀碧さんが2018年に設立。地元熊本の焼酎粕を利用した微生物培養技術をもとに光合成細菌を研究、開発した。稲作やレンコン、果菜類など12か所で実証試験を実施した。農薬や化学肥料を減らすことができることや、水産物の病気耐性を高めることが期待されている。持続可能な農業と水産業に貢献したいと話す。
古賀碧代表
長野県上田市で作り手、産地の想いやストーリーを掲載したカード式のギフトカタログを提供する事業を展開する(株)地元カンパニー。JAグループのネットワークを駆使して、JAや生産者から野菜や畜産物などをギフトカタログへ新規出品することを実現した。全国各地を網羅したJA版ギフトカタログの構想を検討している。児玉光史代表取締役は「農業者の思いを消費者が評価する。価値観が変わってきた」とギフトカタログの可能性を語る。
児玉光史代表取締役
中山間地域でドローンによる社会インフラづくりに取り組んでいるのは(株)エアロネクスト。山梨県小菅村で実証実験を行っており、管内JAとドローンの活用に向けて意見交換、わさびの集荷をドローンで行い、東京・新宿まで貨客混載で運びマルシェで販売することなどに取り組んだ。「新しい空のインフラづくりを実現したい」と代表の近藤建斗さん。
近藤建斗代表
KAERU(株)は認知機能の低下をサポートする買い物アシスタントアプリを開発した。買い物メモや見守り機能などで「誰もが日常の買い物を楽しんで続けられる世の中にしたい」と岡田知拓代表取締役は話す。JAはだの女性部で体験会も実施した。高齢化する地域に向けたサービス提供を実現していく。
岡田知拓代表取締役
EF Polymer Private Limitedは、有機残渣を原料とした完全オーガニックの超吸収ポリマーを製造している。土壌に入れると保水力と液肥保持力が高まり、節水と肥料削減が可能となる。約6か月で完全生分解。インドで製造し世界への普及をめざす。今回は北海道から沖縄まで条件の違う6地域で実証しコメの収穫量増などを確認できたという。
ナラヤン・ラル・ガルジュール代表
(株)MISOVATIONは「味噌汁で世界の予防医療にイノベーションを起こす」を掲げ、完全食味噌汁を開発。JAや生産者とつながりを機に各地の野菜を活用していく。クラウドファンディングで先行販売した「完全食豚汁」は応援購入額187万円を達成。すべての原材料を国産化することも目標だ。
斉藤悠斗代表取締役
エンゲート(株)はスポーツ選手を応援するギフティングサービス。デジタルギフトを贈ることで直接応援ができ、チームや選手からはお返しとしてメッセージやサイン入りグッズを贈ることができる。JAグループもスポンサーチームがあることから、地域のチームと特産物を組み合わせたプロモーションモデルの構築を図る。
田村憲史郎代表
東京ロボティクス(株)は早大発のロボットベンチャー。今回のアクセラレーターの応募では、選果場で活用する人型ロボットの開発をめざす。現場を見て相談の上、荷受けの際や箱詰め商品のコンベア載せをするロボットを開発した。JAさがみの選果場で実証試験を行った。坂本義弘代表取締役は「最先端ロボットで人手不足から農業を守る」と話す。
坂本義弘代表取締役
(株)事業革新パートナーズは間伐材や廃材に含まれるヘミセルロースを使ったバイオプラスチックの開発・製造に世界で初めて成功した。原料となる残渣を探すため、全国のJAや漁協、森林組合から残渣を取り寄せて分析した結果、もみ殻、そば殻などの廃棄物がプラスチック樹脂製作に向いていることが分かった。これは生分解性と加工のしやすさ、透明性に強みを持つ。もみ殻がプラスチックの材料になるなど、生活を変えていくことができる」と茄子川仁代表は話す。
茄子川仁代表
JA全農の野口栄代表理事理事長は、スタートアップ企業が農業生産の効率化だけでなく、地域づくり、福祉、地球環境問題や、JAとスポーツといった幅広い領域で成果を挙げていることを評価し、今後の実現に期待を寄せた。
野口理事長
閉会のあいさつで農林中央金庫の奥和登理事長は今後の継続が重要であり、参加者とテーマが多様化するなかから、従来の経済性だけではない新しい豊かさを追求することも求められているなどと話した。
奥理事長
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