土の力が産地の信頼高める-全国土づくり大会2021 JA全農2021年12月3日
JA全農が12月2日に開いた「全国土づくり大会2021」では優秀賞に選ばれた6JAが事例発表した。事例を共有し全国で横展開することが期待される。
○JA新すながわ(北海道)=「ゆめぴりかの里」-すべては美味しさのために

JA新すながわでは高品質、良食味生産をめざし水稲作付者の約8割の121名が「ゆめぴりか」生産協議会に所属、全戸で土壌分析と施肥面談、講習会も開いている。
土壌分析をもとに生産者が納得できる施肥計画を作成している。管内の土壌はケイ酸含有量が少なく、灌漑水にも少ないため、ケイ酸資材の施用を推奨している。幼穂形成期7日後頃の追肥も推奨し実施率は特別栽培で95%以上。JA独自の栽培カレンダーも作成している。
「ゆめぴりか」の種子は道内で品質等の実績で配分されており、同JAは道内でトップレベルとなった。
雪を活用した低温倉庫も稼働、環境保全型農業の取り組みをSNSで発信している。同JA産のゆめぴりかは全国300店舗で販売。室井文博米穀畜産課長は「ゆめぴりかの里から元気を届けていきたい」と話した。
○JA新いわて(岩手県)=てんろ石灰を用いたキャベツ栽培

同JAは夏場のキャベツ「いわて春みどり」オリジナルブランド化に取り組む。課題は根こぶ病の深刻化。対策として、実証圃場でてんろ石灰散布による土壌phの改善に取り組んだ。その実績をもとに全キャベツ圃場の土壌診断を実施し、土色、リン酸吸収係数など土壌の性格をもとにタイプを分け、それぞれどれだけの石灰散布が必要かを示した。
PHが改善し根こぶ病の発生はほとんどみられず、8月、9月の出荷も安定した。全面土壌散布だけではなく、育苗用培土へ混和する方法も確立しつつあるという。てんろ石灰散布は手間が増えるが所得向上には欠かせない。土壌診断とセットで散布量を決定し、JAが長期的な散布計画も策定する。
管内には大型の畜産農家も多く、たい肥を使用した循環型農業にも取り組み、化学肥料や農薬の使用削減も可能となり「農家所得の向上と持続可能な農業への取り組みにもつながっている」と米穀園芸課の幅一也課長。専用ドレッシングやソフトクリームなど「春みどり関連商品」も開発し、消費者に積極的に情報発信もしている。
○JA市原市(千葉県)=土壌診断を軸に産地全体の施肥体系を構築

JA市原市の姉崎蔬菜出荷組合は14戸の農家が200haでダイコンを生産している。令和2年にJGAP団体認証を取得した。土壌診断はJA職員が圃場に出向き、特徴を確認しながら検体を採取している。
課題はひげ根黒変症。障害に強い品種の選定と緑肥の導入、土壌診断に基づく適正施肥、年間作付けローテーションの実施に取り組んできた。
約300枚の圃場ごとの診断結果はさまざまで生産者には平均値を示すとともに、その圃場に必要な肥料を提案している。圃場の情報はZ-GISを活用。千葉エコ認証圃場の圃場図や、人・農地プラン策定時のツールとしても活用している。
営農指導事業と購買事業をリンクさせ、適切な肥料や農薬も推進。JA購買利用率も向上してきた。
今後は生分解性マルチの普及と環境保全型農業、Z-GISを活用した圃場の集約化などに取り組む。「土壌診断を軸に産地全体の施肥体系を構築していきたい」と営農販売課の地引秀太係長は話す。
○JA松任(石川県)=総合的な土づくり推進

管内を流れる手取川はケイ酸含有量が少なく、同JAでは、一定程度の腐植、リン酸、加里を補いつつ、コストを最低限に抑えながら、ケイ酸投入量が高まるサイクルを回す「ゾーン別サイクルプラン」で土づくりを推進している。
土づくり推進のため、JAのCEから排出される籾殻と牛糞を混合した資材をJAと行政が費用を負担し生産者に提供。とくに養分吸収量が多い多収穫米の作付けが広がるなか、土壌分析と土づくりの必要性を生産者に理解してもらう取り組みを進めている。
土壌そのものの改善や管理も重要であることから、農機センターなど関係機関と連携し、プラウによる深耕などの実演、実証も行っている。
今年からは「土づくりチェックシート」を活用し、とくに大規模農家に「気づき」を与える努力や、国の産地交付金、JA独自対策も活用し、水稲だけでなく大豆・麦の土づくりも提案してきた。
土づくりへの認識を深めるためキックオフ大会や作業実演会なども実施してきた。今後は大規模法人に対して効率的な土づくりの提案や、共乾施設利用者に対して、土づくりの必要性を改めて周知することも課題などと営農資材課の中田昌孝係長は話した。
○JAしまね(島根県)=土壌診断をきっかけとした土づくり推進活動

同JAは奥出雲町の集落営農法人に対して、同法人が取り組む独自ブランド米の生産に適したマイブレンド肥料の提案に取り組んだ。
そのために総合的な土壌診断を行い、たとえば、条件がいいのに収量が上がらない圃場の成分分析から必要な専用肥料などを作成した。診断結果に基づきケイ酸、鉄を高めに配合し、寒冷地での初期生育の確保を狙い、りん酸、加里を配合など。
報告会を開き意見交換、JAとの信頼関係もでき、食味値も提示するようになった。また、法人専用の栽培暦も作成し、JAの資材利用も増えていった。
「地域の土壌分析をもとに作成した専用肥料」はこの法人以外にも普及し、米の収量、品質が安定したとの評価が得られた。肥料の名称も「田んぼの守」に改称して県下に普及している。
雲南地区本部営農企画課の久井和徳さんは「土壌分析や生育調査を行い農家と近い距離で提案活動をしていく」と述べた。
○JA阿蘇(熊本県)=特A米獲得に向けたJA阿蘇の土づくりプロジェクト

同JAは特A米を獲得しようと稲作部会とJA、行政、肥料・農薬メーカーでプロジェクトチームを立ち上げた。
チームは肥料農薬の展示圃試験、生育調査、灌漑水分析、土壌診断と診断結果に基づいた土づくりの見直しに取り組んだ。
収穫後の土壌診断を実施、主要項目の数値をグラフにして見える化した。それをもとに、たい肥の施用と土づくり肥料を提案し、座談会で栽培暦として丁寧に説明した。
また、マンガン補給による食味向上を期待した肥料も投入した。たい肥とリン酸、ケイ酸を中心とした土づくりに加え、微量要素資材も含めた総合的な土づくりを実践した。
その結果、2019産米で阿蘇コシヒカリは特Aを取得した。また、販売力向上のためくまもとグリーン農業の特別栽培農産物の生産宣言を実施した。
JAでは土壌分析データをもとに特A基準の施肥設計を全体に普及させ、地域の米全体の品質底上げに取り組む。「次の世代につながる阿蘇の米として、作りたい、食べたいと思われる米づくりをめざす」と農産課の伊藤照行課長は話した。
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